ニッポンで稼ぐインド国営会社

 近年、外資系企業の活躍が目立つ日本の保険業界。アリコ、アフラック、アメリカンホーム、チューリッヒ等々、扱う商品の内容はともかく会社の名前は馴染み深いものとなっている。そんな中、日本で長きにわたって活躍しているインドの保険会社がある。しかもこれが国営企業だといえば驚く人も多いだろう。
 その名もニューインディア保険会社 (The New India Assurance Co. Ltd.)である。1919年にボンベイで設立された同社はターター・グループ経営の保険会社として発展を続けた後、1973年に他社と合併したうえで国営化された。


 日本では1950年に進出してから、なんと55年間にわたって営業しているというから、まさに外資系保険会社の老舗である。日本国内で13拠点を展開している。その割にはトンと名前が知られていない気がするのだが。
 同社ウェブサイト上の「商品案内」に何か珍しい商品があるわけではない。自動車保険、火災保険、傷害保険などといったおなじみのものが並んでいる。本社はインドとはいえ、日本の保険業界で商売しているのだから当然かもしれないが。
 ところでゴルファー保険に「ホールインワン特約」なるものがあることを、ニューインディア保険会社のパンフレットを手にして初めて知った。他の多くの保険会社もこれを扱っているとのことだが、実は日本独自の商品なのだそうだ。
 ティーショット一発でボールが入ってしまうホールインワンというものは、どんなに実力のある人でもよほどの運がなければ、まずありえないことだ。それがゆえにその幸運に恵まれた人は同伴メンバーを招待して祝賀会を開いたり記念品を配ったり、あるいはゴルフ場に植樹をしたりなどといった具合で、数十万円ものお金が飛んでいってしまうというから大変だ。ゴルフのことはよく知らないが、なんと厄介なスポーツだろう。またとないファインプレーもまた一種の「事故」になってしまうなんて。
 インド本国のサイトを覗いてみると、テレビやビデオデッキ等、あるいは携帯電話の破損や盗難など「こんなものにも保険をかけるの?」とたずねたくなるような商品も扱っているのが目に付いた。
だがそんなことよりも大いに気になるのはシエラレオネの支社。民族間の対立、政情不安、悪い治安状況などのため、世界で最も住民の平均寿命が短いといわれる国で営業する理由は何だろう。そしてどんな商品を扱っているのだろうか。
 その他インド国外の拠点について眺めてみれば、イギリス、ニュージーランドなどはもちろん、UAE、オマーン、バーレーン、サウジアラビアといった湾岸産油国でも操業しており、この地域とのつながりの深さを感じる。そしてやはり東南アジア、東アジア方面では、日本、香港、タイ、マレーシア、シンガポールといった要衝をしっかり押さえている。またトリニダード&トバゴ、フィジー、モーリシャス、ケニアといったインド系移民の多い地域での活動も目を引くところだ。
 さて、このニューインディア保険会社の商品、私たちに縁があるのだろうか。誰でも気楽に利用できそうなものとしては「海外旅行保険」があるが、空港でカウンターを構えているわけでもないし、旅行代理店などで加入申込書を見かけたこともない。
 すぐ近くにあるのに姿が見えてこない。それでも同社の海外事業の中で、日本支社の占める業績は16パーセントに及ぶというから、やはりニッポンはドル箱市場らしい。
 

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