アーグラーで爆発

9月7日に起きたデリー高等裁判所での爆弾テロの記憶も新しい中、昨日9月17日夕方にアーグラーのジャイ・ホスピタルのレセプション付近で爆発が起き、15名が負傷、うち3名が重体と伝えられている。

現在までのところ犯行声明等は出ていない。また爆発物や犯行手段が特定されていないためテロと断定されてはいないものの、状況に鑑みて事故ではなく事件としての捜査が続いている。

Agra blast: City had specific intelligence alert (Rediff.com)

元々、地域の社会構成等から『センシティヴなエリア』でもあり、20日ほど前から治安当局が警戒していたということではあるが、テロに関わる可能性がある小さなグループが点在しており、そこに出入りする者たちが爆発物を製造していた可能性がある・・・等の噂ともつかない情報と合わせて錯綜している。

爆発の規模は小さく、混雑したバーザールで起きたわけでもないため、被害の規模は決して大きなものではなかったが、こうした事件が起きるごとに「また彼らが・・・」「たぶんあの人たちが・・・」といった具合に、決して事件には関係のない特定のコミュニティに対する不信感、猜疑心は深まっていくことは否定できない。

日本の主要メディアでも報じられたアンナー・ハザーレーの汚職運動と合わせて、国民会議派を中心とする連立政権にとって不利な状況が続いている。ローク・サバー選挙で2度の敗北、サング・パリワール内での不協和音、BJP党内でのパワーゲーム等の関係もあり、しばらく雌伏を余儀なくされているサフラン勢力が、力を盛り返しつつある様子もうかがえる。こうした中で、ひとつひとつの出来事の積み重ねが近い将来の政局に与える影響は決して小さくないだろう。

同じ9月17日に、グジャラート州首相のナレーンドラ・モーディーは61歳の誕生日を迎えている。彼の就任前、2001年1月にカッチ地方を襲った大地震からの復興、グジャラートの高い経済成長等、彼の行政手腕は高い評価を得て再選され在任2期目にある。

彼は、極右的なスタンスの政治家の中で最も人気の高い人物のひとりである。彼の州首相就任後間もない2002年にアヨーディヤーからサバルマティ・エクスプレスで帰還途中のヒンドゥー右翼活動家たちが大勢乗り合わせていた車両が州内のゴードラー駅に停止していたとき、地元のガーンチーと呼ばれるコミュニティのムスリムたちが襲撃し、車両に火を放ったことに端を発したグジャラートの大暴動を抑えることができなかったばかりか、これを陰で大いに煽っていたと信じている人々は今も多い。

この暴動の際、地元選出の元国会議員でムスリムのエヘサーン・ジャフリーも命を落としている。グジャラート州の国民会議派組織の重鎮であった人物であるのにもかかわらず、本人の度々の要請にもかかわらず警察が動かず、自宅に押し寄せた暴徒に殺害されることとなった。

余談になるが、ゴードラー駅での列車襲撃事件の際、乗り合わせたほとんどの人たちが亡くなったのは、国鉄の客車車両前後のドア以外からは出入りすることのできない構造が原因であったため、その後はノンACクラス、ACクラスともに車両真ん中の窓からは緊急時に脱出できる造りに改められることとなった。

グジャラートの大暴動から10年近い歳月が経過し、昨日彼の61歳の誕生日に合わせて開かれた政治集会では、インドのニュース番組でも取り上げられていた。同州の複数のムスリムコミュニテイの代表たちも招待され、ステージでナレーンドラ・モーディーの誕生日を祝福するシーンもあり、彼らとの融和を演出する試みがなされていた。 加えて、彼は昨日から『人々の友愛と融和のため』と称して3日間の断食を実行中である。

グジャラート州での行政手腕の実績を背景に、上げ潮の勢いのナレーンドラ・モーディーは、イメージチェンジを図るとともに、国政への進出に意欲を見せており、グジャラート州外でも将来のインド首相として期待する層も多い。このところ相次ぐテロと合わせて、何か不安なものを感じずにはいられない9月17日であった。

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