ブータン総選挙

本日3月24日、ブータンで初の総選挙が実施される。世界史の中でも珍しい絶対君主自身の提唱による『上からの民主化』で、同国が立憲君主制に移行するプロセスの中での仕上げ段階となり、全国の47の選挙区からそれぞれ1人ずつの議員を選出する。
ヒマラヤの南斜面に位置する山岳地であるがゆえにアクセスの良くない地域が多いが、インド空軍が選挙に関するガイドラインの空輸に協力するなど、テクニカルな部分における隣の大国インドによる支援は少なくないものと思われる。全国に865の投票所が設けられるとのことだが、遠隔地の有権者対象に全国で180台の電子投票器が利用されるということだが、おそらくこれらもインドの力添えあってのことではないだろうか。
選挙は極めて平和裏に行なわれる見込みとのことで、思想的に右寄りの人民民主党、左寄りのブータン調和党のふたつの政党が覇を競うことになる。だが『政党』といってみたところで、2007年4月に入るまではそうした団体の存在自体が禁じられていたため、同年7月に政党登録された両党は、ブータン共産党、ブータン人民党といった非合法団体を除き、ブータンで『現存する最古の政党』ということになる。
両者ともにウェブサイト上で候補者たちの略歴などを読むことができるが、前者については各候補者のメールアドレスも掲載されているのは面白い。こういうところに掲示していると、すぐにメールボックスがジャンクメールで一杯になってしまうのではないかと思うが、それでも有権者たちの声に耳を傾けようという姿勢が感じられてなかなか好印象だ。
地域、民族そして宗教を利用したり、これらを標榜したりするキャンペーンは禁止されているとのことで、南アジアにあって近隣国で行なわれている選挙とはずいぶん趣が異なるものとなるようだ。
さて、この選挙によってどんな政府が組織され、どういう国づくりを行なっていくのだろうか。新政府が、この国独自のGNH (Gross National Happiness)をさらに成長させていくことを願うばかりだが、少なくとも民意(・・・の中に往々にして経済界の意思をも含む)を反映する政治システムでの国家運営が進められることになる。すると卑近な事柄かもしれないが、この国の観光政策にも大きな変化が生じる予感がする。おそらく段階的に、しかし着実により多くの観光客を受け入れるようになることだろう。
日本で報道される機会がごく限られているブータンだが、今まさにこれまでなかった大きな変革の時代を迎えていることは間違いないようだ。まさにこの総選挙により、ブータンの新時代の舵取り役を誰に任せるのかという一大事が決定する。新政府には、ぜひともいい国づくりに邁進してもらいたい。個人的には、近い将来この国をごくごく簡単な手続きで訪れることができるようになるといいなあ、と思うのであるが。
97,921 cast vote in first two hours of polling (Kuensel)

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