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カテゴリー: politics

  • 勝ち目はあるのか?

    テレビニュースを見ていたら、『ハウラー駅で爆発物』という速報が出ていた。ウェブサイト上でもこの件について以下のような記事が掲載されている。
    Box with ‘explosives’ found in train at Howrah station (NDTV.com)
    なんだか最近ずいぶん多いなと思う。
    そういえば、お隣りパーキスターンの首都のイスラーマーバードでも、ほんの数日前に大きな爆破テロがあった。標的となったマリオットホテルはグローバルに展開するアメリカ資本のホテル。ニュースによると建物は全焼とのことで、ホテルとしての機能は停止している。メディアで報じられていたホテルエントランスのパーキングエリアに大きく空いたクレーター状の穴が爆発のすさまじさを物語っているようだ。
    ホームページ上にも事件により無期限で休業する旨記されている。同サイト上に用意されているPhoto Tourで豪華な施設設備等が紹介されているが、首都一等地の特にセキュリティが行き届いているはずのエリアに立地する国際的なホテルがこのような攻撃に遭うこと、そもそもザルダーリー新大統領がテロ対策を交えた演説を行なった直後にこうした事件が起きることについて、こと治安に関する新体制の能力に大きな疑問を抱かざるをえない。
    こうした中で、インドにとっては腹の底まで信用はできないものの、国軍の支持を背景に内政面ではそれなりの安定をもたらし、近隣国に対しても一定の筋が通った対応をしてきたムシャッラフ大統領の辞任後対する不安は、後任のザルダーリー氏の選出でますます先行き不透明なものになった。このたびのテロ事件は、同国の今後の迷走ぶりを予見するかのようで実に気味が悪い。
    パーキスターンにおける近年の過激派の浸透には、ジア・ウル・ハク大統領時代にさかのぼるこれまで歴代の政権がとってきた政策に要因があるとよく指摘されている。利用するほうも利用される側も互いの利益のために手をたずさえていても、まさに同床異夢で腹の奥で考えていることは違う。風向きが変わればあっという間に縁遠くなってしまうどころか、敵対してくることだってありえる。『傀儡政権』だってスポンサーにいつまでも忠実というわけではないように。また国内において比較的リベラルな傾向のある東部と、より厳格な北西部の文化的差異に基づく地域対立の関係もあるようだ。
    また政府自身についても、ISI(パーキスターン統合情報部)に対する文民統制の欠如が長年指摘されているところであるし、北西辺境州の中のFATA (Federally Administered Tribal Areas)のように中央政府の管理がほとんど及ばないエリアがあるというのも、パーキスターン国内的にはそれなりの歴史的経緯と合理性をもって認識されているとしても、外国から眺めれば明らかに治安対策上問題が大きい。
    従来、インドではテロが起きるたびにパーキスターンの関与を疑い、これを強く非難してきたが、国内しかも首都の中心でこうした事件が起きることを防ぐことができない政権自体にそもそも当事者能力は期待できるのだろうか。
    だが『外国による関与』のみらならず、今年7月にバンガロール、アーメダーバード、そして9月にデリーで起きた連続爆破テロにあたり、犯行の主体がインド国内にある地下組織のインド人メンバー、つまりテロの国産化が進む傾向が大いに懸念されている。
    社会の様々な面でいやがおうにもグローバル化が進む中、過激な思想やテロはいとも簡単に国境を越えたネットワークを形成していき、既存の統治機構はいつも後手に回っているようだ。事件に対する対症療法に終始しているようだ。国境という境目ごとの『タテ割行政的テロ対策』ではもはや封じ込めることはできないのではないだろうか。
    テロ対策、治安対策は厳格になっていくいっぽうだが、その反面誰もが『叩くだけではダメだ』ということはとっくに気がついている。なぜテロが起きるのか?彼らの行動をどうやって防ぐことができるのか? テロリストたちはどうやって生まれてくるのか? こうした人々が出てこないようにするにはどうすればいいのか? 私たち人類に与えられた試練といえるだろう。
    現象面に限って言えば、インドもパーキスターンも国内で頻発するテロに苦慮している。
    『敵の敵は味方』というわけではないが、テロという共通の敵に対して地域で『共闘』していく必要があるようだが、それをできない時点でテロリストたちに大きく先んじられている。進化を続ける21世紀の『都市型ゲリラ』であるテロリズムに対して、果たして政府はついていくことができるのだろうか?

  • マムターの勝利・・・でいいのか?

    Mamta Banerjee
    今年1月にデリーで開催された2008 Auto Expoにて鳴り物入りで登場したターター自動車の10万ルピー車NANO。インド国内のみならず世界戦略をも担う期待の新星だ。同社は今年のダシェラーに入る前あたりで、このモデルの路上でのデビューを狙っていたようだ。だがその発売どころか生産工程についても暗雲がたちこめており、光が差し込んでくる気配さえ感じられない。
    ナーノーの組み立てが行なわれているのは、ターター自動車が西ベンガル州のスィングールに建てた工場。ここでの土地収用をめぐる争議が続いているのはこれまでずっとメディアで報じられていたところだが、このほどターター自動車自身が作業員たちを引き揚げ、この生産拠点を放り出してしまう可能性が大きくなってきた。
    Tata stops work, Bye Bye to West Bengal ? (Hindustan Times)
    Battle Ground Singur (Hindustan Times)

    (さらに…)

  • 頑張れ ブータン議会政治

    初の総選挙を経て、民主化の道を歩み始めたブータンだが、国会へのノートパソコン持込禁止の措置が、ちょっとした議論を呼んでいるらしい。禁止の理由は議事進行中パソコンゲームに興じているセンセイたちがいるからなのだとか。もちろん審議等に必要な書類を山ほど持参する非効率なやりかたでいいのか、無駄な紙の使用を避けようではないかという批判も多いようだ。
    どこかの国でも、大切な議事が進んでいく中で居眠りしている議員サンたちの姿が見られたり、立場を踏まえない不規則発言が物議を醸したりする例も珍しくはないことを忘れてはいけない。しかしながら、ブータン国会でそういう事例があること、またそういう事情が公になることなどから、確実に民主化の路線を進んでいることは感じ取れるのではないだろうか。
    民主化、というプロセスの中で、内政事情はずいぶん異なるとはいえ、南アジアの『民主主義の先輩』諸国の政治状況に比較して、ブータンにおける民主政治が今後どういう展開・発展を見せていき、これが社会のありかたや人々の暮らしにどう反映されていくのかとても興味深いところだ。できることならば、どこか焦点を決めて定点観測していきたいような気がする。
    Bhutan MPs in computer game ban (BBC NEWS South Asia)

  • ただの虫なのか?

    大ボスはいかにしてその座を追われるのだろうか。政界の大物が汚職疑惑の渦の中で四苦八苦するといったことの裏には、単にそういう事実があったようだということはもちろんのことだが、それが明るみに出ることを許してしまう脇の甘さには、そのリーダーが率いる組織ないしは勢力内における自身の求心力の低下という部分は往々にしてあるのだろう。ちょうど猿山のボスが盛りを過ぎると、台頭してきた若手にその座を追われてしまうように。
    立場が上がるほど、手にする権力が大きくなるほどに、仲間や協力者たちの中にも潜在的な『敵』の数が増えてくる。それはライバルたちであり、その支持者たちでもある。国政をあずかる指導者たるもの、また身内におけるさまざまな軋轢や意見をまとめあげるとともに、党内外のさまざまな意見を調整していかなくてはならない。誠実すぎる人はその責に押しつぶされてしまうだろうし、生真面目な人は周囲への気遣いへの苦労の末にぶっ倒れてしまうだろう。ボスたるもの、どっしりと構えて清濁併せ呑む器と熟練した人身掌握術が必要となる。
    洋の東西を問わず、とかく人々の上に立つ人物には、他者と違う厚みや奥行きを感じさせる人が多い。それはその人生来のものなのか、そういう特性を身に着けたからその地位に上り詰めることができたのか、はてまたその地位にあることがそういう雰囲気を生み出しているのだろうか。ボスといっても、考えが様々でカラーも違う寄り合い所帯の中で、主要な派閥の妥協のうえで、なんとか合意できる最大公約数的な人物がポンと出てきて、お飾り的な指導的地位に就くことがある。だが往々にしてこうした『親分』は短命に終わる。もともとそういう器でないからだ。
    ボスの真価は、危機管理能力にあるともいえるかもしれない。この場合、テロや災害に対するものではなく、自身のサバイバル能力のことだ。もちろんその『危機管理』とは、たいてい人々のためになることはない。インドでこうした能力が高い政治家といえば、中央・地方ともにいろいろ目に付くところだが、国外に目を向けてみるとその極端な例は北朝鮮かもしれない。
    最悪、失脚したり逃亡したりしなくてはならないところまでいったとしても、カムバックするためのカードをいくつも持っているのが筋金入りのボスである。昨年後半に相次いで帰国を果たして再び国政に打って出たベーナズィール・ブットーも、ナワーズ・シャリーフも、しばらく本国に身を置いていなかったにもかかわらず、それぞれが率いる政党が勝利を分け合うこととなった。やはりふたりともそういう器だったのだろう。前者は選挙活動の最中にこの世を去り、実務を夫が引き継ぐことにはなってしまったが。
    亜大陸の反対側に目を移してみよう。政治の混乱のため総選挙が延期されたままになっているバングラーデーシュ。元首相シェイク・ハスィーナー、同じく元首相を務めたカレダー・ズィヤーともに重大な汚職疑惑を抱えているところだ。このほど報じられたニュースによれば、前者については嫌疑にかかわる重大な書類が『虫に喰われて』しまっているのだという。その被害の程度がどうなのか、立件自体に支障をきたすほどなのかについては書かれていないが、そもそもこういう大切な書類が虫にやられてしまうほど本当に管理が甘かったのだろうか。『虫』の背後には、怪奇な権謀術策がめぐらされているのでは?と疑いたくなる。
    一見、ちょっと間抜けに見えるこのニュースだが、実はこのボスが自身の華麗な復活劇を演じるために踏み出した最初の一歩という可能性も否定できないだろう。背後で何が蠢いているのはまだよく見えてこないが、ちょっと気に留めておくべきニュースなのかもしれない。本当に『何かある』のかもしれない。ボスたるもの、世渡り術が世間並みであるはずがない。
    Bugs eat Bangladesh court papers (BBC NEWS South Asia)

  • 天まで届け!FREE TIBET !!

    FREE TIBET !!
    『Free Tibet !』
    『中国はチベットから出て行け!』
    『Stop killing in Tibet !』
    『チベットに人権を!』
    シュプレヒコールとともに長い長い行列が進んでいく。GW連休最終日の5月6日、中国の胡錦濤国家主席の来日に合わせて、東京都内で午後2時半からチベット問題に関する抗議デモが実行された。
    今日の朝、突然『こういうのがあるよ』と友人に声をかけられた私は、いったいどういうグループが主催するものかもよくわかなかったが、ふたつ返事で参加することにした。集合場所はJR千駄ヶ谷駅近くにある日本青年館。チベット旗やプラカードなどを手にした大集団に合流。デモ隊はほぼ定刻どおりに出発した。まずは地下鉄外苑前方向に進んでいく。内外のさまざまなメディアの腕章をしたカメラマンたちがシャッターを切りまくっている。
    チベットの旗が集結
    私は隊列の先頭近くにいた。大声を上げて進んでくる行列を目にした人々の表情がなかなか面白い。『なんだ?』ときょとんとした顔あり、『がんばって!』と声援を送ってくれる人あり、物珍しそうに携帯電話を取り出して写真を撮る者あり。私自身は大集団の中のゴマ粒にしか過ぎないのだが、それでもなんだか気持ちいい。大勢の人々に見守られながら、隊列を先導するチベット人女性の野太い声に続いて、『FREE TIBET !』『チベットに自由を!』などといった単調なメッセージを大きく連呼していると、気分が高揚してくるようだ。
    FREE TIBET !

    (さらに…)

  • ひと続きの世の中

    2月にアフガーニスターン・パーキスターン両国国境地帯で失踪した駐カーブルのパーキスターン大使ターリク・アズィーズッディーン氏が、ターレーバーンの人質となっていることが明らかになっている。これまでもNGO、国連、報道その他の関係者が連れ去られ、現政権との交渉のカードとして利用されてきた。ターリク氏はターレーバーンたちが仲間の釈放を求める交渉の材料として誘拐監禁されている。
    パーキスターンの支持あってこそ、かつては国土の大半を手中にしたターレーバーンであったが、2001年9月11日にアメリカで発生した同時多発テロ以降、地域の風向きが大きく変わると自分たちを捨てて去っていったかつての親分に刃を突きつけた形になる。この事件は、現在のアフガーニスターン政府にとっても、かつて傀儡ターレーバーンを育んだパーキスターンにとってもまた大きな難題だ。
    支配者側への揺さぶりとして、本来の対立する相手ではない第三者を誘拐して、自らに有理な状態を引き出そうという手法、そうした勢力からの報酬目当ての『誘拐産業』にもスポットが当たるようになっている昨今だが、どうも世間で起きているこうしたニュースを目にすると気が滅入る。モラル云々以前の問題ではあるが、いやしくも一度は政府を構えた勢力が行なうべきことではありえない。現政権と対峙するにあたり短期的には何がしかのメリットがあるとしても、これまで以上に対外的な信用を失うとともに、国内的にも人心掌握どころではないだろう。
    ただし現在のアフガニスタン政府にしてみても、アメリカによるターレーバーン攻撃という好機に乗じて政権を簒奪した複数の派閥が、西側の支援を得る反ターレーバーン勢力という共通項のみからなる足元の危うい合従連衡のもとで、利益の奪い合いを展開している中、そうそうまっとうなものは見当たらない。勝てば官軍、武力による統治という現状こそがアフガーニスターンの最大の不幸だ。インドと同様に『多様性』に満ちたモザイク国家アフガーニスターンだが、長い内戦を経て、すっかり壊れて散り散りになってしまったカケラを集めて、ふたたびひとつの国にまとめあげるには、どのくらいの時間と犠牲を払わなくてはならないのだろうか。
    歴史的につながりが深い近隣国インドのことを思い合わせれば、『民主主義』や『自主独立』といったものの尊さ、ちゃんと機能する『政治』の大切さをひしひしと感じる。そうしたことについて無頓着でいられる境遇とは、実に幸せなことなのである。たとえば今の日本のような政治への関心の低さは、裏を返せばそれほど深刻な問題が生じていないということでもあり、それ自体は決して悪いことではない。
    ただしこうしたトラブルを抱える地域への関心は常に持ち続けたい。歴史的な境界あるいは為政者の都合による『国』という区分で細分化されている世界だが、どこに行っても人々の暮らす社会があり世間がある。国境のこちらと向こうでいろいろ事情が違ったりもするが、つまるところ同じ人間が暮らすひと続きの『世の中』なのである。でも距離が遠くなるにしたがい、なかなか見えてこなくなるし、縁が薄い地域の話はあまり聞こえてこないこともある。
    ゆえに周囲の無関心の中、非道が大手を振ってまかりとおっていたりするのはとても残念なことだ。状況や内容はまったく異なるが、それはアフガーニスターンしかり、チベットしかりである。
    Taliban holds Pakistan’s ambassador (Al-Arabiya News Channel)

  • ネパール 革命成就・・・なのか?

    20080414-MAOIST.png
    ネパールの総選挙結果が、事前には思いもよらなかった方向に展開している。
    紆余曲折あったが、なんとか今回の選挙に参加することになったネパール共産党マオイスト派である。長年武装闘争を続け、ネパール政界を左右するひとつの重要なカギを握る勢力である。国民のある部分から一定の支持を得ることができるにしても、あくまでも主流派に対する抵抗勢力として、どこまで票を伸ばすことができるかが云々されていた。さらにはその結果が、彼らにとって満足いくものでなければ、選挙の公正さに対する疑いを理由に、再び武闘路線に戻るのではないかという懸念もあった。そもそも今回の選挙の焦点のひとつには、国内の不安定要因の最たるもののひとつであったマオイスト勢力をいかに平和的かつ継続的に政治参加させるかという問題があった。
    ところがどうしたことだろう。現時点ですべての結果が出揃ったわけではないが、すでにマオイストが第一党となることは確実な情勢で、開票後かなり早い段階において勝利宣言も出ている。これはまたマオイストたちによる『革命の成就』と表現することもできるだろうか?
    政府と対立して武装闘争を展開してきた過激派が、総選挙で過半数にわずか及ばないまでも、堂々たる第一党に選ばれてことを受け、大政党にしてこの国最古の政党であるネパール会議派がマオイストに連立を打診している。力による弾圧という路線から対話と政治参加を促して、武装したマイノリティ集団のマオイストたちを一政党として自らのシステムに取り込もうとしたのはマジョリティ側であったが、総選挙の予想外の結果により、まさに主客転倒となった。
    数の論理で堂々と不条理がまかりとおることもある民主主義体制の中、狭い国土ながらもインドと同じく多様性に富む国土の広範な民意のうち、これまで既存政党が吸収できなかった部分を代表し、道理にかなったやりかたで国政に反映させる、必要とあればマジョリティの独走に歯止めをかけるチェック機能としての存在は、諸手を挙げて歓迎されるべきものである。そもそもマオイストたちの中に占めるマイノリティ民族や女性の占める割合は高く、これまであまり省みられることのなかった層の人々の意思を代表しているともいえる。
    マオイストたちにしてみれば、国民の総意を結集した選挙で第一党となることで、『政党』として自らの主義主張の正当性についてのお墨付きを得たことになり、これまでの行いは『造反有理』であり、これが社会が払ってきた犠牲についても『革命無罪』ということになってしまうのだろう。政界のどんでん返して、ネパールは今まさに本格的な変革の時期を迎えたことになる。しかし注意しなくてはならないのは、予想外に大量の票がなぜマオイストに流れたかということだ。票のかなりの部分は既存政党への不信任票といえるだろう。しかしだからといって、そのすべてがマオイストたちの方針に諸手を挙げて賛成というわけではないのではないかということは容易に想像できる。選挙前にはマオイスト支持とは予想されなかったカテゴリーの人々のうち、どういう立場の人たちが彼らに票を投じたのか、詳細な分析が出てくるのを待ちたい。
    ところで、マオイストたちに政権担当能力はあるのだろうか。彼ら自身、とりあえずは政局に強い影響力を持つ野党陣営の一角を占めて、議会政治の世界で着実に地歩を固めることができれば良かったのではないかと思う。いきなり第一党に躍り出てしまい、最も当惑しているのは他でもないマオイストの幹部たちなのではないかという気がしないでもない。時期尚早ではないだろうか。
    これまで農村部や山間部で人々をオルグあるいは強制的に徴用したり、政府に対する武装闘争を展開したりしてきたマオイストたちが、こんどは公平かつ責任ある統治者として、『反動的』あるいは『反革命的』他陣営をも含めた様々な意見をまとめあげる有能な調整者として、これまでとまったく違う役割を担うことになる。こうした経験のない集団が、あまりに過度な期待を背負っていったい何ができるのかは未知数だが、まずはお手並み拝見といったところか。先に勝利宣言を発したプラチャンダ議長は、彼らが第一党となることに対する周辺国ならびに諸外国の懸念を払拭するため、『我々は民主主義を尊重し、諸外国とりわけインドと中国との友好関係を維持していく』との声明を出したことからもうかがえるように、今のところ自分たちの立場についての自覚はあるように見えるのだが。
    今回の選挙が、懸念されていたほどの大過なくほぼ平和裏に投票を終了し、政権交代へのプロセスを円滑に進めているように見えることについて、現象的には国民統合の象徴とも民主主義の勝利ともいえるかもしれない。だがその実新たな混乱のはじまりがやってきたのではないかと懸念するのは私だけではないだろう。今度はマオイストを軸とする新たな合従連衡が展開されていくことになると思う。ネパールの『革命』と『闘争』はこれからもまだまだ続く。マオイストが主導することになりそうな新政府、そして新たな憲法起草による新しい国づくりの中で、あまりに性急な変化を志向すれば、かならずや大きな揺り戻しを呼ぶことになるだろう。
    目下、革命いまだ成就せず・・・ということになるが、同様の信条のもとに武装闘争を続けるマオイスト勢力を抱えるインドにとっても、ネパールにおけるマオイストをめぐる様々な動きや事態の展開には、今後いろいろ参考になるものが出てくるのではないかという気もする。今後の進展に注目していきたい。
    CA Election 2064 Results (kantipuronline.com)
    ELECTION COMISSION, NEPAL
    マオイスト共産党の選挙シンボル

  • 参加することに『異議』がある?

    北京オリンピック
    今年8月8日から同24日にかけて開催される北京オリンピックの聖火リレーが、各地でさまざまな抗議活動やトラブルに見舞われている。本日4月9日にはアメリカのサンフランシスコに上陸、続いてタンザニア、オマーン、パーキスターンときて、4月17日にはインドのニューデリーを聖火が走る予定だ。国内に膨大なチベット難民人口を抱えるインドにあって、近年改善しているとはいえまだ根強い中国への不信感もあり、このたびの聖火リレーの賛否についていろいろ意見の分かれるところではないだろうか。デリーでの走者のひとりであったサッカー代表選手バイチュン・ブーティヤーはこの役目の辞退をすでに表明している。
    オリンピックは、いうまでもなく国際オリンピック委員会に加盟する国々のうち、開催地として挙手したもののなかから選ばれたホスト国で開かれる、いわば持ち回り開催であり、中国独自のスポーツ大会というわけではない。また国際オリンピック委員会という組織自体が公的機関ではなく、国際的なネットワークを持つ民間組織である。各国の『民』が力を合わせて開催する祭典であることからも、様々な雑音が聞こえてきたとしても、大会そのものに政治の影を投げかけることなく、立場の違いを超えて各国が協調・協力したり、一般市民もまた五輪開催の趣旨を理解したうえで、そうした風潮に流されないというのが本来あるべき姿だと思う。
    しかしながらオリンピックが、それを開催したり選手団を送り出す国家により、しばしば国威発揚の道具として利用されることは事実であるし、そうした政府に対する圧力をかけたり、自らの主張を外の世界にアピールしようと意図を持つ団体やグループにとっては、またとない機会であることも間違いない。
    4月17日のデリーの聖火リレー自体は、厳重な警備のために一見問題なく行なうことができたように見えるのかもしれないが、その前後の時期を含めてデリー周辺その他チベット系の人々が多く住む街などでもさまざまな抗議活動が展開されるのかもしれない。五輪に政治を持ち込むのはどうか?という疑問は残るものの、ここ半世紀ほどの長きにわたりチベットが置かれている状況を思えば、今回の五輪に『参加することに異議がある!』といわんばかりの激しい抗議活動について、個人的に共感できる部分も少なくない。
    インドの後、タイ、マレーシア、インドネシア、オーストラリアと続いた後に、4月26日には日本の長野で聖火リレーが行なわれる。先述のとおり、個人的には五輪の政治化は同意しかねるのだが、やはりチベットをめぐる諸問題に思いをめぐらせれば、もし『長野ではこれといった騒ぎもなく、極めてスムースに聖火が通過しました』と、日本の市民が何ら特別な意思表示もしないまま終わってしまってはいけないような気もするのが正直なところだ。
    私自身は今年オリンピックが開かれること、各国の様々な選手の活躍を目にすることを楽しみにしている。だがその開催地が北京であるがゆえに、いろいろと胸に浮かぶことは多く、その意味では他の多くの人々と感情を共有している部分があるのではないかと思う。世界中各地で発した人々の訴え、いやそれ以上にこれまでずっと困難な立場に置かれてきたチベットの人々の主張について、中国当局がしかるべき配慮や対応をすることを切に願うところである。

  • ブータン総選挙

    本日3月24日、ブータンで初の総選挙が実施される。世界史の中でも珍しい絶対君主自身の提唱による『上からの民主化』で、同国が立憲君主制に移行するプロセスの中での仕上げ段階となり、全国の47の選挙区からそれぞれ1人ずつの議員を選出する。
    ヒマラヤの南斜面に位置する山岳地であるがゆえにアクセスの良くない地域が多いが、インド空軍が選挙に関するガイドラインの空輸に協力するなど、テクニカルな部分における隣の大国インドによる支援は少なくないものと思われる。全国に865の投票所が設けられるとのことだが、遠隔地の有権者対象に全国で180台の電子投票器が利用されるということだが、おそらくこれらもインドの力添えあってのことではないだろうか。
    選挙は極めて平和裏に行なわれる見込みとのことで、思想的に右寄りの人民民主党、左寄りのブータン調和党のふたつの政党が覇を競うことになる。だが『政党』といってみたところで、2007年4月に入るまではそうした団体の存在自体が禁じられていたため、同年7月に政党登録された両党は、ブータン共産党、ブータン人民党といった非合法団体を除き、ブータンで『現存する最古の政党』ということになる。
    両者ともにウェブサイト上で候補者たちの略歴などを読むことができるが、前者については各候補者のメールアドレスも掲載されているのは面白い。こういうところに掲示していると、すぐにメールボックスがジャンクメールで一杯になってしまうのではないかと思うが、それでも有権者たちの声に耳を傾けようという姿勢が感じられてなかなか好印象だ。
    地域、民族そして宗教を利用したり、これらを標榜したりするキャンペーンは禁止されているとのことで、南アジアにあって近隣国で行なわれている選挙とはずいぶん趣が異なるものとなるようだ。
    さて、この選挙によってどんな政府が組織され、どういう国づくりを行なっていくのだろうか。新政府が、この国独自のGNH (Gross National Happiness)をさらに成長させていくことを願うばかりだが、少なくとも民意(・・・の中に往々にして経済界の意思をも含む)を反映する政治システムでの国家運営が進められることになる。すると卑近な事柄かもしれないが、この国の観光政策にも大きな変化が生じる予感がする。おそらく段階的に、しかし着実により多くの観光客を受け入れるようになることだろう。
    日本で報道される機会がごく限られているブータンだが、今まさにこれまでなかった大きな変革の時代を迎えていることは間違いないようだ。まさにこの総選挙により、ブータンの新時代の舵取り役を誰に任せるのかという一大事が決定する。新政府には、ぜひともいい国づくりに邁進してもらいたい。個人的には、近い将来この国をごくごく簡単な手続きで訪れることができるようになるといいなあ、と思うのであるが。
    97,921 cast vote in first two hours of polling (Kuensel)

  • ググッと眺める奇妙な景色?

    アクサイチン
    2年近く前のことだっただろうか。Google Earthで『発見された』中国内の軍事施設のことが話題になっていたことがある。インド・中国の国境地帯、アクサイチンを模した巨大なジオラマが見られるとのことであった。
    そんなことをふと思い出し、自宅パソコンで立ち上げたGoogle Earthにその位置(北緯38°15’56.35″の東経105°57’6.12″)を入力して出てきた奇妙な風景。
    アクサイチンの模型
    これをGoogleマップで表示させてみよう。
    湖が点在する風景からして、いかにもアクサイチン周辺の模型である。ちなみにこちらがGoogle Earthで表示した本物のアクサイチン周辺の画像だ。
    本物のアクサイチン
    これまたGoogle マップでも位置を示しておこう。
    チベットから1962年の中印紛争以来、ここを占領した中国が実効支配している。チベットと新疆を結ぶ重要なルートであったことから戦略的価値の高い地域である。またその交易路の存在ゆえのことだろう、ラダック地方に暮すかなり高齢の人たちの間には、アクサイチンがイギリスの影響下にあった時代に、現在では新疆ウイグル自治区となっている地域のカシュガルその他の町を仕事で訪れたことがある、そこにしばらく暮らしたことがあるという人はけっこういるようだ。
    私たちはアクサイチンをこうした衛星写真でしか眺めることができないが、変化に富んだ地形、環境が厳しく植生の少ない高地ながらも川の流れや点在する湖などもあることから、まさに息を呑むような風景があちこちに見られることだろう。この有様を再現した模型が『本物』から2600キロ以上離れ、中国の内蒙古自治区、甘粛省そして陝西省に挟まれた寧夏回族自治区に存在するのである。機密に属するものであるため、実物同様こちらも一般人が訪れることはできない。

  • ジャーゴー・パーティー 君たちは何者か?

    jago party
    今年1月28日に政党登録された『目覚めよ!』なんていう団体がある。日本のメディアに取り上げられることがあれば『覚醒党』なんていう名前が付けられるのだろう。彼らの雑誌広告には、以下のような主張が示されている。
    ・留保制度反対
    ・汚職者と性犯罪者に絞首刑を
    ・司法判断迅速化 判決を3か月で
    ・英語教育の普及による完全雇用
    ・民営化を推進し、すべての街や村に電気を
    この『ジャーゴー・パーティー』のウェブサイトにもう少し具体的に書かれているのだが、まずはトップページアクセスしてみよう。最初に表示される大きな画像に絞首刑の縄が揺れ、『汚職者と性犯罪者に死を!』なんていう文字がジワジワと出現してビックリする。やがて画像が入れ替わり『Reservationなんて列車だけで充分だ!』という文字が出てくる。
    パッと見た印象では、過激な行動をする団体かと思えるかもしれないが、よく読んでみると彼らが語りかけようとしている対象は、これまでどちらかといえば政治というものに冷淡であったり、無関心であったりした層であるように思われる。だからこそ『あきらめないで、みんなで声を上げよう』『投票に行こう』『輪を広げよう』などといった簡単でわかりやすいメッセージが記されているのだろう。そもそも先に挙げた彼らの主張自体が何ら目新しいものではなく、すでにいろいろなところからこうした意見は出されている。
    ただし彼らの注目すべき点は、人々の気楽な『政治参加』を促すための積極的な試みがウェブ上でなされている部分だろう。犯罪・汚職・不正などについての通報窓口が設けられており、ここに記録されている事案を閲覧できるようにもなっているのだ。
    地域やコミュニティなどといった縦横のつながりや、職場あるいは労働組合などとのつながりとも関係なく、まずは個々にネット上でつながりを持ったり協力したりできるようになっていることから、都市部でミドルクラス、郊外の新興住宅地の住民、転勤族といった人々の支持はもちろんのこと、いわゆる浮動票を集める勢力となることを狙っているものと思われる。
    権利意識の高揚、社会正義、行政への監視といったごくあたりまえのことをわかりやすく、そして政治参加への垣根を低くして人々の自発的な参加を促そうという、ごくまっとうな市民政党としての道を歩もうとしているように見えてくるのだが、果たして彼らは何者なのだろうか?その背景がまだよく見えてこない。ひとつにはその指導者の顔が出ていないという部分も大きい。同サイトに登録すれば、毎週ニュースレターが送られてくるとのことなので、とりあえずレジスターしておいた。
    社会のありかた、人々の暮らしぶりや考え方が急速に変貌しつつあるインドの『民意』について、既存の大政党では吸収しきれない領域が増えてきたからこそ、単一の政党がマジョリティを占めることはもはやなく、幾多の政党の寄り合い所帯の連立での政権運営がなされるようになってきたのだといえる。そうした中で、こうした形で広く市民の参加を募る政治活動は、うまくいけば既存政党が無視できない一定の勢力を築く可能性もあるかもしれない。彼らによれば、今後カルナータカのヴィダーン・サバー、そして中央のローク・サバーの選挙に打って出ることが記されている。
    これら直近の選挙ですぐにどうのということはないとは思うし、そもそもこのジャーゴー・パーティという試み自体がうまくいくのかどうかは不明だ。しかし既存の政党とは違う市民運動型の政党が他にも次々出てきてそれなりの勢力を確保するようになれば、旧来の政治団体の活動のありかたにも影響を及ぼすことになってくるのではないだろうか。
    それにしても、ジャーゴー・パーティー、君たちは何者だ?

  • 亡命者と母国

    チベット亡命政府こと中央チベット行政府(Central Tibetan Administration 略称CTA)は、インドのヒマーチャル・プラデーシュ州のダラムサラを本拠地とする。CTAのウェブサイトは、チベット語、英語のほかに中国語、スペイン語、ドイツ語、アラビア語、ロシア語そして日本語でも読むことができる。
    国家元首であるダライラマ14世のもとに、立法機関としての亡命チベット代表者議会、行政府としての内閣、司法機関として最高司法委員会がある。また文部省、財務省、内務省、厚生省、情報・国際関係省、宗教・文化省、公安省といった『省庁』それぞれに担当大臣がいる。またチベットにとって重要ないくつかの国々には、同亡命政府の大使館に相当する海外出先機関として代表部事務所が置かれている。日本もそのなかのひとつで、東京の新宿にダライラマ法王日本代表部事務所がある。

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