マニプルへ1 インパールに飛ぶ

コールカーターから飛行機でマニプル州のインパールへ飛んだ。一般の日本人の間で、この州都の名前は、具体的にインドのどのあたりにあるのか知らなくても、第二次大戦末期の旧日本軍による『インパール作戦』によって広く記憶されているが、長らく観光目的の訪問先としては認知されていなかった。

以前は、マニプル、ナガランド、ミゾラムの三州について、RAP (Restricted Area Permit)を取得する必要があった。ちゃんと手間かけて準備すれば取得可能なものであったが、申請に際しては何人以上のグループでないといけないとか、RAPを取得した全員が一緒に行動しなくてはならないなどといった面倒な条件があった。必要な人数を揃えることができなくても、現地のツアーに参加するという手もあったのだが、これがまた金額の張るものであった。加えて、RAPは各州ごとに取得する必要があったこともあり、ちょっと思いついてこの地域にフラリと出かけてみるという具合にはいかなかったのだ。

そんなエリアだが、十数年前くらいまでは、ある目的でナガランドやマニプルを訪れる日本人年配者はかなりいたらしい。かつてインパール作戦に従軍した元兵士たちによる戦友会が慰霊のために盛んに訪問していたようだ。だがそうした戦争世代の人たちも高齢化しているため、インド東部でも隣国のミャンマーでもこうした人たちの姿を見ることはほとんどなくなっているのだが。

RAPの取得が義務付けられていていた背景には、インド独立以来長らく続いてきた活発な分離活動が背景にあるわけだが、そうした状況もかなり落ち着いてきてようやく恒久的な和平が期待できるムードになりつつあること、中央政府・州政府ともに内乱時代には、ほぼ存在しなかった観光業の振興を画策していることもあり、2011年1月1日からとりあえず試験的にRAP無しでの入域を認める運びとなっている。このまま特に問題がなければ、アッサムやメガーラヤなどのように、いつでも自由に訪れることができるようになるのだろう。

今回の旅行は、韓国の親友L君と同行である。コールカーターからIndiGoのフライトを利用。新興のLCCキャリアの割には、かなり地味なイメージのある会社だが、フライトアテンダントは、ボンドガールのような派手な美人であった。機内誌の片隅に機内スタッフ募集の求人広告が出ている。LCCのこうした現場スタッフというのは、若くて魅力的なうちにコキ使われるだけの仕事だろうから、旧来からの航空会社の社員と違って、自身がキャリアを積んで長く務められるようなところではないような気がする。

ともあれ飛行機は離陸した。インパールまで1時間程度のフライトだ。コールカーターを出てからバーングラーデーシュ上空を通過して東へと向かう。平原部を過ぎるとようやく山並みが見えてきた。インドのトリプラー州あたりに入ったのだろう。

機内から眺めるトリプラー州(?)上空の風景

機内では、私とL君の隣の席の女性が声をかけてくる。アーンドラ・プラデーシュ州在住であるとのことだ。インパール近郊にある実家に帰郷するところであるとのこと。

インド北東地域のモンゴロイド系の女性に限らず、在インドのチベット系女性にも共通して言えることだが、化粧がインド式であるため、同じモンゴロイド系である私たちから見ても、かなりエキゾチックな風貌に見える。後者については、中国で見かけるチベット女性たちとずいぶん違った印象を受けるくらいだ。まるで人種そのものが違うかのように。

乗客の大半は風貌からしてマニプル州の人々のようだ。男女ともに総じてかなり小柄の人たちが多い。そのため身長170cm台前半の私もL君も、この中ではかなり大柄ということになってしまう。スウェーデン、デンマーク等、スカンジナビア半島の人々が日本を訪れるとこんな具合なのだろうか。

眼下にかなり規模の大きな街が見えてきた。上空を旋回して少しずつ下降していき、国道150線沿いにあるこの空港に着陸した。荷物を受け取る前に、専用のデスクで外国人は形式的な登録手続きをさせられる。パスポートに入域の証のスタンプも押された。

空港では大勢の出迎えが来ていた。地元スポーツ選手団の出迎えだ。機内に非常に体格が良く、揃いのジャージ姿の女性たち数人組みが乗り合わせていたのだが、彼女たちはウェイトリフティングの大会から帰郷した選手たち。翌日の新聞で彼女たちが写真入りで取り上げられていた。

こじんまりしたターミナルの外に出ると、そこにいる大半の人たちはモンゴロイドの風貌だ。動作もゆったりとしていて、のんびり落ち着いた感じを受けるのだが、空港敷地内でかなりの人数のインド兵(マニプルの人たちも『インド人』だが、ここで言う『インド兵』とは北東地域外出身の軍人のこと)が厳しい表情で警戒している様は、ちょっと信じ難い気がする。

武装した兵士たちは、いつでも銃弾を撃つことができる体勢で警備しており、軍用車両の上から上半身を突き出して警戒に当たっている姿もある。いかつい装甲車も辺りを走り回っており、ずいぶん物々しい雰囲気であることにちょっと驚きながら、オートリクシャーで市内へ向かう。

<続く>

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です


上の計算式の答えを入力してください