ブンガワン・ソロは永遠に

インド関係ではなく、突如『インドネシア』ネタで恐縮である。
16世紀に交易のため渡ってきたポルトガル人たちとの交流にオリジンを持つといわれるインドネシアの大衆音楽クロンチョン。西洋起源の弦楽器(ギター、チェロ、ヴァイオリン等)と管楽器(フルート、クラリネット等)を使うが、言葉がインドネシア語であるのはもちろん、インドネシア的な旋律で演奏するクレオールな音楽だ。
そのクロンチョンの古典的な名曲で、同国の国民歌とも言うべき『ブンガワン・ソロ』の作者グサン・マルトハルトノが今月20日に亡くなった。享年92歳。
1940年に作られたこの曲は、当時ラジオが普及し始めたインドネシアで大ヒットした。旧日本軍の慰問関係で同国内各地で演奏していたため、第二次大戦で同国へ出征した日本軍兵士に間でも広く知られ、人気のある曲であったようだが、この国を植民地としたオランダ人在住者たちもそのメロディーに惚れ込んだという。
やがてその人気は国境を越えて日本にも及ぶ。1948年には松田トシが和訳歌詞でレコードを出している。もっとも当時はインターネットのような情報共有手段もなく作者が誰なのかは知られておらず、グサン・マルトハルトノが作った曲であることが『発見』されたのはかなり後になってのことである。

現在のインドネシアでも、クロンチョン音楽界を代表する女性歌手スンダリー・スコチョはもちろんのこと、今でも様々な歌手がカヴァーしている名曲だ。今後も長く歌い継がれていくことだろう。

ブンガワン・ソロの作者が死去 グサン・マルトハルトノ氏 (47 NEWS)
※『彼方のインド3』は後日掲載します。

Thriller

先月25日にマイケル・ジャクソンが亡くなってから、Youtubeで幾度となく彼のミュージック・クリップを眺めていた。近年はすっかり忘れてしまっていたが、そういえば昔良く聴いてたっけ・・・と。
絶頂期のあまりの人気ぶりに、しばしば物真似を披露する芸人などもあったが、その中でもBeat Itのパロディで、アル・ヤンコヴィックによるパロディ『Eat It』などを記憶している人も少なくないはず。
『Thriller』を検索していると、パーティーの余興だったり、ホームビデオで撮影したものであったりと様々なバージョン(?)のスリラーや『スリラーの踊り方』といったビデオがアップロードされているのを目にした。それほど彼の曲やパフォーマンスが人々に愛されていたことの証だろう。
しかし中でも圧巻だったのがこれである。

映画のタイトルはわからないが、コスチュームやダンスはもちろんのこと、背後に流れる音楽といい、映像のつくりといい、スリラーが一世を風靡したころにリリースされた作品中のひとコマらしい。なんだか凄い迫力でビックリ!である。

チャダって誰だ?

チャダの熱唱
ナマステ・インディア2008の9月27日(土)のプログラムで、『インド人演歌歌手チャダ』なる人物がステージに登場。立派な体格のスィク教徒で、日本語も上手いが歌唱力の素晴らしさに驚いた。
雄々しい風貌、黒々としたヒゲ、ターバン、威風堂々たる体躯と似つかわしくない高音域の豊かな発声で演歌という一見ミスマッチながらも、妙に板についている。またステージで歌うこと、しゃべることに慣れている具合が何とも不思議だ。
最初は『え?何だって?』とキョトンとしていた観衆も、チャダが歌い始めるとそのプロフェッショナルな歌唱力に感じ入るとともに、彼の巧みなトークにスルスルと引きずり込まれていたようだ。その模様はYouTubeに投稿された動画で観ることができる。
将来の夢は『サルダールジーになること』だという小学一年生の私の息子は『おぉ!カッコいい!』と大喜びで、ステージが終わった後にフラフラと会場脇を散策していたチャダを見つけて握手してもらうとともに、一緒に記念撮影もしてもらった。
ところでこのチャダという人物、私はてっきり日系人でもある黒人演歌歌手ジェロの人気から『二匹目のドジョウ』を狙って出てきた新手の歌い手とばかり思っていたのだが、実は1975年に大ヒットを飛ばしており、歌手引退後はビジネスの世界に転進、貿易会社を営むようになったのだという。
そして今回はなんと30年振りの芸能界復帰ということになるらしい。先述のYouTube投稿動画を再生してみると、そのことについて司会者が触れていたが、私は息子とその場に居合わせていたにもかかわらず聞き漏らしていた。
それでは彼は今幾つなのかといえば、1952年生まれで今年56歳になるとのことだが、あと4年で還暦とは思えない若々しい風貌と雰囲気だ。息子にとってチャダはすっかり『ボクのヒーロー』になっており、11月19日に発売されるチャダの『踊るマハチャダ/面影の女』を買うことになりそうだ。
『チャダ』公式ウェブサイト
チャダ:インド人演歌歌手 30年ぶり復帰
元祖外人演歌歌手チャダ、お披露目ライヴ・レポ
Let’s “一発屋”アゲイン

ポケットの中のインド

iPod
2001年に最初のモデルが発売されたアップル社のiPod。以前は携帯音楽プレーヤーといえば、ソニーのウォークマン、CDウォークマン、MDウォークマンや他社によるこれらの競合商品が店頭に並んでいたものだが、携帯性、機能性、収録できる曲数、拡張性どれも秀逸で、圧倒的な支持を得てこの分野第一級の定番商品となった。
これまでiPodを手にしたことさえなかった私だが、遅ればせながら私も購入してみたのは、第6世代のiPod Classicである。最近のモデルは動画機能が強化されていることが購入の動機。出先でヒマができたときにインド映画を観るのにどうだろうかと思ったのだ。

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懐かしのメロディーでホロリ

まだ朝暗いうちから起き出してアガルタラのバススタンドへと向う。ここからニール・マハル行きのバスに乗るのだ。土地の人々は『ニール・モホル』と呼んでいるようだ。ベンガル風に読むとそういうことになるのだろう。ひた走るバスの中では昔のヒットソング(80年代末から90年代初めにかけて)が次から次へとかかっていた。
QAYAMAT SE QAYAMAT TAK』から始まり、『SAAJAN』そして『PHOOL AUR KANTE』等々の懐かしい歌が続くと、もうメチャメチャに嬉しくなった。
この頃のシネマソングは私の一方的な思い込みかもしれないが、メロディーも歌詞もロマンチックかつ叙情的、純粋かつ哀しみに満ちていて大好きなのだ。もちろんこれらが流行っていた時期の私自身の思い出が沢山詰まっていることもあって胸がキュンと鳴る。
qayamat se qayamat tak saajan phool aur kaante
Aai Mere Humsafar』でジンときて、『Bahut Pyar Karte Hain
や『Jeeyen to Jeeyen Kaise』でいつしか心の中にセピア色の風景が広がってくる。
Mera Dil Bhi Kitna Paagal Hai』でシミジミした気分に。そして『Tu Shayar Hai』でしばし追憶の世界にどっぷり浸る。
そして『Maine Pyar Tum Hi Se Kiya Hai』で再びハートがググッと熱くなり、若き日のサルマーン・カーンとバーギャーシュリー主演の『MAINE PYAR KIYA』の『Dil Diwaanaa』がかかると、ああもうダメだ。メランコリックに暴走する心がもはや自分自身ではどうにもならず、懐かしい想い出や普段すっかり忘れていた記憶やらが次々に頭に浮かんできて、年甲斐もなくジワ〜ッと涙してしまう。あぁ、歌っていいなあ・・・。乗り合いバスの中、大音響でいろんな曲が流れるサービス(?)っていいなあ。ついでにカラオケでも付いていればいいなぁ!などと、このときばかりは思った。
ああ車内で思い切り歌いたい。もちろん他のお客たちに迷惑でなければ・・・であるが。
maine pyar kiya