ハザーリーバーグ周辺の民俗画の村巡り⑤

ベールワーラーを後にして、ドウジーナガルの村へ。日本で言えば、神仏混淆のようなものだろうか。彼らの信仰はヒンドゥー教から入ってきたものと、部族伝来のものが入り混じっているそうだ。

先住民族であるアガリヤー族の家屋だが、ヒンドゥーのシヴァ神のシンボルであるトリシュールこと三又の槍が見えるが、何本かの長い棒とともに中庭の細長い基壇に立てられている。右手の部屋の中は、この家のマンディル、つまり祭壇となっているのだが、ヒンドゥーの神像の姿はなく、スパンコール状の飾りが壁に貼り付けてあるだけだった。とりあえず何か祈祷をするための場所であることは明らかだったが、ヒンドゥーの祭壇というわけではないのだ。

トリシュール(三叉のヤリ)とともに何本かの棒が立ててある。
祈祷の場所だがヒンドゥーの祭壇とは異なる。神像もない。

上の画像下部中央につま先がひっかかってしまいそうな崩れた突起みたいなのがある。何かここにしつらえてあったものが壊れて放置されているわけではなく、これはアガリヤー族の人たちの「祭壇」なのだそうだ。そう言われないと、大切なものであるとはまったく気がつかない。

床面の「崩れた突起」みたいなものが「祭壇」とは信じられなかった。

ジャールカンド州のハザーリーバーグ周辺の先住民たちと、チャッティースガル州バスタル地方の先住民とでは民族も文化も異なるのだが、後者でもこのような「ヒンドゥー教徒とはまったく違う」あるいは「ヒンドゥー教みたいに見えるけど実は違う」というものをよく目にした。だが、村を出て街に暮らすようになったりすると、元々持っていたヒンドゥー教との親和性の高さから、「対外的にはヒンドゥーとして生きる」人たちは少なくないのかもしれない。

部族の村とハート(2) デーヴ・グリー (indo.to)

もともとは金属加工(鍛冶屋)を生業にしていたというアガリヤー族だが、なぜか家屋の屋根が大変低いのが特徴的だ。入口しゃがんでくぐっても頭頂部をぶつけるほどだ。家の造りそのものは、クルミー族の家と変わらないのだが。

とにかく天井が低いアガリヤー族の家屋。

さらに面白いのは、彼らの村でもレンガ+コンクリの建物への建替えが増えているが、伝統的な家屋以外では、天井の高さは他の民族(少数民族でないインド人を含む)と同じとなり、なぜか「ものすごく天井が低い建物」にはしないのだ。

村で見かけたEVM(電子投票機)の使い方の説明。こんな小さな村にも投票所が設置される。いろいろ行き届かないことが多いインドだが、投票する権利についてはかなり行き届いていると言える。

ドージーナガル村の近く、畑の中に一軒だけポツンと存在する家がある。ドージーナガル村と同じくアガリヤー族の家屋だが、驚くほど手入れが行き届いていて、絵も素晴らしく充実しているだけでなく、床面の装飾にも凝っていた。

案内してくれているヴィラーサト・トラストのご夫妻が「来月来るお客を泊めないかい?」と話を持ちかけており、バザーリーバーグの民俗画のある家で初の「民泊」のケースとなるかもしれない。彼らによると、周りは畑で他の家屋がないというロケーションも良いのだそうだ。何軒も並んでいると、「なぜ彼の家に泊めて、ウチには来ないのか?」となったり、お客の取り合いとなることが目に見えるからであるとのこと。

それはともかくとしても、周囲が畑の緑に囲まれているのは気持ちが良い。たとえこうした伝統的な土壁の家でなくてレンガ+コンクリの建物であっても、こういう環境下にこじんまりとした簡素かつ清潔な宿があったら、ぜひ利用してみたくなることだろう。

内容は新型コロナ感染症が流行する前のものです。

 

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