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  • 『旅行人』2008年上期号はグジャラート特集

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    年10回発行から季刊、そして年2回発行(6月と12月)へと移行してきた旅行人。内容も旅先の宿の情報ノート的なものから、地域の文化やアート等の紹介も含めた旅行情報誌へと脱皮してきた。特集記事については、学術関係を含めた該当分野の専門家による記事も載るなど、好奇心あふれる若いバックパッカーのための旅行情報誌から、旅をテーマに落ち着いた大人向けのクオリティ・マガジンへと変化してきている。
    発行元の事情もさることながら、旅行雑誌『旅行人』の前身であったミニコミ誌『遊星通信』時代からの読者も含めて、読者がそれなりの年齢層になってきているということもあるようだ。水モノの旅行情報よりも土地の魅力そのものの紹介、記事内容と印刷ともに量よりも質を重視した(年10回発行のころよりも号ごとのページは増えた)誌面構成になっている。その旅行人の最新刊である2008年上期号でインドのグジャラート州を特集している。
    もともとグジャラートといえば、歴史、宗教、自然のどれをとっても偉大な遺産の宝庫であり、隣のラージャスターン州に負けず劣らずのきらびやかな観光スポットに恵まれた地域という印象を受けていたが、なぜか観光客がさほど多く訪れない穴場的な地位に甘んじていることについて私自身、常々不思議に思っていた。
    デリーやムンバイーからのアクセスが悪いわけではなく、インドでも経済面で先進的な州のひとつということもあり、文化的かつ便利な地域である。ただマイナス面といえば、連邦直轄地で行政的にはグジャラート州外にあるダマン&ディーウを除けば禁酒州であること、夏が非常に暑いこと、2002年にゴードラー駅で起きた列車焼き打ち事件をきっかけに発生した大規模な暴動によるネガティヴなイメージくらいだろうか。
    この特集で取り上げられているのは、アーメダーバードに点在する、ルイス・カーン、コルビュジェといったモダニズムの巨匠たちによる現代建築、チョーター・ウダイプル近辺の先住民のペインティング、カティアーワル半島の魅力的なスポット、カッチ地方の中心地ブジとその周囲の村々、この地域に暮らす少数民族ラーバーリーの人たちの生活文化などである。
    数々の美しい写真とともに、読みごたえのある内容であった。残念ながらどこの本屋にでも置かれているという訳ではないので、心当たりがなければ同社のウェブサイトで購入することも可能だ。ぜひご一読されることをお勧めしたい。

  • PEN 『新しいインド 永遠のインド』特集

    pen
    遅まきまがら、現在発売中のPEN12月1日号はインド特集。『Amazing INDIA』のキャッチコピーとともに取り上げられている内容は、デザイン、テキスタイル、音楽からはじまり、料理に教育、ITに旧王族といった具合だ。スポットを当てるフィールドそのものには新鮮味や未知の発見があるわけではない。昨今のインド特集といえば、ことさら伝統的なものや古い側面と、最新のトレンドや華やかな消費生活を対比させて、『多様性の国だ』と演出しているものが多いが、そういう扱い方自体や紹介の対象となるモノ自体がマンネリ化しており、逆に『インドはこうですっ!』と、やけに画一的な印象を与えてしまいかねないことが気にかかるこのごろである。
    それでもインド建築研究家による署名記事とともに、特集の協力者名に各方面専門家や有識者の名前があるなど、『クオリティ・マガジン』を謳う同誌らしく、インドのモダンな部分と伝統的な部分両方を、一般読者に伝えるために質の高い特集を目指しているようである。それぞれの記事は決して悪い内容ではなかっただけに、すでに手垢のついた手法で特集が組まれていたことのみが惜しまれる。
    コンテンツそのもの以外に注目すべきことのひとつとして、この号で主要三都市として挙げられているのはデリー、ムンバイーに加えてバンガロールであることが挙げられる。最初のふたつは首都と最大の商都であるから当然のこととして、三番目が昔ながらの『四大都市』の残りふたつ、コールカターとチェンナイではなく、90年代以降急浮上してきたカルナータカ州都。在留邦人数も日本からの投資額はもちろん、IT関連という旬な産業で注目される街である。
    年2回開催されるJETROによるBJTビジネス日本語能力テストの試験地もニューデリー、バンガロール、ムンバイー、プネーとなっている。今年度において前者ふたつは2回とも実施、後者ふたつは交代で隔回実施となっている。つまり『ビジネス日本語市場』としては、ムンバイーよりバンガロールのほうが上位になっていることがここに端的に示されているのだ。独立以来、軍需産業や電機産業が隆盛しつつも、諸外国から見ればインドに数多くある工業都市のひとつにしか過ぎなかったこの街だが、今や経済を主とする日本とのつながりという点で非常に深いものがある。また港湾を持たず内陸に位置するこの地方都市がインドを代表する国際都市にまで成長していることは、まさにこの街をリードする産業が重たくてカサ張る『モノづくり』ではなく、『頭脳』やそこから生み出される『アイデア』であるという性格を顕著に表わしているようでもあり興味深い。
    各都市と日本とのつながりはさておき、近年の急速な発展のもとで地域格差も大きく広がりつつあるインド。前例のない好調な経済成長を続ける都市は、内外の更なる投資を呼び込む。労働市場としても拡大するにつれて外部からの人口が流入するとともに、都市部や周縁の郊外地域が拡大していく。そのいっぽう、停滞を続けている都市、成長を記録しつつも低率で推移しているエリアへ内外の注目度は相対的に低くなっていく。インド国内での地域間、都市間のバランスも大きく変化しつつあるのが今の時代である。新しいインドにおいて、四大都市という言葉の示すものが入れ替わる日、あるいはその言葉自体が死語となる日もそう遠くないのかもしれない。

  • インドもの続々 ロンリープラネットのガイドブック

    India, Northeast India, South India, Bhutan
    いまや旅行ガイドブックの老舗となっているロンリープラネット社だが、いわゆるバックパッカーの先駆けであったトニー・ウィーラーとその妻モーリーンがアジア横断旅行後、1973年にオーストラリアにて創業。当時はオーストラリアやイギリスなどからアジア方面に出かけるヒッピー旅行者や安旅行者などの読者を相手にしたベンチャー企業であり、今日のように世界中の書店にLPのロゴが入ったシリーズもの旅行案内書を大量に供給するまでになるとは想像できなかったことだろう。
    ガイドブック『India』の初版は1981年発行で、今年9月に出たものは12版目となる。さっそくこれを手に入れてパラパラめくってみた。いつもどおりシンプルなレイアウトで写真類が少ない分、情報がギュッと濃縮されている。従来の版が全部で1120ページであったのに対して、今度は1236ページと着実に増えている。ただし紙厚が変わったのか重ねてみると、わずかながら薄くなったように見える。(これまで私が使っていたものが繰り返しめくっていたおかげで背が広がってしまったのかもしれない)

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  • ついに発刊! Lonely PlanetのAfghanistan ?

    しかしながら1978年以前そうであったように、これといった産業がない同国に治安の安定が訪れれば、観光業が国の基幹を支える重要な産業のひとつとなるべきであることは間違いない。国庫への歳入への貢献、外貨収入はもちろんのこと、同業への諸外国からの投資、関連する様々な業種で人々への雇用をもたらすことが期待される。
    このガイドブックに取り上げられているAfghan Logistic & ToursGreat Game Travelといった旅行代理店などは、来るべき時代を見据えて着々と準備をしているのだろう。
    ところで在日アフガニスタン大使館のサイトを覗いてみた。これがなかなか頑張っていて好感が持てる。
    同国政府、経済、歴史、文化等々にかかわる様々な記事が和文と英文で用意されており、アフガニスタンを積極的にPRしていこうという姿勢が伝わってくる。駐日大使館が発行するニュースレターもPDF形式で公開されている。新興国においては若くして活躍する外交官、政治家が多いが、このサイトで紹介されている駐日大使もまだ30代後半。日本に赴任する前には駐米全権大使代理という職にあったそうだ。限られた予算の中で、先頭に立って色々前向きに取り組んでいるのではないだろうか。
    サイトには旅行情報も掲載されている。各地の名所、主要都市間の距離を示した一覧表、航空会社やホテル情報へのリンクも含まれている。ここでもやはり国内事情さえ許せば観光業を振興させたいという強い意志を感じずにはいられないだろう。
    ここからリンクが張ってあるアリアナ・アフガン航空だが、首都カーブルからデリー、イスラーマーバード、アルマトイ、テヘラーン、ドゥシャンベといった周辺諸国の主要都市からの便だけではなく、ドイツのフランクフルトへも毎週往復しているとは知らなかった。
    同社によるデリー発カーブル行きは火・土の週2便だが、我らがインディアン・エアラインスはこのルートを火・木・土・日と4便も飛ばしている。デリーを朝9時40分に出て、3時間後の12時40分にカーブルに到着。
    首都だけでもDarul-Aman PalaceBagh-e-BabulKabul MuseumBala Hissar、Mausoleum of Nadir Shah
    OMAR Land Mine Museumといった見どころは多いので、比較的安全とされる首都市街地のみに数日滞在してトンボ返りするだけでも充分楽しめるかもしれない。
    私自身は今のところ訪れる予定はないのだが、とりあえずガイドブックを眺めてあれこれ思いを馳せつつ楽しんでいる。アフガニスタンの人々が安心して日々送ることができる未来を願い、そこを気楽に訪れることができる日が近い将来訪れることを祈ることにしよう。
    あまり売れそうにない(?)ながらも、意欲的かつ実際的な旅行案内書が出たおかげで、ページをめくりつつイマジネーションを働かせて脳裏に具体的な風景(・・・といっても想像力の乏しさから頭に浮かぶのはペシャーワル近辺そのままの光景でしかないが)を描き『紙上旅行』楽しむことができるようになっただけでも大きな進歩かもしれない。Lonely Planetに感謝!である。

  • 素敵な図版満載のガイドブック

    EYEWITNESS INDIA
    『これはなかなかいいよ』
    手にとって薦めてくれたのはインドに長く暮らす親友L君だった。彼にはいつも何かと世話になっている。
    イギリス系の出版社DK (Dorling Kindersley)から出ているEYEWITNESS TRAVEL GUIDESというシリーズのINDIAという本である。表紙のデザインは凡庸だが、ひとたびページを開いてみれば、他の多くのガイドブックとの違いは明らか。エントリーされている土地の多さでは、LP(ロンリープラネット)のINDIAに匹敵する。しかしこれとはまったく性格が違う本なのだ。

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  • 競り勝つ力

    東洋経済2007年10月20日号
    現在発売中の東洋経済10月20日号で、『インド人と中国人』という特集が組まれている。この類の経済誌でBRICsの国々の市場動向、産業構造、進出の事例といった部分にスポットが当たることが多いが、今号は両国の頭脳パワーに焦点を絞っている。コストが低く抑えられるアウトソース先としてではなく、人件費が安い『工場』としてでもなく、突出した才能や優れた能力を持つ人材の供給元としてのインドと中国を追う。それがゆえに今回の目玉は両国の『人』なのである。
    印中合わせて25億人にも達することはさておき、これら平均値の無い国々中で所得階層上位10%に属する人たちだけでも充分『大国スケール』だ。所得同様にインテリジェンスについても、広い国土の膨大な人口にまんべんなく行き渡るのではなく、全体から見るとごく一部分に非常に濃密に凝縮されているように見える。しかし巨大な分母(=総人口)からすれば相対的にごく小さなセグメントであっても、単純に『数』として捉えれば他国をはるかに凌駕する規模となってくる。
    そうした事柄を踏まえて、両国を代表するトップ教育機関と学生たち、その卒業生たちをめぐる人材争奪戦、エリート校出身の財界人の活躍等々といった記事が並ぶ。
    地球がどんどん小さくなり、世界のフラット化が急速に進む昨今、どこに暮らしてもいわゆる勝ち組とそうでない人々との格差は開くいっぽう。しかしながら人は収入の多寡のみを励みに生きていけるわけでもない。働き方や稼ぎ方、ライフスタイルや価値観など様々なものがグルグルと目まぐるしく移ろう今の社会で、個々が満足できる居場所を見つけるのはそうたやすいことではない。そのダイナミズムこそが成長のエネルギーであり、そこで勝ち抜いてきた人々知識、能力や経験だけではなく、まさに『競り勝つ力』について着目したのが今回の特集であるようだ。

  • その名も「インド」

    インド
    日経ビジネス人文庫から書き下ろしとして出版された「インド」という本がある。「目覚めた経済大国」という月並みなサブタイトルが付いているものの、日本経済新聞のデリー駐在記者による現地報告というだけあり、とかく注目されがちなITのみならず、インドの様々な分野の産業にスポットライトを当てて、左派勢力の閣外協力によりかなり厳しいかじ取りを続ける連立政権の経済運営と今後の課題を幅広く探っている。
    内容は一般向けの入門書だが、記述内容が知識のはぎ合わせになることなく、政治経済、産業各界が相互にどういう風に作用して今のインドのアウトラインが成り立っているのか理解しやすく上手にまとめてある。また社会の各要所を占めるキーパーソンについてのわかりやすい記述とともに、経済という視点から眺めたインドの現況を手っ取り早く理解するために実に便利な一冊であろう。この類の本はフレッシュさが命。比較的最近出版された本なので、大手企業参入が進む小売業界、ルピー高といった旬なトピックも盛り込まれているのもいい。

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  • インド算術大流行り

    巷ではインド式数学がブームなのだそうだ。大手書店で『頭が良くなるインド式計算ドリル』『脳をきたえる インド数学ドリル』『インド式計算練習帳―脳力がみるみるアップする』『インド式秒算術』等といった書籍がズラリと並ぶ様は壮観だ。
    数字が不得手な私はパラパラめくってみただけで頭が痛くなりそうだが、やはり昨今インドがIT産業で注目されていることに加えて、子供たちが学校で学ぶ二桁の掛け算のことなどが広く知られるようになったことで、算数はインドに学べ!という風潮になっているのだろう。図書類はもちろんのこと、GoogleやYahooでキーワードを「インド 算数 数学」と入れて検索をかけてみると、すさまじい数のインド算術サイトが引っかかってくる。
    そんな中、横浜市でインド料理店を経営する方による「インド人シェフのブログ」にインド算数の教科書の紹介記事がある。小学校1年生用のものだそうだ。計算表は2の段から始まって20の段まであり、それぞれ×1から×20までズラリと書かれている。10の段から「九×九」の世界で育った私にとっては未知の世界だ。しかも各表の半分は二桁同士の掛け算で、ペンか電卓なしにはとても解けそうにない。たとえば18の段はこんな風にスゴイ。頭の柔らかい子供時代に暗記してしまえばどうということもないのだろうか?
    「インド式」であろうがなかろうが、こうした「算数ブーム」をきっかけに数というものに関心を持つきっかけになるといいのだと思う。子供時代に苦手意識を持つのも大好きになるのも、ごく些細なはずみによるものであることが多いのではないだろうか。他者よりできる、できないは二の次で、興味を持ったことについてはひたすら打ち込んだりするのが人というもの。テニスにサッカー、釣りに登山、写真に料理、どんな趣味や楽しみだって、自分が抜きんでて優れているから好き…というものではないだろう。他人との比較ではなく、自分自身がそれと親しむことが心地よく楽しいのである。
    こんな本が市中にあふれている今、「数字はイヤだ」なんて食わず嫌いするのではなく、どれか一冊手にして頭の中をグルグル回転させてみると何かささやかな発見があるかもしれない。

  • いま何が起きているのか?

    プールヴァーンチャル・プラハリー
    プールヴァーンチャル・プラハリーपूर्वांचल प्रहरीというヒンディー語紙がある。アッサム州都グワーハーティーを本拠地とする会社が出している新聞で、他に英字新聞も出している。
    Times of Indiaのような英文全国紙やデーニク・ジャーグランのようなヒンディー語による広域紙と違い、かなり地元密着型の新聞であるため地元ニュース満載なのがうれしい。しかもごく狭い地域で販売されるようなタブロイド版で印刷の質も悪いローカル紙よりも紙面が多くて各々のニュース記事の精度も高い(?)と思われるのもありがたいし、地元アッサム語あるいは同様に広範囲で使われているベンガル語ではなく、ヒンディーで書かれているのもうれしい。インド北東部の進歩的ヒンディー紙を謳うだけあり、本拠地のアッサム州外でもメガラーヤ州、トリプラ州その他でも売られている。
    手が空いているときには何か読むものがないと落ち着かない。それに訪れた先で今何が起きているのか常々興味のあるところだ。そんなわけで、朝食のときに広げて読むことのできる新聞が見当たらない土地ではどうも消化不良気味になってしまう気がするし、逆にこのような地元紙があると食もどんどん進むのである。
    近郊の広場でのメーラーの開催が書かれていれば、『行ってみようか』ということにもなるなど観光にも役立つこともあるが、数日間紙面を眺め続ければその土地で今何が問題になっているのかについておおよその輪郭を掴むことができるのがいい。

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  • オススメの一冊 『インドカレー伝』(Curry a biography)

    インドカレー伝
    昨年末に出版された『インドカレー伝』という本がある。タイトルだけ眺めると料理のハウツーものか何かみたいに見えるが、手にとって読んでみるとこれが実に中身の濃いインドと欧州の食文化交流史なのであった。
    イギリスがインドの食習慣に残したものといえば、紅茶、朝食のオムレツとトーストの他にはあまりないものとばかり思っていたが、実はイギリス人向けの『インド料理』やアングロ・インディアンの家庭で作っていたものがインドの人々の食習慣の中に根付いたものが少なくないらしい。たとえば『チキンティッカ・マサラ』はその典型で、出てきたチキンティッカがパサついていると突き返したお客がいたことから、厨房の料理人がキャンベルのトマトスープ缶とクリームを混ぜてそれにかけて出してみたことがはじまりなのだと書かれている。
    もちろんヨーロッパ人たちがインドの食世界にもたらした影響は、チキンティッカ・マサラ単品のみではない。15世紀にイタリアのジェノヴァ出身のコロンブスがアメリカ大陸を『発見』したことにより、トウガラシがヨーロッパに持ち込まれることになったが、この植物をインドに持ち込んだのはポルトガル人であるとされる。ポルトガル王の資金援助を受けた1498年にヴァスコ・ダ・ガマ率いる三隻の船がマラバール海岸のカリカットにて同国のインド到来の第一歩を記すことになる。トウガラシがいつインドに導入されたか正確な時期はわかっていないようだが『ヴァスコ・ダ・ガマのインド上陸の30年後にはゴア周辺で少なくとも三種類のトウガラシ属の植物が栽培されていた』とある。この時期以降、このあたらしい香辛料はインド亜大陸全土に広がっていくことになるのだから、これだけでも欧州人たちがインドの食事に与えた影響は相当インパクトの大きなものである。
    トウガラシのみならず、ジャガイモ、キャベツ、カリフラワー、トマト、インゲン等々、ヨーロッパ人たちによりインドに初めて持ち込まれた野菜類は多いらしい。するとそれ以前は一体何を食べていたの?という疑問も沸いてくるが、これらの野菜がインドに根付いてこそ『菜食文化』がインドで本格的に花開くようになったという面もあると著者は分析している。

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  • デジタル雑誌に思う

    デジタル雑誌
    このほどニューズウィーク日本語版Digitalのダウンロード販売が開始された。これをFujisan.co.jpが取り扱っている。
    表紙と広告を含めた記載内容すべてが市販されている号そのままのレイアウトでパソコン画面上に再現されるものである。表紙から裏表紙までが全部デジタル化されているため、ウェブサイトと違って紙媒体のメディアの記事をすべて目にすることができるのだ。
    同サイトでは他にもダカーポベースボール・マガジンWan等々のデジタル版が販売されている。もちろん定期購読申し込みのみならず、一冊ずつ単品での注文もできる。
    私は冒頭のニューズウィーク日本語版を含めて何か個別の雑誌の定期購読を検討しているわけではないのだが、海外在住の人々にとって是が非でも目を通しておきたい日本の雑誌があれば、発行日に即、すでに発刊されているものを単品で購入する場合は注文後即座に、そして確実に手に入るという点で紙媒体を凌駕するメリットがあるだろう。
    現在、ニューズウィーク日本語版を買うと、同じ号のデジタル版が無料でダウンロードできるようになっているが、ここで取り扱っている電子雑誌類の中にはいくつか無料の見本誌が用意されているので使い勝手を試されてはいかがだろう。
    これらデジタル雑誌は一見PDFファイルに似ているが、記事内にある参照URLサイトのアドレスをクリックするとそのまま飛ぶことができる、いくつか音声および動画プログラムが埋め込まれている部分ではマウス操作によりインタビュー内容や映画の予告編などのビデオが動き出すようになっていたりするなどデジタル雑誌ならではの工夫がなされている。また雑誌によっては音声付で発売されているものもある。
    Fujisan.co.jpで取り扱うデジタル雑誌をダウンロードしたり読んだりするためには、専用のFujisan Readerというプラットフォームが必要となり、まずはこれを所定の手順を踏んでダウンロードしてパソコンにインストールすることになる。
    電子媒体であるがゆえにコピー対策は万全なようだ。その反面、利用者にとってはやや使いづらい部分もある。ダウンロードしたパソコンでしか読むことができないため、最初からモバイルPCにダウンロードしなくては屋外に持ち運ぶことができないし、自宅でダウンロードしたデジタル雑誌を出先のパソコンで参照するなどといったこともできない。本来手軽に持ち運びできるはずの雑誌ながらも、デジタル版だと読む場所が限られてしまうのだ。
    また複数の見本誌をダウンロードしてみて気がついたのだが、版元によっては記事を印刷することができない(Print Screenも不可)なものがあることについても不便に感じる人は少なくないではないだろうか。例えば記事中で取り上げられていたスポットや店などを訪れる際、文章や地図をプリントアウトしてカバンの中に放り込んでおきたいことだってあるはず。
    それに紙媒体の場合に必要となってくる大規模な印刷設備、大量の用紙、流通システムその他が不要なので、デジタル雑誌にかかるコストは相当安くなっているのではないかと思う。それでも印刷物とデジタル版の競合を避けるためか、同一誌ならば紙・デジタルともに価格が同じであることもちょっと解せない気がする。
    このデジタル雑誌は利用者のスタンスから眺めると不利な部分も少なくないものの、保管スペースが不要という点では大いに魅力的だ。とかく週刊誌類はあっという間に溜まってしまうものだ。何か気になる特集記事や興味深い時事問題を扱った号のみ保存することにしていても、積もり積もればかなり邪魔になってくるし、それらを適当に放っておくと散逸してしまいどこにあるのか探すのが大変!なんてこともある。やや読みづらく取り回しが悪くても、パソコンの中に規則正しく保管できるということは大いに助かる。蛇足ながら通常の雑誌と違い誌面が劣化しないのもいい。
    IT大国インドでも、いつかこうした共通企画(メディアごとの規格でもいいが)のもとで、各メディアからデジタル化された週刊誌や新聞を出してくれないものかと思う。いつでもどこでもインド中の『今読みたい』メディアを自宅にいながらにしてダウンロードして読めるといいし、それらが必要に応じ発行時期で検索してバックナンバーを購入することができるといい。もちろんそれぞれのウェブサイトでもおおよその内容は把握できるとはいえ、『実物』のボリュームはそれらと大違いだ。近未来のインドのメディアのありかたに大きく期待したい。せめてインディア・トゥデイやフロント・ラインといった大手週刊誌からでもこうした流れが始まってくれないものかと願っている。

  • ドリアンを読む

    20061110-durian.jpg
     日印間の往復途中に東南アジアを経由する便は多い。バンコク、クアラルンプル、シンガポールといった街にもちょっと立ち寄るといった人は多いだろう。
     インドでは見かけないのにこれらの土地には豊富にあるもの、またそれがあるゆえに東南アジアらしいムード醸し出しているものがある。それはドリアンだ。もちろんドリアンにはシーズンがあるものの、インドネシアとタイというドリアンの二大産地に挟まれたマレーシアやシンガポールあたりは収穫時期が異なる両国からふんだんに輸入されているため、この『果物の王様』を楽しめる時期もずいぶん長くなるという、非常に恵まれたドリアン天国だ。
     ドリアンの食感は植物の実ではなく人造物だと常々思う。熟練したシェフが腕によりをかけて仕上げた高級デザートとしか思えない。なぜならあまりに深くて複雑な味わいを持つ『生の植物』を他に知らないし、舌触りも香りも限りなく動物性に感じられる。卵黄やバターが入らずしてあれほどふくよかな味になるものなのか、アルコール分の高い料理酒を使わずしてあれほどかぐわしい香りを出せるものなのかといつも不思議に感じている。あれが自然と木に成るものであるということは、現場を目にしても信じられない。
     今年10月、中公新書から『ドリアン ― 果物の王』(塚谷裕一著)という本が出た。自らマンゴー・フリークの植物学者による、まるごと一冊ドリアンの解説本である。ドリアンの香り、選び方、果物としての特殊性、栽培方法といった事柄に始まり、同じく美味な近縁種の数々、ドリアンを原料とした加工食品等、栄養素、脂肪分の考察、香り成分の分析等々をわかりやすく説明するとともに、その他トロピカルフルーツの代表格として知られるバナナ、マンゴー、マスゴスチン等をも含めた、日本における熱帯果実消費の歴史などについても記されている。実は日本における東南アジアからの果実輸入は戦後から始まるものではなく、実は戦前から相当量のフルーツが日本の食卓に押し寄せていたという記述などもとても興味深い。

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