インド国内線 格安路線の終わりの始まりか?

2005年5月の初就航以来、インドでほぼ時期を同じくして発足した他の新興航空社同様、インターネットによる予約・発券により地上職員や施設を可能な限り省略し、保守関係も大幅に合理化するなど、基本的にはコストを思い切り削ぎ落とした格安路線を進んできた航空会社である。
しかしながら他社にはない垢抜けたイメージと高級感の演出等により他社との差別化に成功、そして積極的な新規路線参入により事業を拡大し、新興会社の中で大きく抜きん出た存在にのし上がるには長い時間を必要としなかった。さらには大手エア・デカンを吸収し、ジェット・エアウェイズに次ぐ国内線シェア第2位の大手会社となる。
今年9月からは国際線(バンガロール・ロンドン間を毎日就航)にも進出したがそれだけではない。11月にはやはりバンガロール・サンフランシスコ便の就航が予定されている。本拠地であるバンガロールを拠点として、もう少し近場の国際線つまりバンコク、シンガポール、ドバイといった路線への参入も近いのだとか。路線拡大の勢いといい、地元バンガロールの国際化の片棒を担いでいるようでもあり、もはや向かうところ敵なしといった印象を受けていた人は多いだろう。
ところが今日のヒンドゥスターン・タイムスのトップにこんな記事が掲載されていた。
『Jet, Kingfisher to fly together』 (Hindustan Times)
同記事の続き


昨今の燃油代高騰による航空各社が苦戦を強いられる中で、インド国内線業界首位のジェット・エアウェイズと同2位のキングフィッシャー・エアラインズの提携内容には、国内線・国際線フライトにおけるコードシェア、燃油購入における協働、発券を含む地上業務の連携、さらにはクルーを両社で融通しあうことも盛り込まれるようだ。その詳細は明日10月15日から4日間ハイデラーバードで開催される航空見本市India Aviation 2008で明らかにされるとのこと。
先述のヒンドゥスターンタイムスの記事中のグラフにあるように、ジェットとキングフィッシャーそれぞれ29.8%、29.1%のマーケット・シェアを占めており、合わせて国内線市場のほぼ6割を占めるという突出ぶりだが、この記事の続きの部分に書かれているとおり相当な赤字体質であり、決して甘い果実を享受しているわけではないようだ。
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In 2007-2008, Kingfisher had reported a loss of Rs 816 crore; Jet Airways’ losses added upto Rs 653 crore. The two airlines are now carting losses of around Rs 9 crore each every day.
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現在までのところ、先に挙げた業務における提携関係以上の話は出ていないようだが、たとえ両社首脳がそれを口にせずとも、一部では両社の統合へ向かうかも?という観測も出ているようだ。
燃油代が大幅に値上がりしている関係で、本来ならば鉄道の2Aクラスあたりを利用する人々の需要を吸収することを意図していたはずの格安航空会社のフライトながらも、各種追加料金とりわけ燃油代のサーチャージを加算するとあまり格安感がなくなっている。
これまでの空の業界の『古い体質』に対して、挑戦状を叩きつける形で急伸してきた新興会社の中で、とりわけ大きな成功例を世に示してきたキングフィッシャーが、格安路線出現以前の会社ジェット・エアウェイズとこうした形で大幅な提携関係を結ぶということは、『古い業界』の敗北か、それとも『新興会社』による格安路線の終わりの始まりなのかといえば、どうも後者のようにしか思えてならない。
2003年8月のエア・デカン就航により、インド国内線においては雨後のタケノコのように格安路線各社が参入し、インドの空の旅のネットワークは就航地・便数ともに飛躍的に増大した。これにより相対的に運賃が値下がりして利用しやすくなったため、多くの空港で本来のキャパシティを超えるフライト数、旅客数を扱うこととなり、各地で空港設備の拡充や空港そのものの移転や新築が相次ぐこととなったのはご存知のとおり。
航空バブルとでもいうべき現象が続く中、熾烈な競争の中でどこの新興会社もまだほとんど利益の出ない状態が続いていることから、『今に航空会社が淘汰されていく』との認識は多くの人々の間で共有されていたようだが、燃油高騰という一種の外圧の中でその動きが一気に表面化するスレスレのところまで来ているのではないかと思う。
※『流行のドバイの背景に?』は後日掲載します。

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