転落する一家

 BJP(リンク入れる)幹部にして能弁家、今年1月からヴァジペイー、アードヴァニーといった御老公たちが退き、指導部が一気に20歳近く若返りラージナート・スィンを中心とする新体制に移行してからの同党のまさに中枢を担う立場にまでのし上がった故プラモード・マハージャン
 4月下旬に家庭内での問題により自宅を訪れた実弟に射殺されるというショッキングな事件がインド全国を駆け巡った。病院関係者たちによる懸命の救命治療の甲斐なく、5月初めに死去。
 エネルギッシュで頭脳明晰なプラモード・マハージャンこそ、新世代BJPの看板役者でもありカリスマ性の高い指導者のひとりだった。彼にとって、そう遠くない将来にインド首相の座に就くことも視野に入っていただろう。党自体は現在の国政の場で下野しているとはいえ、マハージャン氏自身は『まさに飛ぶ鳥を落とす勢い』というイメージがあった。
 そんな人物が兄弟間のイザコザで命を落としてしまうのだから、運命というものはわからないものである。しかもマハージャン家の悲劇はこれにとどまらず、遺族たちはさらに弾みをつけて転げ落ちていっているように見える。
 プラモード・マハージャンの死により、遺族たちが長く深い悲しみに打ちひしがれていたはずの6月2日の朝、息子のラーフルは飛行機に乗ってコルカタ経由でグワーハティーに向かい、ブラフマプトラ河で父の遺骨を散骨するはずであった。しかし彼はそのころ生死の境をさまよっていた。父の腹心だったヴィベーク・モイトラーとともに薬物乱用による意識不明の重態となり病院に急送されたのだ。ヴィベークは病院収容時に死亡が確認され、ラーフルは回復したものの警察から取り調べを受ける。麻薬使用を明らかにする病院の検査結果を受けて逮捕されることとなった。後日ラーフルは保釈されたものの、薬物について個人使用のみならず取引そのものにもかかわっていたのではないかとの疑いもかかっている。
 父親の死を受けて政界入りすることが予定されていたラーフルだが、おそらくこの一件により政治家としてのキャリアはスタート前から潰えたようだ。コトが明らかになってから、同家と一定の距離を置こうとする党関係者は少なくない反面、ヴァジペイー元首相の発言『若いうちには過ちもある』などに見られるように、党幹部の中にはラーフルに同情的な者も多い。父親は亡くなったとはいえ、社会的に非常に影響力を持つ家庭背景があるだけに今後司法の場でどういう進展があるのか先行きは不透明である。
 ラーフル本人は父親の死、3年ほど前から患っていたうつ病の具合が思わしくなく、投薬量を増やすなど精神的に不安定ではあったようたが、かといって麻薬に溺れる理由にはならない。『若者』とはいえ、青春真っ盛りの高校生の暴走ではない。ラーフルはすでに31歳。分別をわきまえた立派な大人であるはずなのだ。
 家族、特に彼の母親や妹にとってはたまらないだろう。夫の死につづいて今後頼みとすべき息子も瀕死の状況に陥り、回復してからは麻薬使用と取引の疑いで警察の厄介になっているなんて。
 兄弟間の軋轢、腹心と息子の薬物禍が明らかになることにより、故マハージャンの名声も大きく傷ついた。私個人としては、家庭という小さな社会、人としての根幹となるべき場さえもまとめられないようで国政をまとめられるものだろうか?と思うところもあるのだが、世間を見渡してみれば高名な政治家であっても家庭にはいろいろと問題を抱えているという例は少なくないようだ。
 人それぞれいろんな考えはあることと思うが、どんな仕事にかかわる人間であっても、家庭を顧みないようでは人間として失格だ。もちろん個々にかかる社会的な責任から家庭へのしわ寄せが及ぶことは多々あるにしても、家庭こそが人間としての根幹部分であることは忘れてはならないと思う。
 今回の一連の騒動は、私とって縁もゆかりもない一家族の悲劇だが、その凋落ぶりを報道で見聞きするたびにとても悲しくなってくる。
Nerve Timeline for Rahul Mahajan (Nerve News of India)

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