平凡社新書 インド財閥のすべて

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書店店頭で見かけたこの書籍、新書版の一冊で「インド財閥のすべて」とは、なんと大げさな!と、少々憤慨しつつ手に取ってみた。

ところがどうして、ページを開いて読み進んでいくにつれて、インド経済史に通じた人物が、綿密なリサーチと膨大なデータを背景から丁寧に抽出されたエッセンスであることがわかる。

著者が経営する株式会社ネクストマーケット・リサーチのウェブサイトにアクセスしてみると、インド関係その他で興味深い経済関係の記事がリンクされている。

19世紀に阿片貿易によって大きな富と力を蓄えたインド商人は少なくなかったが、ターターやビルラーといった財閥もこの例外ではない。インドから上海や香港といった中国大陸のビジネスの拠点を経て多国籍化していったユダヤ系資本もまた同様だ。

個人が興したビジネスが財閥として発展していく中で、事業が時流に乗って拡大していく中で、当然のことながら政治との結びつきは重要ではあるものの、やはり時代とともに浮き沈みは激しい。

親類縁者で中核をガッチリと固めた財閥が多いものの、その内部では身内同士での骨肉の争いは日常茶飯であり、しばしば組織の分裂をもたらすこともある。

経済の自由化以降、事業の整理ないしは新規分野への積極的な進出、外資との合従連衡が不可欠となり、流れに乗り遅れた財閥はかつての栄華の見る影もなくなっていたりする。

インドで、こうした財閥について書かれた書籍は少なくないが、日本語で「インドの財閥」を広く俯瞰した本は多くない。また内容が新しい(2011年9月発行)こともあり、現在のインド経済や財閥系企業の歴史について多少なりとも関心のある方には必読の一冊である。

インド財閥のすべて (平凡社新書)

著者:須貝信一

ISBN-10: 4582856047

ISBN-13: 978-4582856040

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