マオイスト 鉄道を標的に

また鉄道の大惨事が起きてしまった。
5月28日午前1時過ぎ、コールカーターから150kmほど離れたミドナープル地区内のマオイストの拠点ジャールグラム近くにて、ハウラーからムンバイーに向かうギャーネーシュワリー急行が脱線して並行して走る線路に乗り上げた。そこに走行してきたターター・ナガルからカラグプルに向かう貨物列車が衝突したため、被害が更に深刻なものとなった。大きな地図で見る
事件はマオイストによる犯行と断定されている。当初は爆破事件説もあったものの、鉄路のフィッシュプレート(ジョイントバーとも呼ばれる)というレールの継ぎ目を固定する部品が取り外されていることが確認されたことから、当局はこれが有力な原因とみて調査中。
すでに100人を超える死者が確認されているとともに、負傷者も200人以上と伝えられている。複数の倒壊ないしは大破した客車の中に閉じ込められている人たちの救出作業が続いており、今後死者ならびに負傷者の数は拡大する見込み。インド国鉄から列車乗客リストがウェブ上に公開されている。以下のビデオは事故発生から間もない時間帯に放送されたものであるため、被害の数はまだ少ないものとなっている。たとえ客車に保安要員を配置して、座席あるいは寝台の乗客安全を図ったところで、その車両が走る鉄路の状況にまで監視の目はなかなか行き届かないであろう。広大な国土のインドである。寒村や人里離れたところを拠点に暗躍するマオイストたちにとって、政府に対して大きなダメージを与えるためには、鉄道は簡単にして確実な攻撃対象となる。内務大臣のチダムバラムがマオイストへの対決姿勢を鮮明にしてから、4月上旬にはチャッティースガル州で彼らの拠点を叩こうとした警察部隊が、反対にマオイスト側から急襲されて76名が死亡する事件が起きたのは記憶に新しいところだ。内務大臣はその責を取り、一時は辞表まで用意したものの慰留されている。
今回は、事件現場から十数キロほど南東方向に進むと空軍基地というロケーション。国防施設周辺といういわばグリーンゾーンのすぐ外側でこうした惨事を起こすということ自体が、政府の無策ぶりを嘲笑っているかのようである。
すでに中央政府、州政府、鉄道当局の三つ巴で責任のなすり合いが始まっている様子もあり、まさにマオイストの思う壺・・・といった具合に進展しているようだ。
現場が僻地であることもあり、国外では『インドでよくある鉄道事故』であるかのように扱われてしまうかもしれない。だがマオイストによる大胆な犯行が連続している状況は、潜在的には2008年11月にムンバイーで起きたイスラーム過激派によるテロに匹敵する脅威を秘めているといって過言ではないかもしれない。往々にして他所から来た人間が散発的に起こすテロ(近ごろでは『テロの国産化』という傾向もあるにせよ)と違い、マオイストたちの存在は地元に根ざしたものであり、それ自体が大衆運動でもあるため、彼らとの対立は文字通り『内なる闘い』ということになるのである。
※『彼方のインド4』は後日掲載します。

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