しばらく腰を下ろしていると祭りは始まった。場内は相当な賑わいになっている。おそらくラダックの人々よりも観光客のほうが多いのではないだろうか。
本来は冬に行なわれていたこうした祭りが、観光客のシーズンに合わせて夏に開かれるようになったケースが多いとも聞く。なにしろ観光業以外は農業が主体のこの地域である。短い夏の期間、人々は畑仕事で忙しい。そのためか会場に来ているラダックの人々は、子供、女性と年配者が多いように思われた。働き盛りの男性の姿はあまり見かけない。
プラスチックの椅子で貴賓席のようなものがしつらえてあり、ここは旅行代理店か何かを通じての予約席らしい。そこでは巨大なキヤノンのレンズを構える人たちの姿もある。
集まる人々も準備する側も、体力的にも物資的にもこの時期のほうがやりやすいかもしれないが、観光業以外は農業が主体のこの地域で、仕事が最も忙しい時期に開催するというのは、地元の人々とりわけ人口の大半を占める農家にとってはなかなか参加しにくいものがあるのではないかと思う。会場に来ているラダック人たちは、女性や子供たちが多かったように思う。
・・・とはいうものの、祭り自体は訪れてみてとても良かった。年に一度、二日間のみ開催されるタイミングで訪問することにより、普段拝観できる寺院のたたずまい以外の華やかな光景を目の当たりにすることができるのは大変有難い。だが仮面舞踊の踊りは単調で、しばらく眺めていると飽きてしまう。やはり祭礼における舞踊や衣装の意味を知らないといけないと思う。
せっかく来たのでタクトクのゴンパも見学してみた。午後3時に祭りが終わるまではここから出る足がないようだ。沢山の乗用車が駐車してあり、ミニバスの姿もあるのだが、どれも祭りが終了するまでここから出ないので、拝観する時間はたっぷりとある。
〈完〉