インドとアフガニスタンが決勝進出 SAFF CHAMPIONSHIP

インドvsモルジブ

12月9日の準決勝第1試合はインドvsモルジブ。両チームとも良い立ち上がりを見せ、序盤から互いにゴールを脅かすシーンが幾つか見られた。均衡が破られたのは、クリフォード・ミランダの右からのクロスをジィェジィェが頭で合わせたボールを、サイヤド・ラヒーム・ナビーが強引に押し込んだゴールだ。

実力が拮抗している両チームだけに、これで試合がそのまま決まるはずはない。ハーフタイムの後、後半10数分の時間帯で、モルジブのシャムウィール・カースィムが見事なミドルシュートを決めて同点に追いつく。シャムウィールは、アリー・アシュファクと並んで、南アジアを代表する優れたサッカー選手だ。このゴールで試合の流れが変わり、優勢に転じたモルジブにインドが苦しめられるシーンが続いた。

だがインドに起死回生のチャンスをもたらしたのは、FWでエースのスニール・チェートリーだった。ドリブルによる強引な切り込みが相手のファウルを誘いPKを得た。これをよく落ち着いてゴール右隅に蹴りこみ、再びインドが勝ち越す。

小国ながら技術・戦術ともにレベルは高いモルジブの中盤は、今大会参加チームの中で最高レベルだろう。幾つもの好機を演出しながらも、ゴールを挙げることができないままに、時間が経過していく。終盤では守備を1人減らして、オフェンスの選手を投入しての猛攻が続く。

なんとかインドが守って逃げ切ってくれ!と祈るような気持ちで観戦しているうちに、時計は90分を回った。ロスタイムは3分くらいだろうか?と思ったあたりで、長いドリブルで持ち上がったFWのジィェジィェからのパスを受けたスニール・チェートリーが冷静にゴールを決めた。このあたりの安定感はさすが『バイチュン・ブーティヤーの後継者』である。今日の2ゴールで、今大会通算6ゴールで得点ランキングトップに立った。

この試合でもたびたび決定的チャンスを生み出してきたジエジエの名前も記憶しておいたほうがいい。ミゾラム州出身でまだ19歳。非常に才能に恵まれた選手だ。これからのインド代表の歴史は彼とともにあることだろう。

準決勝なので当然といえば当然の話だが、今大会これまでの試合の中で最も見応えあるゲームであった。

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アフガニスタンvsネパール

続いて準決勝第2試合はアフガニスタンvsネパール。今大会で旋風を起こしているアフガニスタンだが、南アジアの雄、ネパールを前に押し込まれるシーンが続く苦しい立ち上がりだった。グループのAでの華やかな試合運びがまるでウソのように、防戦一方の展開が続く。この日の中盤の出来は最悪で、前半戦はFWのバラール・アールズーが大きく引いてカバーに回るシーンが散見された。

劣勢に終始したアフガニスタンにとって、初めてのチャンスは前半の30分過ぎに訪れた。左からのクロスをゴール右に走り込んだ選手が頭で落として、ゴール前のバラール・アールズーに合わせるといった絶好の機会であったが、バラールはこれを確実に決めることができなかった。ネパールに圧倒されて非常に苦しい中、数少ない好機をモノにできないとどうにもならない。バラール・アールズーは、そのしばらく後も右サイドからのフリーキックを頭で合わせたものの、ボールはゴールのクロスバーを叩いてしまい得点ならず。今日はどうもツキに見放されているようであった。

後半に入ると霧が濃くなってきた。嵩にかかって攻めたてるネパールに対して、散発的にカウンターを仕掛けるアフガニスタン。圧倒的にネパールが支配している試合だが、実のところごくわずかな攻撃の機会ながらもきっちりと決定的な場面を作ることができているのはアフガニスタンであった。中盤を支配しても、アフガニスタンの最終ラインを崩せずにいるネパールに不安なものを感じたのは私だけではないはずだ。

ついに0-0のままでタイムアップ。短い休憩を挟んで延長戦に入る。ここでもやはり豊富な運動量とパスワークでゲームを支配するネパールに対して、防戦一方のアフガニスタンがときおりカウンターを仕掛けるといった具合だ。それにしても今日のアフガニスタンの中盤の不甲斐なさといったらない。90分終了してからもまったくスピードが落ちないネパールのタフさには感心するものの、アフガニスタンの手堅い最終ラインを崩すためのアイデアがない。ワンパターンの攻撃を仕掛けては弾き返されている。

そんな膠着状態の中、ネパール選手たちが自陣深く入り込んだところでボールをインターセプトしたアフガニスタンは、一気に最前線に繋ぐ。バラール・アールズーが飛び出した。追いすがるネパールのディフェンス選手たちをかわして、後方に置き去りにし、放ったシュートがネパールのゴールに鮮やかに刺さる。まさに一瞬の出来事であった。

これで試合は決まった。この後、ネパールはボールを支配しながらも、アフガニスタンのゴールを襲うことができない。今日のアフガニスタンの出来は最悪であったが、バラール・アールズーという切り札のここ一番での活躍により、8割方支配されていた試合を勝利で飾ることができた。

準決勝第1試合のインドvsモルジブのような充実した内容はなく、あまりに雑で退屈な試合であった。唯一の見せ場が延長戦でのバラール・アールズーのゴールだ。バラールは、これで通算6点目となり、先の試合で2ゴールを決めたインドのスニール・チェートリーに追いついた。

12月11日にインド時間午後6時試合開始の決勝戦では、インドとアフガニスタンの勝敗とともに、得点王がどちらの手に渡るかという個人タイトルの面からも楽しみだ。今大会、インドにとってグループリーグでの初戦の対戦相手がアフガニスタンであった。スコアは1-1で引き分けている。南アジアにおいてトップレベルの代表チームを相手に互角に戦った見事な試合だった。

今日のアフガニスタンは散々な出来だったが、決勝戦はベストの状態でインドと当たって欲しい。南アジアのサッカー界の頂点のプライドと地元開催の名誉にかけてインドが勝利をモノにするのか、あるいはこの地域のサッカーの世界の勢力図を塗り替えて大きなサプライズを呼んだ新鋭アフガニスタンが、自ら王者となって更なる驚きと衝撃を南アジアサッカー界に与えるのだろうか。

南アジアのサッカー関係者たちにとって、今大会の決勝戦はまさに『時代が動く』瞬間かもしれない。

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