エアアジアでインドへ

エアアジアの羽田・クアラルンプル便(12月9日就航・週3便)が話題になっている。 

すでに日本に乗り入れているオーストラリアのジェットスター、韓国のチェジュ航空と合わせて、日本にもようやくLCC (ローコストキャリア)の時代が到来しつつあることを感じさせられる。 

ジェットスターは台北経由シンガポール行きの便があり、チェジュ航空はソウルで乗り換えて同社のバンコク行きを利用できるが、それらの地点から更に他社便のチケットを買い足さなくてはならないため、インド行きに利用するのはあまり現実的ではないかもしれない。 

だがエアアジアについては、ハブ空港のクアラルンプルから現在インドの9都市(コールカーター、コーチン、チェンナイ、ティルチラッパリ、デリー、トリバンドラム、ハイデラーバード、バンガロール、ムンバイー)への便があるため利用しやすいだろう。 

料金は羽田・クアラルンプル間が通常の底値が往復で3万円程度(片道1万5千円くらい)になるらしい。この区間について、本日9月23日正午から10月31日までの予約受付期間内に、今年12月9日から2011年7月31日までの搭乗分座席の一定部分を、キャンペーン価格の片道5,000円で売り出すとのことだ。空港使用料等を加えても、往復で日本円にして1万4千円弱という破格の料金である。 

クアラルンプルから先については、エアアジアのホームページで仮に『往路10月1日、復路10月20日』として調べてみると、デリー往復905 MYR(約25,000円)、ムンバイー往復 761 MYR (約21,000円)、チェンナイ往復 628 MYR (約17,000円)、ハイデラーバード往復 682 MYR (約19,000円)といった数字が出てくる。 いずれも行き帰りの空港使用料を含めた金額だ。

他のLCCキャリアがそうであるようにフライトの時期、空席状況、予約するタイミング等によって価格は変動する。概ねデリーやムンバイー便については、羽田からトータルの出費は概ね5万円強から5万5千円程度ということになるだろう。エアインディア等の他キャリアの底値の時期と比較すると驚くほど安いというほどではないが、費用をかなり圧縮できることは間違いない。またキャンペーン価格での売出し時期と合致すれば、非常にお得な料金で往復できることになる。

ただし年末年始やゴールデンウィークといったピーク時には既存航空会社との料金差はごくわずかなものとなってしまうようだ。また一定の条件のもとにフライトの変更は可能であっても払い戻し不可であることについては留意しておく必要がある。 

LCCキャリアで乗り継いだ経験がないのでよくわからないが、羽田・インド間が同日乗り換えできるスケジュールの場合、チェックイン荷物をそのままスルーで処理してもらえるのか、またフライトの遅れにより中途での乗り継ぎがうまくいかなかった場合の処置などあまり期待できないように思う。だが利用予定がピーク時以外で、乗り換えスケジュールにある程度の余裕があれば、充分検討の余地ありだ。 出発地が成田ではなく、より都心に近い羽田空港である点も好ましく感じられる。

とりわけエアアジアに期待しているわけではないが、日印間の移動に新たな選択肢が加わること、LCCキャリアの伸長が今後の既存航空会社の料金自体にも与える影響は少なくないであろう。こうした航空会社の路線が増えてくることについて、利用者としては大いに歓迎したい。

格安航空会社が羽田にやって来る! エアアジアXのカラクリ (YAHOO ! JAPAN ニュース)

アレもコレも中国製

デリー市内のおもちゃ屋の店先のショーケースに並ぶミニカー。小学校3年生の息子がジーッと見入っている。

『アレが欲しい』 

指差したのはオートリクシャーのプラスチックのミニチュア。

「同じものをいくつも持ってるじゃないか」と言えば、『色合いも造りも違うんだよ』などと判ったような口を利く。

 

そんな具合なので息子の部屋のガラクタ箱の中には、アンバサダーやスモウといった乗用車、はてまたターターのトラックなどのプラスチックで出来た安物ミニカーの様々なバージョンがいくつもゴロゴロしている。

こうした玩具のクルマの多くを製造しているのはCentury Toysという会社だが、今日のオートリクシャーを手に取ってみると、車体の底にMADE IN CHINAの文字を見つけた。

 90年代初頭までの何でもかんでもインド製だった時代と違い、今では様々な分野に外資が進出しているし、それと並行してマーケットに並ぶ品物にも輸入製品が洪水のごとく押し寄せるようになっている今のインドだ。

日用雑貨類でも中国製品の進出は著しく、今の日本のように『China Free』で生活することは無理とまでは言わなくとも、特に廉価な商品の中に中国からの輸入品が占める割合はとても高くなっている。もちろん玩具類などはその典型だが、いかにもインド的なおもちゃ類の中にも中国製品が混ざっているとは今まで気が付かなかった。

中国の工場労働者たちは、作業現場で作る『見たこともない二色ボディーのオート三輪』がインドで売られるものであるとは知らないだろうが、よくよく考えてみればバーザールで販売されている安価な神像の類の中に中国製品が占める割合がかなり高くなっている昨今なので、こんなことは驚くに値しないのだろう。

インド自身も安くて豊富な労働力に恵まれた国であるにもかかわらず、そこに堂々と割って入る中国の工業力には脱帽するしかない。

エコノミスト『インド攻略』

現在発売中の週刊エコノミスト(9月7日号)の特集記事は『インド攻略』だ。 

外国企業にとっての草刈り場してのインド、同国市場における日韓企業の対決、小売革命、ジェネリック薬の生産・輸出大国、デリー・ムンバイー産業大動脈等々といった見出しが並ぶ。経済というモノサシから俯瞰したインドが描き出される。

 言うまでもなくインドのメディアの経済関係記事とは異なり、日本からの視点に立ったものであるため、日本のビジネスマンたちがインドのどのあたりに関心を抱いているのか、巨大市場の中での日本企業の位置取りといった、観念的なものではない経済活動という極めて現実的な日印関係を簡潔に俯瞰することができる。

書店で見かけたら一読してみるといいかもしれない。

週刊エコノミスト『インド攻略』(9月7日号)

スィッキム州が近くなる

パキョン空港、聞きなれない名前だが、2011年に開港予定のスィッキム州初の旅客機が離着陸する空港となる。
すでに西ベンガルのバグドグラーからスィッキム州都ガントクへのヘリコプターの定期便があり、その他スィッキム各地やカンチェンジュンガ峰方面などへの遊覧フライトはあるが、これまで地元等からの要望の高かった航空機の乗り入れがついに実現する。
これまで鉄道ならば西ベンガル州のシリーグリー、飛行機ならばその隣町のバグドグラーまで行き、そこからミニバスや乗り合いジープなどでアクセスという具合であったスィッキム州だが、空港がオープンすることにより、直接州都に降り立つことができるようになる。
おそらくマナーリー近郊のブンタール空港くらいの規模で、小型機のみが乗り入れることができることになるのだろう。それでもおそらくデリーからヒマーチャル・プラデーシュ州のマナーリー、シムラー、ダラムサラへの便を運行しているキングフィッシャー航空が、コールカーターからの便を飛ばすことになるのではないかと予想している。
スィッキムはモンスーン季節には多雨の地域であるため、運行はあまりアテにならないことと思われるが、ハイシーズンにはかなりの需要が見込まれるはずだ。
鉄道も2015年にはスィッキムに乗り入れる予定だ。西ベンガルからスィッキム州に入ったところの町ランポーが終着駅となる。そこから州都ガントクまではさらに40kmほどあるが、それでもインド国内の主要都市から州境まで直接アクセスできるとなれば、観光業促進のための大きな力となることだろう。
工期は未定で、実現したところでいつの話になるかもわからないが、インド国鉄はランポーからガントクまで更に延伸する計画も描いている。
スィッキム州がグンと近くなる。

やはりバーングラデーシュが旬

いわゆる『NEXT11』のひとつに挙げられているバーングラーデーシュがやはり旬のようだ。こんな記事を見かけた。
世界のアパレルが“バングラ詣で”ユニクロ進出で脱・中国加速 (産経ニュース)
要は中国で頻発する労働者のストライキ、賃上げ圧力に加えて人民元の切り上げが、もはや「あるのかないのか?」ではなく「いつになるのか?」という差し迫ったところまできているため、これまで生産の拠点としてきた中国以外にどこか候補地を見つけなくてはならなくなったわけである。
つまり中国での状況の変化という大きなファクターがあり、これに対応できる世界の工場としてのポテンシャルを秘めた国ということで注目されているのだ。
まずは人口規模。人口1億6千万を数える世界第7位の大国(ちなみに第6位は1億8千万のパーキスターン、第8位は1億5千万のナイジェリア)である。労働力大国ともいえる同国だが、それに対する就業機会は少なく、賃金の水準も低いため毎年大勢が国外に流出する傾向がある。
湾岸産油諸国はもとより、東南アジアとりわけマレーシアでは非合法な就労目的で渡ってきた移民の存在に当局は手を焼いている。もちろん国境を接するインドでは、デリーやムンバイーその他の主要都市に不法に住み着いているバーングラーデーシュ移民は多く、ときおり大がかりな摘発がなされていることがメディアで伝えられている。
都市部のみならず、とりわけ国境を接するアッサムや西ベンガルなどでは農業に従事している人々も多いなど、経済的な理由における移民圧力がバーングラーデーシュでは高い。
同国にとって、大量の海外移民は外貨獲得の貴重な手段であるいっぽう、多くの人々が国外に活路を求めざるを得ない状況は、社会の安定と発展、ひいては治安面における不安を引き起こすことから座視するわけにはいかず、従前から国外からの投資を歓迎する姿勢を見せていた。
しかし不安定な政治、頻発するハルタール、労働力の質、隣国インドと比較しても格段に貧弱なインフラ、モンスーン期の洪水による操業の不安と交通の途絶などといった懸念等から中国やインドほどの注目を集めることはなかった。
そのバーングラーデーシュ自体の情勢は変わらないのだが、先述のとおり近年中国の状況に変化が起きているため投資先のオプションとして浮上することになったようだ。当面はバーングラーデーシュで従前から盛んで実績もあるアパレル関係が大半のようで、中国のように「なんでもかんでも」というわけではない。
そもそも同国自体が魅力を増したわけではなく、近年外国企業にとって中国における操業に不安や不満が出てきたがゆえ、代替地のオプションとして浮上してきたに過ぎない。
だがバーングラーデーシュとしては、今後の大きな成長の手がかりとする好機が到来したといえる。国外から眺めてみても、世界の工場としての魅力はもとより、そう遠くない将来には人口2億に届く同国は大きな市場になり得る。
所得水準、平均的な教育水準、インフラ事情等、どこを眺めても現状があまりに貧弱であるだけに成長が軌道に乗れば、その伸びしろも大きなものとなることは言うまでもない。
バーングラーデーシュの首相オフィス直属の投資委員会が設置されており、同国政府の意気込みと投資呼び込みへの期待の大きさがうかがわれる。
Board of Investment, Prime Minister’s Office (投資委員会)
やはりバーングラーデーシュが旬のようだ。以前『バーングラーデーシュが旬』と題して、大手旅行代理店H.I.S.のダッカ進出について取り上げてみたが、こうした『ブーム』もその背景にあったのだろう。