インドで再び「改称ラッシュ」か?

サフラン右翼のBJP政権は地名などの改名が大好きだが、中央政権は「ジム・コルベット国立公園」を「ラームガンガー国立公園」にしようとしているそうだ。

また同じくBJP政権下のUP州では、来年の州議会選挙での再選を目指す中で、州内のスルターンプルをクシ・バワンプル、アリーガルをハリガル、マインプリーをマヤンナガル、フィローザーバードをチャンドラナガル、アーグラーをアグラーワン、ムザッファルナガルをラクシュミーナガル、ミヤーンガンジをマーヤーガンジへと、怒涛の改名ラッシュを目論んでいるとされる。

インドにおける地名等の改称が多かったのは独立後しばらくの間であった。これはどの元植民地でも同様だろう。植民地当局により、バローダがワドーダラーに修正されたことに見られるような、本来の呼び名と乖離した「英語名」から「現地名」への回帰、英国支配者たちに因んだストリートの名前がインドの偉人の名前へと付け替えられるなど、主権がイギリスからインドに移行したことを象徴するものであった。

その後もいろいろな州において、地元の民族主義的傾向が強まった時期に、まるで思い出したかのように、たとえばボンベイがムンバイに改称されたり、ケーララのコーチン、アレッピーなどの英語表記が現地名の綴りと発音へと修正されたりはした。これらもまた、タイミングは大きく外れてはいるものの、植民地時代の残滓の解消と位置づけることはできるだろう。

だが近年のBJP政権における一連の改称は、こうしたものとは大きく異なり、背景にあるのはマイノリティーの排除のスタンスの「可視化」である。とりわけターゲットとなるのはムスリムのコミュニティーだ。腐敗や世襲などで国民会議派を攻撃するBJPだが、この部分でも彼ら(融和的な姿勢の国民会議派)の違いを明確に出来る。党中央でも地方政治でも、権力が身内で引き継がれることが多い国民会議派に対して、BJPにおいては「その他後進階級」出身のモーディーが頂点に立つことに見られるように、権力は実力のある者が引き継いでいくという公平感もある。

国民会議派時代には周辺地域と捉えられていた北東辺境地域やラダックなどもその懐に招き入れ、ダリット(かつての不可触階級)なども、その庇護化に招き入れ、広範囲な支持を得たうえでの統合と発展を目指す姿勢があるとはいえ、その連帯・調和志向の裏側には人口の1割を超えるムスリムに対する一貫した不信感と冷淡さがある。また、こうした改称が各地の選挙時期に入る少し前に行われるもいうのも当然、有権者の投票行動を意識してのものだ。

インドにおけるこうした地名改称は、日本において市町村合併で「南アルプス市」となったり、「大字新田」が新興住宅地開発により「希望が丘」となったりするような、無味無臭のものではなく、明らかにアザーンの呼びかけを寺院の鐘の音に、お供えのバラの花弁をマリーゴールドに(インド起源の仏教の供花がキクであるように、ルーツのインドにおけるヒンドゥー寺院での供花も同じくキク科)置き換えたいという意思を現すものだ。

こういうことがあるたびに常々思うのだが、将来いつしかデリーが「インドラプラスタ」に改称されるような気がしてならない。言うまでもなく、神話のマハーバーラタに出てくる都、今のデリーのプラーナーキラーあたりを中心に広がっていたとされる伝説の都の名前だ。

Jim Corbett National Park may be renamed as Ramganga National Park (India Today)

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