キングコブラの生態

先日、インドで放送されているナショナル・ジオグラフィック・チャンネルにて、キングコブラを取り上げた番組を見た。

体長最大5.5mにもなる大型種であるとともに、象をも倒すといわれる最強の毒蛇であり、30年も生きる長寿のヘビでもある。南アジア、東南アジアそして中国南部あたりにまで広く棲息しているが、最も棲息数が集中していると言われるのがインド南西部の西ガーツ山脈。風光明媚で降雨や多様な植生に恵まれた土地だが、同時にヘビの仲間たちにとっても好ましい環境であるらしい。

番組の前半部で、そうした地域のある民家にキングコブラが侵入し、一家が大慌てで逃げ出すところからストーリーが展開していく。家の人はキングコブラの保護と生態の研究をしているARRS (アグンベー・レインフォレスト・リサーチ・ステーション)に電話で連絡して、これを捕獲しに来てもらう。

この組織については、この団体のウェブサイトがあるのでご参照願いたい。

ARRS (Agumbe Rainforest Reserch Station)
上記のウェブサイト上で、ARRS NEWSKing Cobra ArticlesKing Cobra diariesといった項目にて、彼らの活動やその日常等を世間に広く発信している。またQuestion & Answersでは、キングコブラ飼育者(主に動物園か?)その他からの質問に対して回答している。

この番組では、ARRSが世界で初めてキングコブラに電波発信器を取り付けて追跡することに成功したことを取り上げている。捕獲したオスとメスにそれぞれ麻酔をかけて電波を発信する装置を埋め込む手術を施した後にこれを再び野山に放す。これらの動きを追うことにより、これまであまりよくわかっていなかったキングコブラの生態を調査しようという試みである。

加えて人里近いところに棲み着いていたコブラを人間の生活圏から離れた場所に放した場合、果たして新しい環境に居つくのか、それとも元々居た場所に戻ってしまうかについて知るという目的もあるとのことだ。つまり捕獲してから、住民に害を及ぼさない場所に移すというリロケーション行為自体が意味のないこととなる可能性もあるらしい。

そう懸念されるにはもっともな理由があるようだ。人口の増加に伴って人々の生活圏が広がるに従い、水田等の耕作地も増える。するとその地域では人々が生産する穀物を求めて集まり繁殖するネズミが増える。ネズミを主な獲物とするラットスネークという無毒のヘビもそのエリアで数を増やすことにつながる。だが体長が最大2.5mにもなるラットスネークの天敵はキングコブラであるとのこと。前者は後者の好物であるのだ。

キングコブラの体内に埋め込んだ発信器は2年間に渡って、その個体がいる場所を発信するとともに体温の情報も伝える機能を持っているが、電波は自体微小なものであるようだ。そのためアンテナを持ったボランティアたちがジャングル内を徒歩で分け入り、ヘビから発信されるシグナルを拾い続ける様子も取り上げられている。ひとたびシグナルが途切れて追跡を継続できなくなってしまうと、その時点でプロジェクトが失敗となってしまうのだ。

映像で眺めても、キングコブラの存在感には圧倒的なものがある。サイズはもとより、鎌首を持ち上げたときのおどろおどろしい姿、他のヘビも捕獲して食べてしまう獰猛さ、加えて水場での泳ぎの巧みさにも驚かされる。水上をしなやかに滑るようにして高速で進んでいく。

この猛毒ヘビの移動範囲は非常に広く、それはまさに懸念されたとおりであったそうだ。とりわけオスのほうは7か月で75キロも移動していたというから驚きだ。つまり捕獲したキングコブラのリロケーションにはあまり意味がなかったということになる。

繁殖期のキングコブラの求愛行為、交尾等も取り上げられている。そしてオスが他のオスに縄張りを奪われて追放されるという出来事が続くのだが、すでに体内に卵を宿しており、新たにやってきたオスにとって思い通りにならないメスがこれに噛まれて死ぬという凄惨な映像もあった。

一般的にコブラは他のヘビや同種のコブラの毒に対する耐性があると考えられているようだが、オスは相手を執拗に噛んで大量の毒を注入(キングコブラは相手に与える毒の量を自身で調節できる)させていた。死んだメスはARRSで解剖され、17個の卵を持っていたことが確認されたという。

他のキングコブラのメスによる巣作りの様子も取り上げられていた。表面がクシャッとした感じの卵が孵化して出てくる小さなヘビたちの姿が映し出される。赤ちゃんということもあってか、生まれたての顔はなかなか可愛かったりする。だがすでにこの時点で非常に強い毒を持っているのだという。

それでも身体が小さいうちは、肉食の鳥類や他のヘビ類の餌食となってしまうか餌をうまく捕食できずに死んでしまうため、無事に成長して大人になることができる個体はごく一部だそうだ。

とても興味深い番組であったのでindo.toで取り上げてみたいと思ったが、その番組をフルに見られる動画がネット上に存在しないと話にならない。そこでYoutubeで探してみると、まさにその動画がアップロードされていた。

Secrets of the king cobra National geographic Channel India Part 1

Secrets of the king cobra National geographic Channel India Part 2

Secrets of the king cobra National geographic Channel India Part 3

Secrets of the king cobra National geographic Channel India Part 4

この番組はすでにインドの他のチャンネルでも放送されているようで、News 9 TVによる同じ映像もあった。こちらは英語版である。

THE KING OF KARNATAKA 1

THE KING OF KARNATAKA 2

THE KING OF KARNATAKA 3

上記のリンク先に限ったことではないが、ウェブ上に出回るこうしたテレビ番組からの動画は往々にして著作権上の問題をはらんでいるものだが、同時にそれを目にする機会を逃してしまった人たちや放送される地域外の人々に貴重な『知る機会』を与えるものである。エンターテインメントを除いたこうした『堅い』内容のプログラムについては、二次利用できるようにより社会に還元される部分も大きいのではないかと思う。

蛇足ながらコブラ関係でこんな動画もあった。

Leopard Cub Vs King Cobra

やんちゃな幼い豹がキングコブラをからかう様子だが、このヘビの怖さを知らないので無邪気なものだが、画面で見ているこちらはハラハラさせられてしまう。

※プリー 4は後日掲載します。

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