大きな国と小さな世界

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 近ごろ日本の経済誌で「インド」を扱う特集記事が増えている。このほど発売された週刊ダイヤモンド別冊は、題して「インド・中国」だ。そしてサブタイトルには「世界経済の主役になる日」とある。
 全世界の人口(65億人目前)のうち、前者は10億人超、後者は13億。つまり両国合わせると、世界の三分の一以上を占めることになるのだから、もう大変な数である。
 著名な財界人や識者などにより、経済、市場という視点によるインドの姿について、やはり圧倒的な存在感を示す中国と比較して論じているのがこの冊子である。

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インドに注目

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 ニューズウィーク日本版では、今週から2週連続でインド特集が組まれる。現在発売中の11月23日号は「第1弾 ビジネス編」で、次週11月30日号は「第2弾 外交パワー編」となり、現在のインドの経済と政治の動向をカバーしようという意欲的なものである。

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カイバル峠の向こうが見えてくる

 インド周辺地域も実に魅力あふれるところが多い。現在の「国」の枠を超えた人々の活動とともに栄えてきた地域だ。重層的に連なる歴史や文化を人々は国境線を越えて共有しているといってよいだろう。
 有史以来、思想や言語、宗教や建築を含めて文化的にもインドとの間に濃いつながりがあったアフガニスタン。南アジアと中東、中央アジアと中国といった異なる文化圏が交差するところでもあり、まさに「文明の十字路」として豊かな伝統を持つ国。決して今のように外界から孤立した地域ではなかった。20数年間もの不幸で長きに渡る混乱を経て、再び「観光地」として世間の注目を取り戻しつつあるかのように見える。
 まさにこの機を待ちかまえていたかのように、今年9月末ついに日本語によるアフガニスタンの旅行案内書が刊行された。同書表紙には「本邦初!(世界でも珍しい)のガイドブックが登場」とある。
 カーブル、バーミヤン、マザリシャリフ、クンドゥズ、ヘラート、カンダハール、ジャララーバードといった世界的によく知られた街やその周辺部などが紹介されている。アフガニスタンの旅行情報そのものが他国に比較して極端に少ないこと、また初版ということもあり厚みはないのだが「ロンリープラネット」や一昔以上前の「地球の歩きかた」のように、一人旅向けの実用的なガイドブックに仕上がっている。

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<経済>のインド

 現在発売中の「週刊ダイヤモンド」9月17日号は、「熱狂のインド」というタイトルでインド特集だ。デリー、ムンバイ、バンガロール、チェンナイ、カルカッタの五都市を取材して、市場および生産基地としてのインドの魅力と問題点を探っている。
 経済誌という性格上、中身はすべて仕事関係なので万人が興味を持てる内容ではないが、今の日本ビジネス界のインドに対する姿勢をサラリとうかがい知る手がかりになるだろう。
 もちろん経営者の視点、要はお金儲けをする人たちのための出版物なので、働く人々の権利である労働運動、政治的自由の証でもある左翼勢力への偏見が強いのはもちろん、これらに対するかなり手厳しい表現も多い。
 IT、自動車、株価、消費活動等々の概況についてわかりやすく書かれているが、その中でちょっと興味を引かれたのは、おなじみの公文式のインド進出についての小さな囲み記事である。従来より海外でも盛んに事業展開しているが、今年4月からインドでも教室を開いており、なかなか好評とのことだ。それにしても数学の本場(?)にして、ホワイトカラーの人たちの平均的な英語力が、日本のそれと比較してはるか雲の上にあるように見えるインドで「算数」と「英語」を教える事業とは、ちょっと恐れ入る。
 今後、インドの人々に対する日本語教育関係のみならず、こうした教育産業も進出していくことになるのだろうか。もちろん子連れで滞在する駐在員が増えるにつれて、日本人子弟を対象にした学習塾等が開講されることも予想されるが、これに対して公文式は主に現地の子供たちにモノを教える教室であるためそのパイは限りなく大きい。10年も経ったころ、インドの都市部で教育熱心な中産階級の子供たちが放課後は公文への教室へ向かうのがありふれた光景になるかどうかは別の話だが。
 インドでの操業の歴史が長い一部の企業を除き、欧米や韓国などにくらべて日本からの進出がいかに低調であるか、どれほど出遅れているのかといった記事もあるが、インドを題材とする書き手についても同じようなことが言えるかと思う。人名等の表記に適切でない箇所が散見されるのはともかく、残念ながらちょっと首をかしげたくなる内容の記事もちょっぴり含まれているのは、インドに明るい経済記者が不足しているからであろう。また従来インドものを手がけてきたライターたちの中には、経済に通じた者が少ない。
 やはり中国大陸にくらべると、日本から見たインド亜大陸までの距離感にはまだまだ相当なものがあるのかもしれない。

インド人は本の虫?

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 インドの人々がこんなによく本を読んでいるなんて・・・
 都会には非常に立派な本屋、素晴らしい書物をズラリとそろえる出版社のショールームがあるいっぽう、まともな読み物がないところでは本当に何もない。ちょっと田舎に行けば印刷物といえば地方語の新聞か簡素な雑誌程度しか見当たらないことは珍しくない。日本のように津々浦々までさまざまな書物が浸透しているのとはずいぶん違い、相当不均衡な様子が見られるのがこの国だ。
 それなのに、インドは世界一の読書大国だというのだ。以下、NOP World Culture Scoreによる調査結果である。このデータについて、調査対象の地域や社会層がひどく偏っているのではないかと疑うのは私だけではないだろう。

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