やはりバーングラデーシュが旬

いわゆる『NEXT11』のひとつに挙げられているバーングラーデーシュがやはり旬のようだ。こんな記事を見かけた。
世界のアパレルが“バングラ詣で”ユニクロ進出で脱・中国加速 (産経ニュース)
要は中国で頻発する労働者のストライキ、賃上げ圧力に加えて人民元の切り上げが、もはや「あるのかないのか?」ではなく「いつになるのか?」という差し迫ったところまできているため、これまで生産の拠点としてきた中国以外にどこか候補地を見つけなくてはならなくなったわけである。
つまり中国での状況の変化という大きなファクターがあり、これに対応できる世界の工場としてのポテンシャルを秘めた国ということで注目されているのだ。
まずは人口規模。人口1億6千万を数える世界第7位の大国(ちなみに第6位は1億8千万のパーキスターン、第8位は1億5千万のナイジェリア)である。労働力大国ともいえる同国だが、それに対する就業機会は少なく、賃金の水準も低いため毎年大勢が国外に流出する傾向がある。
湾岸産油諸国はもとより、東南アジアとりわけマレーシアでは非合法な就労目的で渡ってきた移民の存在に当局は手を焼いている。もちろん国境を接するインドでは、デリーやムンバイーその他の主要都市に不法に住み着いているバーングラーデーシュ移民は多く、ときおり大がかりな摘発がなされていることがメディアで伝えられている。
都市部のみならず、とりわけ国境を接するアッサムや西ベンガルなどでは農業に従事している人々も多いなど、経済的な理由における移民圧力がバーングラーデーシュでは高い。
同国にとって、大量の海外移民は外貨獲得の貴重な手段であるいっぽう、多くの人々が国外に活路を求めざるを得ない状況は、社会の安定と発展、ひいては治安面における不安を引き起こすことから座視するわけにはいかず、従前から国外からの投資を歓迎する姿勢を見せていた。
しかし不安定な政治、頻発するハルタール、労働力の質、隣国インドと比較しても格段に貧弱なインフラ、モンスーン期の洪水による操業の不安と交通の途絶などといった懸念等から中国やインドほどの注目を集めることはなかった。
そのバーングラーデーシュ自体の情勢は変わらないのだが、先述のとおり近年中国の状況に変化が起きているため投資先のオプションとして浮上することになったようだ。当面はバーングラーデーシュで従前から盛んで実績もあるアパレル関係が大半のようで、中国のように「なんでもかんでも」というわけではない。
そもそも同国自体が魅力を増したわけではなく、近年外国企業にとって中国における操業に不安や不満が出てきたがゆえ、代替地のオプションとして浮上してきたに過ぎない。
だがバーングラーデーシュとしては、今後の大きな成長の手がかりとする好機が到来したといえる。国外から眺めてみても、世界の工場としての魅力はもとより、そう遠くない将来には人口2億に届く同国は大きな市場になり得る。
所得水準、平均的な教育水準、インフラ事情等、どこを眺めても現状があまりに貧弱であるだけに成長が軌道に乗れば、その伸びしろも大きなものとなることは言うまでもない。
バーングラーデーシュの首相オフィス直属の投資委員会が設置されており、同国政府の意気込みと投資呼び込みへの期待の大きさがうかがわれる。
Board of Investment, Prime Minister’s Office (投資委員会)
やはりバーングラーデーシュが旬のようだ。以前『バーングラーデーシュが旬』と題して、大手旅行代理店H.I.S.のダッカ進出について取り上げてみたが、こうした『ブーム』もその背景にあったのだろう。

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