ゆるいヒンドゥー主義

バナーラスのヴィシュワナート寺院。モーディー肝いりのこの地域の再開発工事が完成しての式典。こうして上空からの映像を見ると、もともとはたいへん建て込んでいた地域にあった寺院だが、周囲を広く取り壊して見事な空間を創出している。このお寺のシカラが間近に見下ろせる宿に泊まったことがあった(今はどうかしらないが、当時外国人は入れないことになっていたので、そこに宿泊するメリットがあった)が、それらも含めて地ならししたのだろう。

BJP、RSS、VHPのいわゆる「サングパリワール」の中の政治部門としてのBJPが推進する「ヒンドゥトヴァ」は、よく「ヒンドゥー至上主義」と邦訳されるが、こうした言葉では誤解を招くだろう。厳しい戒律、教条主義といったものを連想するであろうはずだからだ。これとは裏腹に、伝統回帰や復古主義ではない新たな(緩くて広い)ヒンドゥー文化の創出。厳格な原理主義とは反対に、ゆるやかに、そして幅広く人々と社会を包み込んでいく。これが実際の「ヒンドゥトヴァ」の姿だ。

うまい例えが思いつかないが、日本でゆる〜く浸透している英米文化、スポーツであったり祝祭であったり、キリスト教の行事などに近いもの、とも言えるのではなかろうか。

ヒンドゥーが本来持っていた差別的構造を否定するとともに、ヒンドゥーを宗教ではなく、インド地域共通の文化として、民族的結合性には弱いものがある多民族・多文化国家を民族国家として統合へと導こうという試みのようで、それ自体は悪くないように思えるこのごろ。北東州でのBJP勢力拡大、そしてラダック地域での支持拡大は、まさにそれを象徴しているようだ。本来は「周辺地域」であった少数民族エリアを次々にメインストリームの中に取り込んでいっている。

元来、洒落者のモーディー。彼の装いをイメージしたアパレルのブランドもあるほどなのだが、近年の彼は(聖者に近い)賢者といったムードでの演出が多くなっている。このあたりも戦略の一環となっているのがこの人の凄さの一面だが、それほど自信を深めているということだろう。

ただし多くの人々を結合させるには、やはり外なる敵と内なる敵との対峙が効果的という面もあるようで、現政権が外の敵としてパキスタン、内なる敵としてムスリムへの対応が冷淡であったり、しばしば苛烈であることがとても気になる。

काशी वो है… (Twitter @narendramodi)

PM Modi inaugurates renovated Kashi Vishwanath Dham Corridor (Youtube)

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