マオイストたちの裏インド 1

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 先日、ZEE NEWSで、ビハール、ウッタル・プラデーシュ、ウッタラーンチャル、オリッサ、アーンドラ・プラデーシュ、ジャールカンドの六州で活発になりつつあるマオイストたちの活動に関する特集が組まれていた。また西部でもパキスタンと国境を接するラージャスターンでもその気配があり、彼らに対する「外国から」の資金援助の可能性をも示唆していた。

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やがてヒマラヤの南北が結ばれる

 およそ2000キロの国境線を共有するインドと中国。1914年にイギリスが当時のインドとチベットの境界線としてシムラー会議で提示したマクマホン・ラインを「国境線」として継承することを主張する前者と、当時はもちろん中華人民共和国成立後そして現在にいたるまでこれを認めていない後者の間では今なお12万5000平方キロにも及ぶ土地をめぐり係争が続いており、ここでもやはり実効支配線をはさんで両国の軍が相手側の動向を警戒している。 
 このたび中国の温家宝首相の南アジア四カ国(パキスタン、バングラデシュ、スリランカ、インド)歴訪の中でインド訪問時に、1975年のインドによるスィッキム王国の併合を認めないこれまでの中国のスタンスを改めて、「インド共和国のスィッキム州」であることの確認がなされた。長らく膠着状態にあった両国の国境線問題解決への記念すべきステップといえるだろう。
 アジア各地との経済関係強化をこれまで以上に強く打ち出すこのところの中国の姿勢もあり、印中関係が対立から協力へとシフトしつつあることがよくわかる。
 1990年代以降、中国はチベット自治区内を走る道路網の整備を行っており、総距離数は従前のほぼ倍の4万キロまで伸ばしているとされる。チベットにおける輸送インフラへの大規模な投資は、経済的な目的のみらならず安全保障とのかかわりも深いことだろう。 
 だが仮に国境をはさんだインド側でも同様にこの地域の交通網整備に力を入れる動きが始まれば、長期的には広大な中国大陸とインドを中心とした南アジアが経済的に統合へと向かうことさえ充分考えられるらしい。
 そうなれば中国で出版される地図で「錫金王国」がようやく「スィッキム州」に書き換えられるのにとどまらず、今後この地域で相当大きな変化を生む可能性を秘めている。これまで「地の果て」として経済的には利用価値のほとんどなかった両国の辺境地帯が、人口規模では世界最大の二大国間の物流の動脈として脚光を浴びる日が訪れるのかもしれないのだ。
China and India sign border deal (BBC South Asia)

国境線を誰が引く?

 インドでもパキスタンでもそうだが、アメリカなど第三国で出版されたニュース雑誌等に両国北部国境地帯の地図が掲載されている場合、「当国政府の主張する国境線を示すものではない」といった意味の但し書きがスタンプで押されているのを目にすることがある。当局により、係争地帯に関する部分についてはかなり厳しいチェックが行われているようだ。
 係争地帯とは言うまでもなくカシミール地方のことであるが、インドとパキスタン双方が同地方への主権を主張しており、事実上統治の及ぶ限界となっているLOC(Line of Control)は両国の停戦ラインに過ぎない。つまりインドにはインドなりのカシミール地方の形と大きさがあり、パキスタンや中国にもまた彼らなりの同地方の描きかたがあることになる。
 そのためインドで出版された地図中には、中国へと通じるカラコルムハイウェイ沿いのギルギットやフンザといった世界に広く知られるパキスタンの観光名所が非現実的にも「インドの町」となってしまうのと同様、逆にパキスタンで刷られた地図によればスリナガルがパキスタン領というおかしな具合になってしまうのだ。インドのJ&K州には、もうひとつの隣国、中国との間にも係争地帯がある。つまり中印紛争(1959年〜1962年)以降、中国占領下にあるアクサイチンの存在だ。
 中国との間には他にも東部で国境問題を抱えているのだが、このJ&K州にかかわる表記の問題から、デリー高等裁判所は中国製の地球儀の玩具輸入禁止を命じることとなったのだろう。中国で印刷される南アジアの地図では、インドの国土は頭頂部のカシミール地方を削った形で描かれる。ここにはインドともパキスタンとも異なる着色をしたうえで、この地域をほぼ南北に分断するLOCを境に、「インド実効支配地域」「パキスタン実効支配地域」と表記されるのだ。単にオモチャとはいえど、インドの将来を担う子供たちに間違った地図を刷り込むわけにはいかないのだろう。
 しかし思えばデリーが、イスラマーバードが、あるいは北京が何を主張しようと、誰もが必要とするのは生活の安定と平和だ。関係国「中央」の強固な意志のもとで、住民たちの思いを無視した不毛な駆け引きが続くカシミール。辺境に住む人々にとって、「民主主義」とはただ絵に描いた餅に過ぎないのかもしれない。
デリー最高裁 中国製地球儀玩具輸入禁止を命じる(パキスタン・DAWN紙)

ソニア、ソニア

 今年末に封切される『SONIA, SONIA』という映画を楽しみにしている。米国の雑誌フォーブスによれば、「世界で三番目にパワフルな女性」となった国民会議派総裁のソニア・ガーンディー氏。彼女の生き様が映画化されることになった。
Sonia Gandhi
 1968年、ラジヴ・ガーンディーと結婚。外国からインドの家庭に嫁入りするだけで大変だと思うが、よりにもよって結婚相手はインド首相の息子である。夫の弟のサンジャイは飛行機事故で他界し、義母インディラも暗殺。やむなくインディアン・エアラインスのパイロットだった夫が政界入りするとき、それに強く反対したという。「いつかひょっとしたら…」と不吉な将来を予感していたのかもしれない。その懸念はやがて現実のものとなってしまった。
 流転の人生を宿命づけられている人なのだろうか。彼女の運命は常に表舞台で何かを演じるように定められているようでもある。インド政界の重鎮としてしばらく年月を過ごし、息子ラーフル、あるいは娘プリヤンカーに後を任せて引退…という安寧な未来は気の毒ながら想像できない。
 彼女のキャリアは、たとえ自身が望もうと望まざると、いつも第一線を歩むことになっている。それでいて彼女には安泰が訪れることはなく、運命に翻弄され続けている。
 メディアから伝えられる情報以外に彼女の人となりを知る由はないが、いったいどういう人物なのだろうか。いわゆる「女傑」タイプとは違い、いつもどこかに哀しさと、それを精一杯振り払おうとする健気さがあるように感じられる。

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ヴェラッパさん再選

photo by www.globalaging.org
 以前、きまぐれピックアップでもふれた「最高齢のインド現役国会議員」ラーマチャンドラ・ヴェラッパさん。元々は国民会議派だったが、現在ではBJPに所属。総選挙での再選を目指して立候補していた。
 その後どうしたのか気になっていたが、調べてみれば見事当選。国会議員の高齢記録をさらに伸ばすことになった。しかし、厳しい選挙戦で体力を消耗したのか、体調を崩し、現在は病院で療養中とのこと。
 こんな年齢で、議員という責任ある仕事がまっとうできるのか、と心配に思う人も少なくないだろう。彼が続投できるのは選挙区の人びとからの信頼が厚いためだが、彼にかわる魅力ある人材が出てこないという背景もある。
 インディア・トゥデイ誌の懸賞付世論調査の中で、こんな質問を見かけたのを思い出した。
●政治家に65歳定年を設けるべきか?
●国会または州議会の議員に選出されるのを、
 五期以内に制限するべきか?
●大臣(首相を含む)を務めることのできるのを、
 二期までに制限するべきか?
 インドは総人口の54%が25歳以下という若者の国だが、国会議員の平均年齢は55歳以上で、中央政府閣僚ともなると平均61歳を超えるという。
 社会の年齢構成に見合った政治の若返りも必要だが、言うまでもなく高齢者も社会の大切な一部である。一世紀近く生きてなお、社会の第一線で活躍しようというのだから実に頼もしいおじいさんだ。
 政権が中途で解散することがなければ今回の任期は5年。5年後には、ヴェラッパさんは99歳。こんな型破りな人がいるのもまたインドらしい。


●ヴェラッパさんの近況
記事によって年齢が違うのは、「やっぱり」という感じ。
心配無用!ワシは元気だ (The Hindu)
Good day? bad day (BBC)