新年快楽!心想事成!!

2014年の春節は1月31日である。その前日30日は大晦日ということになるので、中国、台湾、加えてその他の中国系のたちが多く暮らしている地域はそれから一週間ほど正月の華やいだ雰囲気の中で休日を過ごすことになる。

アセアン諸国には多くの華人たちが暮らしており、地域によって潮州人が多かったり、広東人が多かったりという特色があるが、それぞれのコミュニティにおける伝統にローカル色を織り交ぜて、様々な祝祭が展開される。

中国系の人々にとって、たとえ大陸の人であれ、在外華人であれ、そうした自分の住んでいる国の外で同じ中国系の人々、とりわけ同じ客家系であったり、福建系であったりといった同一のコミュニティに属する人々の暮らしぶりやしきたりなどを目にするのは、なかなか興味深いことなのではないかと思う。

自国の家庭内で使っている言葉が、まったく異なる国に定住した先祖の同郷の人々に通じるということはもとより、それぞれの土地に根付いて代々暮らしているだけに、生活様式もローカライズされ、普段使っている語彙も地元の言葉等の影響を強く受けていることに気付いたりもすることだろう。

中国から国外への移民の初期は、ほとんどが男性ばかりであったため、同じ潮州人、広東人といっても、本土の人々とはかなり異なる風貌になっていることも少なくない。それでも民族としての中国人、あるいはもっと細かなコミュニティの出自であるというアイデンティティを持つことができるのは、同族としての絆の深さと自身が背負う文化や伝統への愛着とプライドゆえのことだろう。

私自身は中国系の血を引かない、ごく普通の日本人であるため、そのような感情を抱くことはないのは少し残念な気がしないでもない。

さて、アセアン諸国から見て西の方角にあるインド。かつてほどの人口規模はないとはいえ、今も決して少なくない数の華人たちが暮らすコールカーター。多くは広東系あるいは客家系であるが、先祖の出身は広東省の梅県が多い。通信手段の限られた時代であったため、中国から国外への移民の場合だけでなく、インドから東南アジア方面その他への移民たちの場合でも、同郷から非常に多くの人々が渡ったというケースは多い。人づてのネットワークがそうさせたともいえるだろう。

コールカーターの華人社会について、地元で生まれ育った華人自身(現在はカナダに移住)によって書かれた本があり、インド人の大海の中の片隅で暮らす華人たちの暮らしぶりを活写している。描かれているのは、華人社会の中での濃密な人間関係であり、周囲のインド人たちとの関わりであり、1962年に勃発した中印紛争のあおりで苦渋を舐めることになった中華系の人々の悲哀でもある。

書名 : The Last Dragon Dance

著者 : Kwai – Yun Li

発行 : Penguin Books India

ほぼ同じコンテンツで「Palm Leaf Fan」という書名でも出版されており、こちらはamazon.co.jpでKindle版を購入することができるため、インド国外から購入の場合は手軽だろう。

書名 : Palm Leaf Fan

フォーマット : Kindle版

A SIN : B009LAH84G

同じ著者による論文「Deoli Camp: An Oral History of Chinese Indians from 1962 to 1966」は、ウェブ上からPDF文書でダウンロードできるが、こちらも必読である。ラージャスターン州のデーオーリー・キャンプといえば、第二次世界大戦時にアジアの英領地域に居住していた日本人たちが収容された場所として知られている。中印紛争により「敵性国民」とされることになった華人たち(インド国籍を取得していたものも含む)もまた、居住して商売を営んでいた土地から警察に連行されて、デーオーリー・キャンプに収容された時代があった。

この論文は、キャンプでの日々や解放されて居住地に戻ってからも続く差別や困難などについて、体験者たちにインタビューしてまとめたものである。これを読むと、ベンガル州北部のダージリン、メガーラヤ州のシローン、アッサム州の一部にも少なからず華人たちの居住地があったこともわかり、少なくとも中印関係が緊張する以前までは在印華人たちの社会にはかなりの奥行きがあったことがうかがえる。

さて、話は華人たちの旧正月に戻る。今年のコールカーターでの華人の春節のことを取り上げた記事をみかけた。

Chinatown in Kolkata, only one in India, to celebrate Chinese New Year amid plans for a facelift (dnaindia.com)

ライターであり写真家でもあるランガン・ダッター氏も自身のウェブサイトで華人たちの新年を取り上げている。

Chinese New Year, Calcutta (www.rangan-datta.info)

短い動画だが、昨年のコールカーターでの華人たちの旧正月の模様を映したものもある。

Chinese New Year in Kolkata India (Youtube)

Youtubeの動画といえば、ムンバイー在住のドキュメンタリー映像作家のRafeeq Ellias氏がコールカーターの華人たちについて取り上げた作品「The Legend of Fat Mama」を観ることができる。

こちらは旧正月の祝祭の映像ではないが、同地の華人社会をテーマにした秀作なので、ぜひ閲覧をお勧めしたい。

※「マジューリー島4」は後日掲載します。

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