インド優勝 試合を分けた痛恨のPK 快進撃のアフガニスタン散る SAFF CHAMPIONSHIP

自国国家を斉唱するアフガニスタン選手たち

開催国インドに挑むのは今大会で旋風を起こしてきたアフガニスタン。準決勝までとは打って変わり、ジャワーハルラール・ネールー・スタジアムには大勢の観客が詰めかけた。もちろん今日が日曜日ということもあるが、開催国インドが進出しての決勝戦なので、こうでなくてはならない。おそらく西ベンガル、カルナータカやゴア等、サッカー人気の高い州から駆けつけてきたファンも少なくないのではなかろうか。

インドとアフガニスタンは、12月3日に行われたグループAでのリーグ戦で最初に対戦して1-1で引き分けた同士だが、やはり今日の決勝戦もタフな試合となった。前半戦は両チームとも互角の闘いを展開。どちらかというとロングパスを多用するインドに対して、アフガニスタンは中盤で細かいパスをつなぐテクニカルなサッカーが持ち味だ。

前半は決定的な場面を作れなかったインドだが、アフガニスタンにはぜひ決めておかなくてはならないシーンがあった。自陣に攻め込んできたインド選手たちをほとんど置き去りにしてのカウンター攻撃で、最前線へのパスを受けたFWバラール・アールズーがペナルティエリア内に持ち込み、GKカランジート・スィンと1対1の状態で放ったシュートが正面に入ってしまい弾き返された。

一昨日のネパール戦での不調がまるで嘘のように、本来の調子を取り戻したアフガニスタンは攻守ともに充実していた。両チームともに無得点のまま前半を終了してハーフタイムに入った。

後半戦も互角のゲームが展開されていた。心情的にはインドに期待しながらも、大躍進を見せているアフガニスタンのMFイスラフィール・コーヒスターニーの豊富な運動量とチャンスメイキング、左サイドバックのハルン・ファクルディーンの旺盛なオーバーラップ等々、観ていて楽しいのはアフガニスタンのほうであった。

だが試合が大きな波乱を迎えたのは後半20分。インドのサイヤド・ラヒーム・ナビーが前線に送ったボールをFWジエジエがペナルティエリア内で受ける際にアフガニスタンDF選手と交錯して倒れた瞬間、主審のスクヴィール・スィンが笛を吹いて判定はペナルティキック。これに対して抗議をしたのはアフガニスタンGKのハミドゥッラー・ユースフザイ。これに対して主審は即座にレッドカードを出して退場を命じた。拮抗した試合の中で、ほんのわずかの時間に思いもかけないハプニングが起きてしまった。

今後、アフガニスタンは11人のインドチームに対して、10人という数的不利の中で闘わなくてはならない。ましてや相手のペナルティキックというこの試合最大の危機を迎えることになってしまった。退場となったハミドゥッラー・ユースフザイに替えて控えGKのワシール・エヘマド・ダマンがゴールを守ることとなり、MFのグラーム・ハズラト・ニヤーズィーを下げることになった。

PKはインドのエース、スニール・チェートリーが冷静に決めた。もっとも蹴る前にインド選手の1人がフライングしてペナルティエリアに入ってしまい、ペナルティキックのやり直しを命じられるというハプニングがあったのだが。スニール・チェートリーは今大会通算7点目をマークした。

GKの退場劇とペナルティキックの成功で、試合の流れがすっかり変わった。すっかり勢いづいたインドは、自らとは対照的に浮足立ったアフガニスタンに対して、後半33分にスニール・チェートリーが中央から右に流したボールを受けたクリフォード・ミランダーが、ディフェンダーを1人かわして切り込んで豪快なシュートを叩き込んだ。

そのわずか1分後には同じくスニール・チェートリーが左サイドからドリブルで持ち上がり、中央にいるジエジエに速いパスを送り、これを見事にアフガニスタンゴールに突き刺す。これで3-0となって試合は完全に決まったのだが、その後スシール・クマール・スィンの強烈なミドルシュートによる4点目が入った。

後半中途まで、あれほど拮抗した試合を展開していながらも、GK退場劇とそれによるプレイヤー人数減、ペナルティキックによる失点というハプニングの後、総崩れになったアフガニスタン代表の有様は不憫でさえあった。実力的には互角でどちらが勝ってもおかしくない試合であったが、件のペナルティキックの判定はかなり微妙なものであることに加えて、アフガニスタンGKの抗議に対して即レッドカード(何か非常に汚い言葉を吐いたのでもなければ、あまりに唐突であった。)という判断も合わせて、インド人でもなくアフガニスタン人でもない第三者から見ても何とも言えない部分がある。

このことについては、アフガニスタン・インドともに快勝 SAFF CHAMPIONSHIPでも触れたように、微妙な判定が勝敗を左右した場合、見た目からしてインドとの縁が深いと邪推されかねないスィク教徒が主審というのはどうも収まりが悪い。シリア、韓国、マレーシア他から、立派なキャリアを持った審判員を招聘しているのだから、敢えてインドの試合、しかも決勝戦での主審という役目をスクヴィール・スィン(国籍はシンガポール)に負わせるのは、適切な判断であったのだろうか。

スクヴィール・スィンは、今大会で幾度か主審を務めており、現在28歳とまだ若いものの的確かつ冷静なジャッジングをする審判員だと私は思っていた。だが本日の決勝戦での微妙な判定とそれに続いてのGKの抗議に対する一発退場については、とりわけ『極めてインド寄り』の外観から『インド側と事前に何か打ち合わせがあったのかも?』という疑念を生じさせるのに不足はない。ましてや今大会の開催地はインドである。

大会始まってすぐからインドとアフガニスタンの決勝進出を予想していたが、これが現実となって非常に嬉しく思っていた。サッカーのスタイルがまったく異なるが、チーム力の差はほとんどないため、緊張感あふれる好カードになるに違いないと期待していた。確かに後半途中まではそうであったのだが、試合の流れを完全に変えてしまった判定については、第三者的な視点に立てばやはり疑問符を付けずにはいられず、何とも後味の悪い結果となった。今大会のインド優勝を素直に喜ぶことができないのが悲しい。

SAFF優勝に沸くインド代表チーム

インドとアフガニスタンが決勝進出 SAFF CHAMPIONSHIP

インドvsモルジブ

12月9日の準決勝第1試合はインドvsモルジブ。両チームとも良い立ち上がりを見せ、序盤から互いにゴールを脅かすシーンが幾つか見られた。均衡が破られたのは、クリフォード・ミランダの右からのクロスをジィェジィェが頭で合わせたボールを、サイヤド・ラヒーム・ナビーが強引に押し込んだゴールだ。

実力が拮抗している両チームだけに、これで試合がそのまま決まるはずはない。ハーフタイムの後、後半10数分の時間帯で、モルジブのシャムウィール・カースィムが見事なミドルシュートを決めて同点に追いつく。シャムウィールは、アリー・アシュファクと並んで、南アジアを代表する優れたサッカー選手だ。このゴールで試合の流れが変わり、優勢に転じたモルジブにインドが苦しめられるシーンが続いた。

だがインドに起死回生のチャンスをもたらしたのは、FWでエースのスニール・チェートリーだった。ドリブルによる強引な切り込みが相手のファウルを誘いPKを得た。これをよく落ち着いてゴール右隅に蹴りこみ、再びインドが勝ち越す。

小国ながら技術・戦術ともにレベルは高いモルジブの中盤は、今大会参加チームの中で最高レベルだろう。幾つもの好機を演出しながらも、ゴールを挙げることができないままに、時間が経過していく。終盤では守備を1人減らして、オフェンスの選手を投入しての猛攻が続く。

なんとかインドが守って逃げ切ってくれ!と祈るような気持ちで観戦しているうちに、時計は90分を回った。ロスタイムは3分くらいだろうか?と思ったあたりで、長いドリブルで持ち上がったFWのジィェジィェからのパスを受けたスニール・チェートリーが冷静にゴールを決めた。このあたりの安定感はさすが『バイチュン・ブーティヤーの後継者』である。今日の2ゴールで、今大会通算6ゴールで得点ランキングトップに立った。

この試合でもたびたび決定的チャンスを生み出してきたジエジエの名前も記憶しておいたほうがいい。ミゾラム州出身でまだ19歳。非常に才能に恵まれた選手だ。これからのインド代表の歴史は彼とともにあることだろう。

準決勝なので当然といえば当然の話だが、今大会これまでの試合の中で最も見応えあるゲームであった。

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アフガニスタンvsネパール

続いて準決勝第2試合はアフガニスタンvsネパール。今大会で旋風を起こしているアフガニスタンだが、南アジアの雄、ネパールを前に押し込まれるシーンが続く苦しい立ち上がりだった。グループのAでの華やかな試合運びがまるでウソのように、防戦一方の展開が続く。この日の中盤の出来は最悪で、前半戦はFWのバラール・アールズーが大きく引いてカバーに回るシーンが散見された。

劣勢に終始したアフガニスタンにとって、初めてのチャンスは前半の30分過ぎに訪れた。左からのクロスをゴール右に走り込んだ選手が頭で落として、ゴール前のバラール・アールズーに合わせるといった絶好の機会であったが、バラールはこれを確実に決めることができなかった。ネパールに圧倒されて非常に苦しい中、数少ない好機をモノにできないとどうにもならない。バラール・アールズーは、そのしばらく後も右サイドからのフリーキックを頭で合わせたものの、ボールはゴールのクロスバーを叩いてしまい得点ならず。今日はどうもツキに見放されているようであった。

後半に入ると霧が濃くなってきた。嵩にかかって攻めたてるネパールに対して、散発的にカウンターを仕掛けるアフガニスタン。圧倒的にネパールが支配している試合だが、実のところごくわずかな攻撃の機会ながらもきっちりと決定的な場面を作ることができているのはアフガニスタンであった。中盤を支配しても、アフガニスタンの最終ラインを崩せずにいるネパールに不安なものを感じたのは私だけではないはずだ。

ついに0-0のままでタイムアップ。短い休憩を挟んで延長戦に入る。ここでもやはり豊富な運動量とパスワークでゲームを支配するネパールに対して、防戦一方のアフガニスタンがときおりカウンターを仕掛けるといった具合だ。それにしても今日のアフガニスタンの中盤の不甲斐なさといったらない。90分終了してからもまったくスピードが落ちないネパールのタフさには感心するものの、アフガニスタンの手堅い最終ラインを崩すためのアイデアがない。ワンパターンの攻撃を仕掛けては弾き返されている。

そんな膠着状態の中、ネパール選手たちが自陣深く入り込んだところでボールをインターセプトしたアフガニスタンは、一気に最前線に繋ぐ。バラール・アールズーが飛び出した。追いすがるネパールのディフェンス選手たちをかわして、後方に置き去りにし、放ったシュートがネパールのゴールに鮮やかに刺さる。まさに一瞬の出来事であった。

これで試合は決まった。この後、ネパールはボールを支配しながらも、アフガニスタンのゴールを襲うことができない。今日のアフガニスタンの出来は最悪であったが、バラール・アールズーという切り札のここ一番での活躍により、8割方支配されていた試合を勝利で飾ることができた。

準決勝第1試合のインドvsモルジブのような充実した内容はなく、あまりに雑で退屈な試合であった。唯一の見せ場が延長戦でのバラール・アールズーのゴールだ。バラールは、これで通算6点目となり、先の試合で2ゴールを決めたインドのスニール・チェートリーに追いついた。

12月11日にインド時間午後6時試合開始の決勝戦では、インドとアフガニスタンの勝敗とともに、得点王がどちらの手に渡るかという個人タイトルの面からも楽しみだ。今大会、インドにとってグループリーグでの初戦の対戦相手がアフガニスタンであった。スコアは1-1で引き分けている。南アジアにおいてトップレベルの代表チームを相手に互角に戦った見事な試合だった。

今日のアフガニスタンは散々な出来だったが、決勝戦はベストの状態でインドと当たって欲しい。南アジアのサッカー界の頂点のプライドと地元開催の名誉にかけてインドが勝利をモノにするのか、あるいはこの地域のサッカーの世界の勢力図を塗り替えて大きなサプライズを呼んだ新鋭アフガニスタンが、自ら王者となって更なる驚きと衝撃を南アジアサッカー界に与えるのだろうか。

南アジアのサッカー関係者たちにとって、今大会の決勝戦はまさに『時代が動く』瞬間かもしれない。

アフガニスタン・インドともに快勝 SAFF CHAMPIONSHIP

SAFF CHAMPIONSHIP INDIA 2011

12月5日のSAFF CHAMPIONSHIPのグループA第一試合はスリランカvsアフガニスタン。大会開幕以前、Aグループの1位通過は順当にいけばインドで2位通過はスリランカ、場合によってはその逆もあり得ると誰もが予想していたことだろう。 ところがこのグループの初戦でインドと1-1で首尾よく引き分けたアフガニスタンが、ブータン戦を終始支配して3-0で退けたスリランカを相手に劇的な勝利を収めた。私自身、インド戦で『意外に侮れない』と感心していたアフガニスタンだが、南アジア諸国を相手にするこの大会において、その強さは本物だった。

前半の早い時間帯に、スリランカはモハマド・ザイーンのゴールで先制したものの、その後はサイドからの折り返しをサンジャール・エヘマディーに強引に押し込まれて同点に追いつかれる。サンジャール・エヘマディーはさらにもう1点追加。後半にはアター・モハンマド・ヤムラーリーが左からのセンタリングを豪快なヘッドで叩き込む。このあたりで勝敗はほぼ決まった。

アフガニスタン代表チームの登録メンバーの中には外国でプレーしている選手が8名もあり、それらの中には欧州・北米のクラブでプレーしている者が多く、母国の土をほとんど踏んだことがない選手もあると聞く。そのため、単純に『長らく続いた内戦からの復興の中で頑張っている』チームとは言い切れないものがある。 放送の中でインド人アナウンサーは、今大会におけるアフガニスタンの活躍を歴史的な快挙であるといった調子で伝えていたが、このチームは間違いなく優勝をさらう可能性もあるチームである。インド戦での引き分け、スリランカ戦での快勝ともに奇跡でも快挙でもなく、実力があるチームであるがゆえの相応な結果だ。

とりわけ背番号10番と9番、サンジャール・エヘマディーとバラール・アールズーは今大会最強のツートップではないだろうか。両選手ともに南アジアのレベルを凌駕するFWプレーヤーだ。ゆえに前者はドイツで、後者はノルウェーのクラブチームでプレーしているわけだが。 本日の試合で2点を決めたサンジャール・エヘマディーに対して、先のインド戦を引き分けに持ち込む貴重なゴールを奪ったバラール・アールズーはスリランカ戦では得点がなかったものの、やはり幾度も好機に絡んでいたし、前半には右サイドから流し込まれた低い弾道のパスをゴール右側からインサイドで後方に流しての難易度の高いシュートを試みるなど、観る者を唸らせる素晴らしい見せ場を演出していた。

アフガニスタンの次のゲームは、12月7日にブータンを相手に行なわれる。アフガニスタン、インド、スリランカ、ブータンから成るAグループの上位2チームが、12月9日の準決勝に進出する。ぜひインドとともに駒を進めて欲しいと私は願っている。

この日の第二試合で、インドが日本人の松山博明監督率いるブータンと対戦するカードは、両者のレベルがあまりに違いすぎて楽しむことができなかった。スコアは5-0でインドの大勝。得点者は『インド版メッシ』と形容されることもあるドリブルの名手、サイヤド・イブラヒーム・ナビーが1点、クリフォード・ミランダーとスニール・チェートリーがそれぞれ2点ずつ記録した。

インドvsブータンの試合を観戦していた方々は、主審が大柄なスィク教徒であることに気が付いたことだろう。その当人、スクヴィール・スィンはシンガポール国籍で、他の国際試合がどれもそうであるように、試合当事者たちと無関係の『中立国の審判』であることは間違いない。だがインドに対する個人的な思い入れが深いであろうと邪推されかねないため、今後もインド戦でホイッスルを吹くことがあれば、対戦国が力の拮抗した相手であったり、準決勝、決勝に駒を進めたりした場合、自国開催のインドに有利に働く可能性があると批判を浴びる可能性は否定できず、決して好ましいことではないだろう。

Flash Mob Mumbai

今日は久々に『心底楽しいニュース』を見た。

ニュースチャンネルAaj Takを点けていたら11月27日(日)にムンバイーCST駅に突如現れたフラッシュ・モブを取り上げていたのだ。

ムンバイーCSTに出現したフラッシュ・モブ

フラッシュ・モブとは、ネットで呼びかけを受けた人々が公共の特定の場所に集結して、前もって取り決めてあるパフォーマンスを演じて、その場に居合わせた大勢の注目を集めた後、さっさと解散していくといったものだ。

その模様はYoutubeにもアップされているので、ぜひご覧いただきたい。

Flash Mob Mumbai – CST Official Video (Youtube)

Rang De Basantiが流れて、最初に1人の女性が踊り始める。周囲の人たちから「何よ、あんた?」と冷ややかな視線が投げかけられるが、そこにもう1人の女性が加わった後、5人、10人、20人、40人・・・と、どこからともなく沸いて出てきた踊り手がどんどん増えていく。

ふと気が付くと、駅構内中央部はRang De Basantiを踊る群衆で一杯になり、「何か面白いことやっているぞ!」と詰めかけた物見高い見物人たちがそれを取り囲み、ムンバイーCSTはすっかりお祭り状態に。短い時間でドドッと盛り上がり、曲が終わると踊り手たちは何事もなかったかのように雑踏の中に散っていく。

Aaj Takでは、今回のフラッシュ・モブの仕掛け人の女性にインタビューしていた。だいたい同じような内容のものが以下のサイトにも掲載されている。

Interview: Shonan Kothari–the Woman Behind the Mumbai CST Flash Mob (guylife)

他の多くのメディアでも、この出来事について取り上げている。

How Mumbai Flash Mob prepared for its big day (NDTV)

Flash mob hits Mumbai’s CST station, surprises commuters (Times of India)

今回のフラッシュ・モブに触発されて、今後インドの主要都市で同様のパフォーマンスが発生することになるのかもしれないが、誰よりも最初にやってのけることに大きな意味がある。

見事な企画力と実行力に大きな拍手を送りたい。居合わせた人々の注目を浴びただけでなく、メディアを通じてその場にいなかった人たちにも大きな驚きを与えてくれた。私もまたテレビを通じて彼らに楽しませてもらった1人である。

トークイベント 「ポスト 3.11をふんばるインド・パキスタン的生き方」

今年3月以降、家電の大型量販店、アマゾンや楽天その他の通販サイトで線量計が売られているのを見かけるようになっている。

線量計なるものが世の中にあることを初めて知ったのは、1986年のチェルノブイリ原発事故が発生してからだっただろうか。『ガイガー・カウンター』により、放射線の値を測定している様子をテレビで目にして、一見普通に見える事故現場周辺地域で、目に見えない危険物質が飛散しているということについて、背筋が寒くなる思いをした記憶がある。

ガイガー=ミュラー管を使用したガイガー・カウンター以外にも、シンチレーション検出器その他いろいろな種類のものがあり、測定の対象や目的により様々な線量計があるのだが、いずれにしても放射線のある環境下での職務に就いている人、あるいは特定の医療従事者以外が手にすることはない特殊な装置だと思っていた。少なくとも今年の3月までは。

3.11の津波被害に起因した福島第一原発の事故以来、そうした『特殊装置』が普通に身の回りに見られるようになってきた。多くは個人が使用する目的であるため小型の製品だが、それらが目の玉が飛び出るような価格で販売されていた。

そんなに大量生産・大量消費されるような類のものではないとはいえ、これまで私たちが手にしてきている携帯電話その他の家電製品に比べて、製造にかかるコストがそんなに大きなものなのかどうかわからないが、手にしてみると意外にチャチな製品が、実売価格にして10万円前後あるいはそれに迫る価格で売られているのを見て、唖然としたものだ。

しかしとりわけ事故現場に近いエリアに住んでいる人々にとっては、たとえそれが避難地域外であったとしても、政府の発表する内容だけでは何がどうなっているのかはっきりしない状態の中、自分の身は自分で守るしかない。

小中学生、幼稚園、保育所の子供たちにガラスハッヂと呼ばれる個人線量計を配布した地域もあると聞く。これを身に付けて1か月経過したら回収して検査機関に送り、その子供たちには新しいものを配布してまたひと月身に付けさせて・・・といったことを繰り返しているとのことだ。行政として子供たちの被ばく量を測定する目的があるとのことで、意義自体は理解できるものの、何ともやりきれない話だ。

そこからやや離れた首都圏においても、いくつかのホットスポットについての情報などが出てくるにあたり、やはり不安でこうした機器を購入した人たちは少なくないだろう。それがゆえに全国の顧客が相手の通販サイトはともかく、首都圏の家電量販店でも線量計が販売されているのだ。

そうした線量計について、震災・原発事故以前の価格が空前の品薄状態を背景に、数倍に跳ね上がった製品、そうした価格で積極的に捌いた業者も少なくなかったことは耳にしていた。おそらくここにきて線量計の『バブル状態』も一服したのか、従前から販売されているモデルの価格はかなり下落してきていることに気が付いているこの頃。

大手通販サイトで『線量計』と検索してみると、102,900円 → 17,000円やら69,800円 → 13,500円などという価格表示をしている業者がいくらでもある。ボロ儲けをアテ込んでの在庫がダブついたのか、線量計の大きな市場となった日本向けに製造元が生産体制を大幅増強したのか知らないが、確かに原発事故からしばらくはそんな金額で販売されていたモデルだったと記憶している。それが『市場価格』というものだということになるのだろうが、一市民から見るとまさに火事場泥棒的な商売だ。早い時期に購入した人たちは『何!17,000円のものを102,900円で売りつけていたのか!』と怒り心頭のはずだ。

いずれにしても、これまでそうした機器に縁の無かった一市民が線量計を持つということが珍しくなくなってしまった状況に私たちは置かれており、これまで海外でも安全・安心という評判を得ていた日本そのものに、大きな疑問符が付くようになってしまっている。

今さら、グチばかり言っても仕方ない。放射能汚染は今後長期間続くことは明らかだ。加えて放射線による直接の健康被害はさておき、ここのところジリジリと後退してきていた日本の国力が、こうした事態であることを背景にさらに削がれていくことは間違いないことも肝に銘じておかなくてはならない。

さて、前置きが長くなったが、本題に入ろう。12月6日(火)19時30分(開場19時)から東京都渋谷区宇田川町のUPLINK FACTORYにて、J-one talks vol.01「ポスト3.11をふんばるインド・パキスタン的生き方」が行われる。

J-oneの主宰者で、ナマステ・ボリウッドの主宰者/発行人でもある、すぎたカズト氏がMCを務めるトーク会だ。ナマステ・ボリウッド誌サイトにもこのイベントについての情報が掲載されているので、こちらも併せてご参照願いたい。

ゲストスピーカーは、NPOジュレー・ラダック代表のスカルマ・ギュルメット氏、ビデオ・ジャーナリストのラシード・サマド・カーン 氏、そして当サイトindo.toのウェブマスターの矢萩多聞氏という豪華な顔ぶれだ。

災害時にも強い南アジア流生活・共生術、南インド式保存食の作り方(試食あり)から放射能対策・情報リテラシーまで、といった具合に様々な角度からのトークが行われる。ポスト3.11に生きる私たちの日々のありかたについてじっくり考えてみる良い機会となるはずだ。

チャージは2000円(1ドリンク+「J-one」創刊号1冊付)で、「J-one」持参の方は500円OFFとのことだ。会場となる渋谷 アップリンク・ファクトリーの所在地と電話番号は以下のとおり。

東京都渋谷区宇田川町37-18 トツネビル1階 TEL.03-6825-5502