コールカーターのG.P.O

1868年に完成した優美な建築物。現在これが立地する場所のすぐ脇が、1765年に起きた悪名高い「ブラックホール事件」の舞台となった場所だそうだ。

The Black Hole of Calcutta (History Today)

それはともかく、ここは旅行者たちにとって、少し前までのネットカフェ、今のスマホのような役割を果たしていたことがある。インターネットの利用が一般化する前の頃の話である。

Mr. ×××
Poste Restante
General Post Office, Calcutta,
India

・・・というような宛名で書かれたハガキ、封書、場合によっては荷物などが、G.P.O. (General Post Office = 中央郵便局)に局留郵便として届き、受取人は本人の証明としてパスボートを持参して、これらを受け取っていた。

一般的には、局留として到着した郵便がG.P.Oに保管されるのは3カ月とされるが、それよりも多少長い期間が経過しても、届いた郵便を見つけることが出来る場合もあった。

こうしたサービスは、コールカーターの郵便局に限ったことではなく、インドの他の大きな街はもちろんのこと、世界中どこに行っても郵便局はこうした便宜を図ってくれていた。現在もそれは変わらないだろう。だいぶ前に、「POSTE RESTANTE 局留郵便(1)」と題して書いたことがある。

さすがに今の時代には、局留で手紙を送ることはないが、荷物の受け取りなどで利用する人はかなりあることと思う。

そんな時代、G.P.O入口の階段では、家族や友人から受け取った手紙の文面を嬉しそうに見つめている旅行者たちの姿があり、持参した絵葉書を手に、その場で返事をしたためていたり、郵便窓口でエアログラムを購入して返信を書き始めたりする者の姿をよく目にした。

今の旅行者たちの場合は、ポケットの中のスマホに、両親からメールや友達のFBでの動向がリアルタイムに入ったり、自らも彼らに頻繁に発信したりしているのだが、当時のこうしたシーンでは、メッセージの往復に最低で数週間、多くは数カ月くらいかかっていた。

そもそも局留で手紙を受け取るには、「次には××に行くから手紙をくれ」というように、今後確実に向かうであろう都市のG.P.O(自分がそこを立ち去った後に手紙が到着しないよう、多めに時間の余裕を見込んで)を伝えておかなくてはならなかったので、こうした便りを受け取る際の感激はひとしおであった。

コールカーターの大時代的な建物の郵便局は、ふとそんなことを想起させてくれる。これが開業した当時の郵便事情はどんな具合であったのだろうと思いを馳せたりもするが、こうした郵便や通信の変遷の歴史をつぶさに見つめてきたのが、この歴史的な郵便局である。

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