ユクソムからタシディンへ ワンデイ・トレック

ユクソムの宿で朝食を済ませてから、山道をタシディンに向けて出発。一日だけの山歩きを楽しむ。日中一杯で歩くことができる距離で行程も簡単なのだが、道は判りにくいところはいくつかあった。集落のないところ、人が通りかからないところで突然分かれ道になっていたり、それまで歩いてきた、あるかないかわからないような道自体が忽然と消えてしまっている箇所があるといった具合。
シンプルで素朴なマニ車
大きながけ崩れの跡。滑落しないよう注意。
行程で特にこれといって大きな見どころはないのだが、やはりそこは尾根から眺めるスィッキムの山間の自然豊かな景色を眺めること、ひなびた集落の様子を目にすること自体が最大の見どころということになる。歩きながら目標となるのは、ルート上にあるお寺であったり村であったりする。お寺の類で最初に訪れたのはドゥーブリー・ゴンパー。
お寺は大改装中
お堂はふつうに見えたのだが・・・。
2011年のスィッキム地震爪痕が今も生々しい
壁画はかなりひどく損傷していた。
復旧が完了するまで相当な時間と費用がかかることだろう。
お寺は外装を大改装中。僧院に誰もいなかったが、中に入ってみると、その理由が判った。2011年9月に起きたスィッキム地震のためである。一階のお堂は比較的状態が良いとはいえ、壁画が剥がれ落ちている部分がある。おそらくこれでもかなり修復を施したのだろう。外壁もきれいになっている。しかし、上階のお堂はひどいものだった。壁の絵が広範囲に渡って崩落している箇所がいくつもあり、仏具や装飾等が無造作にゴロゴロ置かれているなど、修復の最中にあった。
緑したたるスィッキムの山の景色
途中の集落の子供たち
登り坂でひと汗かいたら小休止
本日の行程において、勾配がきつくて大変なのは、その次のホーングリー・ゴンパーまで。あとはところどころ登り坂はあるものの、基本的には下降していくルートである。逆に言えば、ユクソムからタシディンに向かうのではなく、その反対のルートであると、かなり上り基調で体力を消耗するということになる。
正面から見ると何でもないようだが・・・
向かって右側の壁はすっかり崩落していた。
ホーングリー・ゴンパーも地震の影響を受けており僧侶は不在であったが、被害はこちらのほうが明らかに大きかった。正面から見て右側の壁がほぼ完全に崩落してしまっている。おそらくガントク近くのルムテクやペマヤンツェー等の寺院も被害を受けたのではないかと思うのだが、やはり復興のカギとなるのは資金力ということになるのだろう。
グラーム・パンチャーヤトが運営するゲストハウス
ホーングリー・ゴンパーの敷地脇には、地域のグラーム・パンチャーヤトが経営しているというゲストハウスの看板があった。そういうレベルで経営がなされている「公共の宿」が他にあるかどうか知らないが、かなり珍しい例ではないかと思う。
ここからは下り基調である。向こうの山にタシディンの町が見える。直線距離では、渋谷から新宿、あるいは渋谷から池袋程度の距離のはずだが、複雑に絡み合う高度の異なる山々の稜線を越えてのことなので、実際に歩く道のりは見た目よりもはるかに長い。
Hongri Gompaまでの登りがきつかったので、これからは下りと安心していると、今度は分かれ道でどう進めば良いのかわからないところがいくつもあった。またガレキで行き止まりになっているところもある。
ふたりばかりの集落を過ぎて、Nessaの村に到着。ここでようやくジープ道に出る。未舗装だが四輪駆動は通ることができる道なので、一気に文明社会に出た気がする。ここでようやく小さな商店があり、コーラとビスケット購入して遅い昼食とする。午後2時半くらい。
スィッキムでよく家屋等の屋根の上で翻っているのを見かける三色旗、赤、黄色と緑の旗は何なのか尋ねてみると、現在の州与党のSDF(Sikkim Democratic Front)の党旗だということ。ここからもうすぐ近くにタシディンの町が見える。タシディン行きのジープが出るところであったが、せっかくなのでそのまま歩くことにした。
ひとつ集落を過ぎてSinon Gompaに着いた。扉が閉まっているので見学できなかったが、外壁にあちこちヒビが入っており、入口両側の壁画も割れている。外壁については修復したばかりのようで真新しくなっている。
スィノーン・ゴンパー境内にはためくタルチョー
ゴンパの裏に学校があり、その脇からタシディンに下ることになるのだが、近くに見えてもまだまだ遠かった。すでに日没は近いので急がなくてはならない。学校脇で大工仕事をしていた人が、しばらく下るとジープ道に出るというので、その小道を急ぐ。しばらくは階段で、そこからは先のトレッキングルート同様の岩石だらけの細い路となる。
ようやくジープ道に出たものの、今度はどちらに行けばよいのかわからない。道の上に民家があったので、大声で誰かいないか呼んでみると、出てきたのは子供たち。これはアテにできない。ジープ道から直下に下るけもの道がタシディン行きだと言うのだが、すでに太陽は山の向こうに沈んでおり、ジャングルの中で真っ暗になったら大変困る。とりあえず向こうから来たクルマがあったので、タシディンの方角を確認。クルマが来た方角がタシディンであった。
問題はどのくらい遠いかということ。向こうから来た女の子たちに尋ねてみると、12キロなどというとんでもないことを言っている。これは何かの間違いだろう。しかし、他に尋ねる相手もいない。仕方なくその方角に歩くが、ちょうどジープ道を横切る二人連れがいたので聞いてみると、「ここを通ると15分でメインロードに出る」とのことなので、付いていくことにした。彼らは集落の住民で、帰宅するところであった。分かれ道に来て、彼らが集落に行くところで、それとは違う側がメインロードに続く道だと教えられる。
しはらく下るとジープ道に出た。つづら折れになっている道をショートカットしたことになるのだろう。もうかなり暗くなってきた。タシディンまでは、まだ5キロあることが道路脇の表示で判った。タシディンまでのシェアジープがあればぜひ乗りたいが、なくてもここを歩いていけば着くということ、けもの道ではないので懐中電灯を点ければ歩くことができて、やがて到着できるという安心感がある。しばらく進むと見晴らしの良いコーナーがあり、タシディンの夕暮れ風景を一望できる。景色は美しいのだが、早く着きたい。歩きくたびれたし空腹だ。
眼下にはタシディンの町
しばらく進むと後ろから二台の大型トラックが来るのが見えた。止めて尋ねるとタシディンの方向に向かうというので乗せてもらうことにした。
タシディンの町に着き、小さなマーケットにある食堂で、ペリンから同行させてもらっているUさんと夕食。注文して出てきたモモもトゥクパも疲れた身体に染み入るように旨く感じられる。ビールも最高に気持ちよく胃の中に吸い込まれていく。
タシディンでの夕食

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