空間のギャップ

ここを訪れたのは、ちょうどサーワンの時期だったので、シヴァの街バナーラスでは、主要なガートから目抜き通り、そしてシヴァ関連の大きな寺院界隈では、サフラン色の衣類で全身を固めたカンワリヤーの連中でいっぱい。大声で「BOL BOL, BAM BAM(唱えよ、シヴァの名を)」その他の掛け声がこだまして煩く、とても汗臭い。

だがほとんどは各地からやって来たよそ者たちなので、路地に入ると騒々しい彼らの姿はなく、落ち着いた街歩きが楽しめる。

とかくガンガー沿いの寺院が多い界隈は一時滞在者が非常に多いため、小路を入った先の地元の人たちの空間とのギャップの大きさに戸惑う。

遺跡入場料がQRコード決済のみに

サールナートに行ってみたら、入場料の支払いがQRコード決済になっていた。

PaytmなどによるQR決済手段を持っていない人はどうするのかと言えば、そういう手間のかかる人のために「オンラインペイメント係」がいて、その人に現金を渡してオンラインチケットを買ってもらうという措置はしてあった。発行されたQRコードをカメラかケータイに撮影して、入場口で係員に見せるというもの。

インドでこのようなケースはときどきあるが、場合によっては「オンラインペイメント係」を置いておらず、訪問客自らがQR決済手段を持っている他の訪問客に頼んで、代金を現金で渡す代わりに入場チケットを一緒に買ってもらうしかないところもある。

それでもインド人は快く応じてくれる人がとても多いのが助かる。

こういうことは日本でもあり得るので、こうしたことで困っている外国の人がいたら気持ちよく応じてあげよう・・・と思うのだが、よくよく考えてみるまでもなく、今のところ日本では現金支払いのみでQRコード決済は不可という場面が多く、その反対は稀なので、なかなか役に立てる機会はないような気がする。

アーラムギール・マスジッド

このあたりは昔々と眺めはあまり変わらない。

訪れたのは雨季であったため、増水により、ガートからガートへの移動は不可能になっているのは残念だった。

こちらアーラムギール・マスジッドは、アーラムギールことアウラングゼーブ帝が建てさせたマスジッド。パーンチガンガーガート近く。

路地裏探訪がずいぶんしやすくなった。Googleマップにしっかり反映されているからだ。昔はまったく迷路だったのでどこに出るのか見当もつかなかったものだ。

ワーラーナスィーの路地裏

バナーラス(ワーラーナスィー)旧市街の路地裏を「庶民の町」と侮ってはいけない。この街で巨万の富を築いた豪商もいたので、ところどころに大きなハヴェーリー(お屋敷)を見かける。

こちらもそんなハヴェーリーのひとつ「ダース家の屋敷」のようだ。ボロボロになっているが、門構えからしてただ者ではないことがひと目でわかる。「オーシディャーライ」つまり診療所と書かれているので、アーユルヴェーダのクリニックだろうか。

ちょうど中から初老の女性が出てきたので、「素晴らしいお屋敷ですね」と声をかけると、奥に家の主人がいるからどうぞと言われたので入ってみる。女性はここの人ではなかったようだ。

奥の階段手前で靴を脱いで上がってみると、外の荒れ果てた眺めとはまったく異なる華麗な空間となっていることにたじろぐ。ちょうど屋敷の修復中で、ようやく完了手前といったところらしい。コロナ禍前までは身内の15家族が暮らしていたとのことだが、現在はひと家族だけがここに住んでいるそうだ。

聞けば、この家はやはり医薬品の取り引き(アーユルヴェーダ医薬)で財を成したとのことで、その流れで今は屋敷の一角で診療をしているとのこと。

細い路地裏に面した高い壁の向こうに、こんな豊かな空間が隠れていたりするのがバナーラス旧市街のすごいところで、奥行きの深さを感じるとともに、あのような豪邸に暮らす主が、現在は自宅の一角で細々と続けるアーユルヴェーダの診療を生業としているというのも信じられなかった。はなはだ失礼かとは思うが、「没落貴族」という言葉が頭に浮かんだ。(貴族ではなく商人だけれども)

それにしてもその屋敷をあんなに綺麗に修復しているとは・・・。

拝見させていただきながら重ね重ね失礼ながらもそんなこんなを思ったのであった。

訪問したのは、ちょうどサーワンの時期だったため、「シヴァの街」バナーラスでは、主要なガートから目抜き通り、そしてシヴァ関連の大きな寺院界隈では、サフラン色の衣類で全身を固めたカンワリヤーの連中でいっぱい。大声で「Bol bol, Bam bam(唱えよ、シヴァの名を)」その他の掛け声がこだまして煩く、とても汗臭い。だがほとんどは拡張から来たよそ者たちなので、路地に入ると騒々しい彼らの姿はなく、落ち着いた街歩きが楽しめる。

とかくガンガー沿いの寺院が多い界隈は一時滞在者が非常に多いため、小路を入った先の地元の人たちの空間とのギャップの大きさに戸惑う。

どこに行くのも自由自在

往来が簡単になったバナーラス旧市街の路地裏。環境が完全に変わってしまったことに驚愕した。もはや旧市街の路地がまったく迷路ではないのだ。

昔は一度ガートに出てから目標の場所にたどり着けなかったし、知らない路地裏奥深くで夕暮れ時となると、大変心細かったものだ。人に尋ねて教えられたとおりに歩いたつもりでも、どこか違って見当違いのところをまだウロウロしていて、日没後元気になった野犬たちに吠えられて大いに困ったものだ。

雨季に来てみて、ガンガーの増水のためガート最上部あたりまで水に沈んでいるため、ガートからの迂回が出来ず、ダメだこりゃ!と気弱になったのだが、そんな心配はまったく不要であった。環境が驚くほど変わってしまったため、路地裏歩きがまったく難しくなくなっているのだ。目的地までスイスイと行けるし、混雑したメインストリートを避けて、空いている路地でショートカットという、昔は絶対に出来なかったことがカンタンに出来てしまう。

・・・と書くと、クネクネと捩れた、そして細くなったり、少し太くなったり、行き止まりになったりする、あの難解なバナーラスの路地が大規模な区画整理で整然としたものになり、見通し良くまっすぐに歩けるになったのかと思う方がいるかもしれないが、それとは全然違う。

路地は何十年前と変わらない。佇まいも変わらない。でも私たちの環境が完全に変わったからだ。何がといえば私たちが手にするスマホのGoogleマップである。あの難解な路地裏構成が、きちんとマップに反映されており、目的地を入れれば、最短ルートを即座に示してくれる。こんなことになっているとは想像すらしなかった。これでは迷子になること自体があり得ない。

こうなると苦手だったこの街の路地裏歩きが俄然楽しくなり、気の向くままにズンズン歩いてみるのである。どこにいるのかわからなくなったらGoogleマップで現在地を確認。さて、どこに行こうかと目的地を決めて、あとはマップの示すルートを辿ればどこにでも行くことができる。

ゴチャゴチャの路地への苦手意識が完全に払拭されて、もうバナーラスのどこでも行けと言われれば、まるで地元の人にでもなったかのようにスタスタとこの迷路を自由自在に往来できるのだから素晴らしい。

もはやバナーラスの路地で、あなたの行く手を邪魔する「難解な迷路」という障壁はもはや存在しない。あなたはどの路地裏でも無敵のセルフナビゲーター。くれぐれもスマホの電池切れにはご注意を。