ハザーリーバーグ周辺の民俗画の村巡り⑦

午後はムンダーの人たちが暮らすイスコーの村、そしてジョラーカートの村へ。やはり土造りの家は手入れがなかなか大変なようで、しばらく放置されていると、このようになってしまう。背後にはレンガ積みの建物があり、やはりこちらのほうがはるかに耐久性は高そうだ。

民俗画を描く習慣は、農作物の収穫が終わる時期に、土壁の補強、補修を施したうえで、のものであるだけに、レンガ積みの家屋、あるいはそれよりも費用がかかるコンクリートの家が建つようになると居場所を失ってしまう。

イスコー村

今のように現金収入に乏しい生活を続けて土造りの家に暮らすという前提あってこそ続けていくことができる伝統であるゆえ、村人たちの生活向上という、あるべき未来がやってくる前に、なんとかこれを紙などに描くアートとして定着、振興させて現金収入の有効な手段となるところまで持って行く必要がある。時代が移り変わるとともに廃れてしまうことになるからだ。

また、家々に描かれた民俗画というものによる観光の振興というのも、そうたやすいものではないものがある。なぜならば彼らの生活の場に踏み入ることによって鑑賞することが可能になるわけであり、今回訪れた私のように彼らの民俗画を振興させようという活動をしている人に連れてきてもらう分には、彼らにとってもまだ珍しい訪問者は歓迎されるのだ。しかし、そうした立場の人による案内なしに、彼らの村に観光客が次々に訪問するようなことになったり、さらにはプライベートな空間に押し入ったりということは、まったく好ましいものではない。

そうした面からも、この民俗画を「アート」として広く認識させて、これを描いたものが家の壁であれ紙であれキャンバスであれ、正当に評価されるというインフラが必要となってくる。私がここを訪問した後、ヴィラーサト・トラストによる長年の働きかけが功を奏して、2020年5月にハザーリーバーグの民俗画に対してGI (Geographical Indication) Tagが認められたのは、大変喜ばしいことだ。

GI tag for Jharkhand’s Sohrai Khovar painting, Telangana’s Telia Rumal (THE HINDU)

イスコーは小さな村だが、次に訪れたジョラーカートは村落の規模としてはかなり大きく、その画風も他の村とは異なる大変ダイナミックなものであり、見応えがあった。この村の絵はカラフルなものではなく黒の単色なのだが、描いた後で櫛状のもので表面を削ることにより、立体感、躍動感を表現している。

ジョラーカート村

村の家の姿見。家の入り口のところに、割れた鏡が壁にはめ込んであるのをよく目にする。なぜ割れているのか、敢えて割って何人かで分けたのか、それとも割れたので捨てるよりはと、そうしたのかわからないが、確かに外出する際にササッと整えるため、こうしてはめておくのは理にかなっている。

内容は新型コロナ感染症が流行する前のものです。

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