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カテゴリー: column

  • ムンバイーのテロ 失うものはあまりに多く、あまりに大きい

    ついさきほどアップロードした『退屈は幸せだ』の続きである。
    本日、11月27日に元首相のV. P. Singhが亡くなった。それがごく小さなニュースに見えてしまうのは、現在進行中のムンバイーでのテロ事件のインパクトがあまりに大きいがゆえである。
    現在までのところ、デカン・ムジャヒディーンという聞きなれない名前の団体が犯行声明を出しているものの、おそらく偽名に違いないとするのが大方の意見のようだ。アルカイダによるものではないかという推測、インディアン・ムジャヒディーンのことではないかと疑う説なども出ている。
    だが今の時点ではテレビニュースで真実味をもって語られているのが、カラーチーからやってきてグジャラートに上陸した男たちが昨夕ムンバイーに到着し、深夜前後から犯行を開始したという説だ。
    武装した男たちの集団が一気に突入して無差別銃撃を開始、武力でターゲットを占拠してメディアのカメラを目の前にして、時間をかけて人々に最大限の恐怖心を与えたうえであげくに玉砕という、テロ行為の多くの部分が『中継される』というヴィジュアルな効果を計算したうえでの新しいパターンのように思える。
    またある種特別な場所でありながらも、宿泊客以外の不特定多数の人々がごく普通に出入りするのが当たり前で、そこを舞台に大きな事件が起きれば世間の注目も大きな高級ホテル、しかも国際的にも有名な五ツ星ホテルを標的にするというのも、今後の『トレンド』になるのではないかという悪い予感をおぼえるのは私だけではないだろう。
    21世紀に入ってから最初の9月に起きたアメリカの同時多発テロその他の航空機を狙ったテロが続いた後、乗客に対するセキュリティチェックはかつてないほど厳しくなった。その結果、以前のような大胆な犯行は実行しにくくなっている。そこにくると相変わらず『甘い』のは、常に不特定多数の人々が出入りする都市におけるセキュリティである。
    その『危険に満ちた』街中で、バーザールの一角を吹き飛ばすよりも大きな効果が考えられるのは、やはり有力者、セレブな人々、富裕な外国人が出入りする特別な空間ということになるだろう。
    昼間、今回の事件に関する報道を読んでいると、犯行グループは現場でアメリカ人とイギリス人を特に重点的なターゲットとしたことを示唆する記事が複数あった。まともな考えを持つ人にしてみると、国籍を理由に狙われるなどということは、あまりに不条理に過ぎるが、彼らにとってはどちらも『象徴的』な意味があるのだ。そのためにも国際的に広く知られた高級ホテルという場所は都合が良いことになる。
    国外に与えるネガティブな印象も相当なものだろう。本来ならば『セキュリティがしっかりしている』とされる最高級ホテルを舞台に未曾有の惨劇が展開された。本来ならば街中でヨソ者にとってもっとも安全であるはずの空間が最も危険な空間に早変わりしてしまった。
    その結果、普段インドとの関わりがない国外の人々に対してこの事件ひとつで『恐ろしく治安の悪い国』というイメージを植えつけることになる可能性が高いことは容易に想像できる。
    現場となったふたつのホテルに至っては、事件後に原状復帰してみたところで、商売にならないのではないだろうか。元々の姿を感じさせないほどの大規模な改修をするか。あるいは建て直しでもしないとこれまでのような形では営業できないのではなかろうか。

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  • 退屈は幸せだ

    新聞であれ、テレビであれ、ニュースが退屈なものであるときほど、実は『良い時』なのだと思う。手にとってみて、そこに書かれているものがルーティーンな内容で、退屈のあまりすぐに投げ出してしまうようなときは、少なくとも悪いことは起きていないわけだ。思わず目を見開いてしまうような、かじりついてしまうようなセンセーショナルな報道といえば、たいていが非常に好ましくないものであることが多い。
    今日もやはりそうだった。9月26日深夜前後から本日にかけて進行中のムンバイーでの連続テロ事件の報道がそれだ。今日の午後はずっとZEE NEWSやAAJ TAKといったニュース番組にかじりついている。ムンバイー市内のタージ・ホテル、オベロイ・ホテル、ムンバイーCST駅構内等で起きた一連の惨劇。これを書いている現在も、2軒の五ツ星ホテルでは人質の安否が危ぶまれるとともに、コラバ地区のナリマンハウス付近でも銃撃が続いているとか。
    すでにタージ・ホテル内だけでも80人もの死者が出ており、363号室にテロリストたちが隠れているらしいなどとアナウンサーは伝えていた。それからしばらくして建物内に治安当局が入り込んで片端からドアを開けて、出るに出られずにいた宿泊客を救出が始まったようだ。
    押しても引いても開かないドアの中には犯人たちが潜んでいるのではないかという疑いがあり、そんな部屋のひとつ471号室に突入した治安要員たちが中にいた犯人の一人を銃殺したという。
    血なまぐさい事件が画面の向こうでリアルタイムで進行しているという緊迫した状況で、ふと思い出すのは2001年9月11日にアメリカで起きた同時多発テロ。
    『WTCのツインタワーのひとつに航空機が衝突する事件が起きました』というアナウンスから始まったあの日のニュース。その直後に2機目がもうひとつのタワーに接近して衝突して大きな火花を散らす。そのときテレビの報道番組を見ていた人たちが皆、事件の目撃者となった。手段は違うが、画面の向こうから感じるのは、まさにあのときと同じ空気だ。
    それにしても今年はずいぶん多い。後半部分に限っても、これだけの大きなテロが発生している。
    10月30日 アッサム東北部 64名死亡
    9月30日 インド西部 7名死亡
    9月27日 デリー 1人死亡
    9月13日 デリー 18名死亡
    7月26日 アーメダーバード 49名死亡
    7月25日 バンガロール 2人死亡
    5月13日 ジャイプルで63名死亡
    現在進行中のテロ事件の早急な鎮圧と背後関係等に関する解明を望みたいところだが、それが明らかになったところで、根本的な解決などありえないことが、一番難しいところだ。社会に不安と秩序の乱れを、そしてコミュニティ間に対立や猜疑心を与えることは避けられないだろう。
    悲哀と混乱を闇であざ笑う何者かに対して、私たちはかくも無力なのか。底知れぬ悪意を抱く者たちに行為に対して、私たちはただ黙ってそれを受け入れるしかないのだろうか。
    あるいはこれを悪魔の仕業とするならば、良き市民たちはそれを神から与えられた試練と受け止めるのしかないのか。
    ニュースが退屈であることは、実は幸せであること、ごく何でもない日常がどんなにありがたいことか、改めてしみじみ感じる。
    TERROR STRIKES MUMBAI AGAIN, OVER 100 KILLED (ZEE NEWS.COM)

  • 自由の女神は微笑むのか?

    ダース・ローマシュ匡選手といえば、元甲子園球児、そして現在日本ハムファイターズ所属で、インド系初のプロ野球選手として知られているが、今度はなんとアメリカのパイレーツが二人のインド人投手とマイナー契約を交わしたのだという。
    そして驚いたことにこの二人のインド人選手、今年に入るまで野球の経験はまったくなく、陸上の槍投げの選手であったという。
    左からディネーシュ・パテール、リンクー・スィン
    そもそもこのふたりはテレビの『Million Dollar Arm』コンテストに応募して勝ち残り、今月アリゾナで行われたメジャーリーグの適性試験に合格してマイナー契約にこぎつけたとのこと。
    この19歳(ディネーシュ・パテール)と20歳(リンクー・スィン)は、テレビのリアリティ・ショーが生んだ人材であること、初めてのインド人選手であることなど、話題性だけが一人歩きしている観がある。
    そもそもこの年齢になるまで野球を経験してこなかった者がプロの世界でモノになるのか大いに疑問だ。メジャーリーグの適性試験というのがどういうものだかよく知らないが、ただ速い球を投げることができるだけの若者たちが、この世界で生きていけるとは到底思えないのだ。多少なりとも野球を知っている者ならば、これがそんなに底の浅いスポーツではないことがよくわかるだろう。
    だが、おそらく世間の大体数の人々のネガティヴな予想を裏切り、目を見張るような大躍進を見せてくれるようなことがあれば、とても嬉しいであろうことは言うまでもないだろう。コチコチに固まった常識を覆すような奇想天外な展開がごくたまにあるからこそ、この世の中というものは面白い。
    果たして、インドからのふたりの挑戦者たちに自由の女神は微笑むのか。
    Pirates sign 2 Indian pitchers (startribune.com)

  • キリノッチはどうなっているのか?

    今年後半に入ったあたりから、インドのニュース雑誌その他のメディアでしばしばスリランカの内戦にかかわる情勢が取り上げられる機会が増えたように思う。それはすなわち戦況に大きな転機が生じているためだ。
    昨年春にLTTEがコロンボにある国軍施設に空爆を加えた際、世界でも珍しい反政府軍所有の航空機による政府側に対する攻撃として注目を集めたとき以上のものがある。
    2000年以降、政府との間の停戦、2003年の和平交渉においては、それまで堅持してきた分離独立を求める姿勢を改め、連邦制を敷くことに合意するなど、後に紆余曲折はあれども、内戦の終焉へと向かうのではないかという観測もあったが、そうはならなかった。
    2004年にはLTTE内での分裂により、それまで9,000名を数えるとされた兵力が半減し、相対的に弱体化の様相を見せる中、2005年に現在のマヒンダ・ラージャパクセ大統領就任直後から連続したテロ攻撃をきっかけに内戦が再燃、しばしば報じられているとおり、今の大統領はLTTE掃討について積極的な姿勢で臨むようになっている。
    LTTEは、最盛期にはスリランカの北部および東部のかなりの部分を制圧しており、その地域はスリランカ北西部からぐるりと海岸沿いに、彼らの本拠地である国土の北側沿岸地域を経由して、東部海岸地域にまで至っていたものだ。しかし現在ではかなり縮小しており、ジャフナ半島付け根の南側地域を実効支配するのみだ。
    近ごろ政府軍が有利に展開を続けていることを背景に、大統領はLTTEを軍事作戦で壊滅させることに意欲と自信を深めているようだ。
    大統領は、LTTEとの戦闘状態について、『内戦ではない。テロリストへの掃討作戦である』という発言をしていることからもわかるとおり、従前の和平交渉での相手方当事者としてではなく、『犯罪者』として相対していることから、そこに妥協や交渉の余地はなく、力でもって叩き潰すぞ、というスタンスだ。
    いよいよLTTE支配地域の事実上の首都であるキリノッチへの総攻撃も近いとのことで、インディアトゥデイの11月10日号に関連記事が掲載されていた。
    Cornering Prabhakaran (India Today)
    ところで、この『首都制圧作戦』は、すでに昨日11月23日に開始された模様だ。
    S Lanka attack on rebel ‘capital’ (BBC NEWS South Asia)
    その情勢については、Daily Mirror他スリランカのメディアによっても伝えられることだろうが、そうした政府側とは対極にあり、LTTE地域の内側からの情報を伝えるTamilNetに加えて、近隣のメディア大国インドからの関連ニュースについても関心を払っていたいところだ。
    正直なところ、スリランカの政府軍についても、LTTEについても個人的にはさほど関心がないのだが、こういう大きな軍事作戦が展開していることについては、とても気にかかっている。
    後者について強制的に徴用された少年兵の存在もさることながら、同組織による支配地域に住んでいるからといって、すべての住民たちが心の底からLTTE支持というわけでもないだろう。政府に不満を抱きつつも、LTTEに賛成という訳でもない・・・といっても、自分の居住地が彼らの支配下にあれば、その権力に従うほかにないのだ。
    もちろん国情、経済状態その他によってその度合いや政治への参加意識はかなり違ってくるにしても、日本人である私たちも含めて、世の中の大多数の人たちにとって、最大の関心ごとといえば自分自身の将来、家族、友人、恋人、学校、仕事、趣味等々いった、自らの身の回りのことだ。
    政治云々についてはそれを仕事にしているのでない限り、自分や家族のことよりも、国や地域の政治が優先、寝ても覚めても政治のことで頭が一杯なんてことは普通ありえないだろう。
    そもそも人々がまともに暮らしていくために政府や政治というものがあるはずだ。その『政府』による武装集団、つまり軍隊が自国民の町を襲う、『政治』が人々の平和な暮らしやその命までをも奪うという事態が進行中であることについて、またこの『内政問題』について各国政府が黙認していることを非常に残念に思う。

  • 何だかいい予感 マイクロフォーサーズ第1号カメラ

    ルミックス G1
    10月31日に発売されたパナソニックのルミックスG1はなかなか評判がいいらしい。私自身も店頭で実機を触ってみたが、思いのほか良い印象を受けた。
    マイクロフォーサーズという新しい規格による初めてのカメラで、今の時点でボディサイズが世界最小というが、今はAPS-C規格のカメラも相当小型化しているものがあるので、さほどびっくりするほどではなかった。
    だが搭載しているセンサーが4/3インチと、従来のフォーサーズのものと同じサイズながらも、フランジバックつまりマウントからセンサーまでの距離をフォーサーズの約半分に縮め、マウント外径を約6ミリ縮小するというもの。
    結果としてボディを薄くすることが可能となり、レンズも相当軽量・小型にできるという利点がある。ボディとレンズを組み合わせた際のトータルな大きさと重量には、それを始めて手にした誰もが目を見張ることだろう。
    もちろんセンサーが小型であることについては、画質とりわけラティテュードの幅、高感度設定時の荒れという部分において、少なくとも同世代・同クラスのAPS-C以上のセンサーを持つカメラと比較すれば不利になるのではないかと思うのが当然だが、このあたりの使用感について購入された方にうかがいたいと思う。

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  • 『ミッドナイト・チルドレン』銀幕へ

    ムンバイー出身の英国籍インド人作家、サルマーン・ルシュデイーの代表作のひとつである『ミッドナイト・チルドレン』がディーパ・メヘター監督により映画化されることが決まった。ナンディター・ダースとシャーバナー・アーズミーの出演が決まっているようだ。
    サルマーン・ルシュディーといえば、自身の著作『悪魔の詩』内の描写や表現等がイスラーム教を侮辱しているとして、1989年に当時イランの最高指導者であったホメイニー師のファトワーにより、死刑宣告がなされた。その後彼はイギリスの警察による庇護を受けることになる。またこの作品の翻訳者たちが各国で重傷を受けたり、殺害されたりという事件が続いた。日本でも和訳を出した筑波大学の教授が何者かの襲撃により命を落としている。
    今回映画化されるミッドナイト・チルドレンにしてみても、当時ネルー=ガーンディー王朝と揶揄されていた政権に対する強烈な批判が含まれているとされ、インド国内においてはなかなかムズカシイところもあったようだ。
    とかく敵の多いこの作家。作品の映画化について、思わぬところから横ヤリが入ったり、撮影や出来上がった作品の上映を暴力的な手法で阻止しようという動きが起きたりすることもあるのではないか、とボンヤリ思う。
    しかし映画そのものの良し悪し以外についても、批判・脅迫含めて周囲でいろんな動きが展開していくとすれば、サルマーン・ルシュディーらしくもあり、ディーパ・メヘターらしくもあるなぁ、と無責任な野次馬は考えるのである。
    ともあれ、良い作品に仕上がることを期待したい。
    Midnight’s Children to be a film (BBC NEWS South Asia)

  • アルナーチャル・プラデーシュが近くなる?

    インドの通称セブン・シスターズこと北東七州。アッサム、メガーラヤ、トリプラー、ナガランド、マニプル、ミゾラム、アルナーチャル・プラデーシュのうち、最初に挙げた3州については、一部治安に問題がある地域も含まれるとはいえ、問題なく訪問できるが、他の4州については入域するために事前に所定の手続きを踏んだうえで内務省による制限地域入域許可(RAP)を取得する必要があるうえ、州毎に条件等はいろいろあるとはいえ、概ね『4人以上のグループ』という条件があったりもするので、私にはなかなか訪れる機会がなかった。
    中央政府・州政府レベルで、かたや北東州の観光の魅力をアピールする姿勢を見せつつも、他方では入域にかかる制限は続いてきた4つの州について、中には規則を緩和するところも出てきているようだ。ミゾラム・ツーリズムのサイトを覗いてみると、それ以外の人数でも申請できそうな具合に書かれている。州によっては、4人分の料金を旅行代理店に支払えば訪問可能という話も耳にしたことがある。
    最近アルナーチャル・ツーリズムを見てみたところ、現在では『2人以上』というところまできているようだ。この件について、同州内のいくつかの旅行代理店に問い合わせしてみた。単身訪れるつもりであっても、同時期に訪れる他の旅行者たちの分とまとめて申請するので問題ないとのこと。許可取得の費用は50ドルとか。
    ただしもともとそういうルールになっているのか、それとも代理店たちにとってオイシイ部分は許可取得代行ではなく、それを取得したお客に利用させるグループツアーであるがゆえなのかわからない。私がコンタクトしたいくつかの代理店はどれも『ツアーに参加するか、私どもが斡旋するガイドを雇うか、どちらかが必須です』と言う。
    入域に制限がある理由は、アルナーチャルの場合は他州と少々違うようだ。州内にこれといった政情不安を抱えているわけではないのだが、隣接する中国との係争地帯であることが大きいようだ。中国は、アルナーチャル・プラデーシュ州大半の地域ついて『自国領である』と主張している。この州はまた中国南部に大きく食い込んでいることから、軍事面での要衝であることはいうまでもない。同州はブータン、ミャンマーとも国境を接している。
    『本土』から眺めると、そうした地理条件に加えてこれを取り囲む自国の州がどれも内政的に安定しているとは言いがたいこともあり、なかなか無条件での旅行客受け入れには動きにくいのかもしれない。それでも5年、10年といった長いスパンで眺めれば、この地域への入域に関する制限は確実に緩和の方向に進んでいる。
    だが東北7州の中でも特に民族構成がバラエティに富んでいるのがこのアルナーチャルであるそうだ。26の民族、65の部族が暮らすというこの州は、まさにインドの多様性を写し出す鏡のひとつともいえるかもしれない。西には3000メートル超の高地が控えるチベット世界、東の丘陵地にはミャンマー、タイから中国雲南省にかけて分布するカチン系民族を含む東南アジア世界、その中央部のブラフマプトラ河流域にはアッサムへと連なるインド世界が展開している。ちょうどチベット、東南アジア、南アジアの境目に位置しているわけで、実に興味深い土地であることは間違いない。
    個人的には北東7州最大の目玉に違いないと思うのがこのアルナーチャル・プラデーシュ。主たる見どころといえばやはりチベット文化、チベット仏教寺院ということになることだろう。その中でもハイライトといえばタワンの僧院だが、まさにその『公式ウェブサイト』なるものがある。
    僧院の簡単な紹介、近隣地域に散在する分院に関する情報、フォトギャラリー等々あっていいのだが、『ツアー・オペレーター』のアイコンをクリックしてパカッと開くのはデリーのエージェント。何か提携関係にでもあるのだろうか。
    外国人の北東地域への入域については、90年代以降は時間の経過とともに地域差はあれども着実に緩和へと向かっているようだ。この動きを逆流させるような出来事が起きることなく、このまま今後も続いていくことを願いたい。すぐにそこを訪れる予定はないのだが、これまで実際の距離以上に『遠いところ』だったアルナーチャル・プラデーシュが少しずつ近くなってくるのは嬉しい限りである。

  • 海抜91cmの国土からの移住計画

    地球温暖化に関わる様々なニュースを目にする昨今だが、インドのすぐ南の島国から気になる記事を見かけた。タイトルもズバリ『モルジブの新国土構想』である。
    Plan for new Maldives homeland (BBC South Asia)
    1000以上の島々から成るこの国の『最高地』はわずか海抜2m、国土の標高の『平均』はたったの海抜91cm。すでに20世紀にはこの海域で20cmほど海面が上昇したとされている。今世紀には海面が60?上昇すると言われている。
    Wikipedia内にモルジブ首都のマーレを俯瞰する大きな画像が収録されている。水際まで迫る大小の建物や施設、背景のコバルトブルーと近代的なビルのコントラストが映える。だがこれを見てわかるとおり、海面すれすれのごく薄い陸地の上に街が構成されていることがわかる。
    国土が海洋に面した極端な低地であるモルジブは、国民の将来を見据えて移住のための代替地を探しはじめたようだ。文化的に近いインドかスリランカで代替地を探しているとか。
    現在の人口30万人を数えるモルジブ人たちは、将来『環境難民』となることが危惧されているという。
    代替地・・・といってもそう簡単に新たな国土が見つかるものだろうか。候補とされる近隣国にしても、30万人を抱える国家がそっくりそのまま移動して存続していける、人々が居住可能なスペースがどこかに余っているはずはなく、その地域の自国民や産業等を犠牲にしてまでモルジブのために提供してくれることもないだろうから、現実的なアイデアとは思えない。
    さりとて今のモルジブに人々が未来永劫暮らしていけるとも考えられないので、モルジブ政府が近隣国を含めた各国政府や国際機関等を通じて外交努力を続けていくしかないのだろう。
    同様にツバル、キリバスといった南太平洋の島々から成る国々も同様の問題を抱えており、10年ほど前にツバルは自国が海面上昇により居住不可能となった場合のために近隣のオーストラリアとニュージーランドに自国民移住受け入れを打診した結果、前者は拒否したものの後者は前向きの姿勢を見せた。またキリバスについても国土が海中に没することを前提としたうえで、定住地で自活していくための職業訓練も含めた国外移住支援の要請を先進各国に依頼している。
    もちろん温暖化により危機的状況にあるのはここに挙げてみた国々に限ったことではなく、他の多くの島嶼からなる国家はもちろんのこと、海岸に面したデルタ地帯や低地はすべからくそのリスクに直面している。もちろん日本とてその例外ではない。
    だが将来国土のほぼすべてが水没し、国家そのものが滅びてしまうほどの極端な状況に置かれている国については、そのほとんどが経済規模が小さなことに加えて、国際的な発言力も大きくない。これらの国々の人々は、今後の自国政府による自助努力の成果について楽観的にはなれないだろう。
    これらを遠く離れた南の島国の問題としてではなく、『私たちの問題』として捉えられるかどうか、彼らの未来はこの地球の各地に暮らす私たちみんなの意識のありかたにかかっていると言って間違いないだろう。
    冒頭のBBCの記事では読者、主にモルジブの人々からのコメントや意見等を募集している。

  • 海賊退治

    イエメンとソマリアの間の海峡、アデン湾は、世界で最も危険な海域と言われているのだとか。昨今国際ニュースで目にすることが多い海賊被害が続出しているがゆえのことである。 日本の外務省のウェブサイトにも以下のような記述がある。
    ソマリア沖の海賊・武装強盗行為対策に関する国連安保理決議の採択について
    アデン湾周辺海域:日本籍船の原油タンカー襲撃事案の発生に伴う注意喚起
    『海賊』といっても、子供の物語の挿絵で見かけるようなアイパッチをした首領やカギ型の義手をつけた飲んだくれ男が帆船に乗ってやってくるわけではない。高速船、精度の高いナビゲーションシステム、最新式の重火器類など近代的な装備を手にしたプロ集団であるだけに、各国が協調して警戒に当たっても、なかなかその被害が減ることはないようだ。
    海運大国でもあるインドは、10月下旬から自国船舶の保護のため同海域での海軍による警戒活動を始め、早速その成果を挙げたとの勇ましい記事がこちらである。
    Indian Navy foiled pirate attacks (Hindustan Times)
    記事の続き
    巡回中の軍用船から飛び立つ武装ヘリに乗り込んだコマンドーたちが、海賊行為の現場を急襲して撃退・・・と書いてみれば簡単だが、その現場ではもちろん壮絶な銃火のやりとりがあったことだろう。
    海軍による早速のお手柄といったところのようだが、そもそもこうした活動が不要な平和な海であってくれれば一番良いのだが。

  • 日々の糧は天から届くのか?

    コトの背景については詳しく報じられていないのだが、ちょっと気になる・・・というよりも、あんまりなニュースを目にした。『アフガニスタンで物乞い禁止』というのがそれだ。
    物乞いをする人たちは犯罪の餌食になったり、いいように搾取されたりしがちであるから保護しましょう、福祉施設に収容しましょうというのが表向きの理由らしいが、そんな余裕のある国情ではないはず。
    さりとてこういうお触れを出す政府にしてみても、それが現実的でないことは重々承知のはず。すると真の目的とは何だろうと、あれこれ考えてみたりするが、そんな呑気なことをしていられるのは、遠く離れた国の暖かい部屋の中で、今日明日の糧の心配もなく暮らす赤の他人。
    日々路上で物乞いを続けている当人たちにしてみれば、生存を賭けた最後の手段を否定されようと取り締まられようと、おそらく命ある限りそれを続けていくしかない。本格的な冬の訪れはもう目前に迫っている。
    Afghanistan bans street begging (BBC South Asia)

  • 荒松雄先生亡くなられる

    インド史・南アジア史専攻の歴史学者、荒松雄先生が亡くなった。
    インド中世史における数々の著作ととともに、新谷識のペンネームで推理小説も出版するなど、インドを専門とする大家であるとともに、小説家としても広く知られた方であった。
    ご冥福をお祈りします。
    東大名誉教授・南アジア史 荒松雄さん死去 (asahi.com)

  • ウランバートル 昼下がりのお寺で 2

    観音像
    ガンダン寺院の本堂で、高さ25メートルの巨大な観音像に参拝する。これは1930年代終わりに当時の極左当局により破壊されたものを1996年に復元したものだという。この寺院内の他のお堂も拝見したが、堂内の造作や色合い、僧侶たちの衣もさることながら、中に立ち込める匂いまでもがチベットのそれによく似ている。境内には仏具店も併設されている。ちょっと覗いてみると、タンカやタルチョといったチベット圏でおなじみのアイテムが多数陳列されていた。
    本堂を出入りする参拝客の老若男女の様子を眺めていると、やはり宗教施設ということもあってか、街中ではさほど見かけない伝統衣装デールを身に着けている人の割合が高いようだ。またここは晴の舞台でもあるらしい。やたらとめかし込んだ洋装の新婚カップルがここを詣でている。大きな業務用のビデオカメラ、スチルカメラ等を担いだ撮影チームに取り囲まれた彼らが本堂での参拝を終えて出てきたところをつかまえて、こちらも一枚撮らせてもらう。
    新婚さん

    (さらに…)