シェーカーワティー地方へ 1 〈デリー出発〉

昼を少し回ったあたりで、デリーのサライ・カレー・カーンISBTからシェーカーワティー方面行きにバスに乗車。このバスの終着地ジュンジュヌーまで距離にして220km程度だが車掌は「6時間半かかる」と言う。かなり迂回しながら進んでいくということもあるが、とりわけラージャスターン州に入ってからの路面状況があまり良好ではないという部分もある。

首都圏から遠く離れているわけではないのに、そのあたりのインフラが整っていないということに、「ゆえに地域特有のものが保存されてきた」という面もあり、近世以降のインド経済で現在に至るまで、重要な役割を担ってきたマールワーリー商人たちの主要な故地であるにもかかわらず、このような状況であるがゆえに、「すっかり見捨てられてしまった過去の繁栄の地」という印象も受ける。このシェーカーワティー地方については、私がずいぶん前にこのブログに掲載した記事があるのでご参照願いたい。

シェーカーワティーに行こう1 華麗な屋敷町

長距離バスに乗るときにしばしば思う。同じ街の始発点から乗車すれば座席を確保できるにもかかわらず、なぜそこまで行くことなく、途中の路上から乗車しようという人が多いのかと。自宅がよほどそこから遠かったり、荷物が多いので市内移動さえも困難というケースを除けば、そのわずかな労と時間を惜しまなければ、車内に入り切れずに次のバスを待たなくてはならないとか、何とか乗り込んだものの、物凄い混雑でにっちもさっちもいかない状況は回避できたりするのだが。とりわけバスターミナルを出て、わずか500mなり1kmなりの地点でバスを待ち構えてドカドカと乗車してくる人々を見るとそのように感じる。

私が利用したバスもそんな具合であった。始発のISBTを出るあたりでは、乗客の誰もが着席している状態であったが、バスターミナル近くやデリー市内の経由地でバスが客集めしているうちに、出入口のドアから乗客があふれて、しがみつく状態となる。

バスは、デリー首都圏を出てから、しばらくの間はハリヤーナー州内を進んでいく。人口稠密で、クルマの多い地域なので、工事中の場所やトールゲート手前などで、ひどい渋滞となる地点がいくつもある。ハリヤーナー州といっても、デリーと較べるとかなり田舎であったり、貧し気であったりする地域も少なくないようだ。バスはやがてレーワーリーという街に到着。ここは交通の要衝となっており、ラージャスターン州やUP州の各方面への乗り換えのために降りていく人たちは少なくない。

だが、こちらとしては「まだレーワーリーか!」と大変ガッカリしたりする。デリー近郊のグルガオンからパタウディーを経て少々進んだあたりに過ぎないからだ。

車内が一時空いたと思いきや、ここからまた大勢乗り込んでくるので、さきほどまでと変わらない満杯状態となる。

やがてバスはラージャスターン州に入った。スマホが機能していれば、どのあたりを走っているのかわかるのだが、まだアクティベートされていないため、少し大きな町に差し掛かったときに地名を確認してguidebookの地図を見る。それでどのあたりまで来ているかわかる。すでに午後4時になっているが、先はまだまだ長い。車内でよく人々が電話しているが、それがなにやら羨ましく思える。やはり今の時代、旅行中でも携帯がないと不便に感じてしまう。

シーズンではないので大丈夫かとは思うが、予定地到着が遅い時間になることがわかっている場合、やはり前もって宿に電話して空きを確認できると安心だ。とりわけ「ここに宿泊したい」というところがある場合には。
ガタガタと走るバスの車窓から外を眺めていると、やがて陽は西に大きく傾き、大きな大地を朱に染めていく。こうした時間帯のインドはとりわけ美しいと思う。

いつしかシェーカーワティー地域に入っているようで、この地域特有の2本ないしは4本のミナレット状の塔がある井戸がしばしばみられるようになってきた。私の近くに座っている青年はバンガロールから36時間かけて鉄道でやってきたというITエンジニア。ジュンジュヌーの近郊に実家があるとのことだが、家族や友人たちに幾度も携帯電話から連絡しては、通過している場所を伝えている。バイクで誰かが迎えに来てくれることになっているとのこと。久しぶりの帰省で大変嬉しいことは満面の笑みからもよくわかる。

すでに陽はとっぷりと暮れてしまった。午後7時近くになったあたりで、ようやくジュンジュヌーのバススタンドに到着。下車してから今度はマンダ‐ワー行きのバスを探す。バスのチケットカウンターで、地元の学校で英語の教員をしている人と出会った。この人は実におしゃべりで、英語教員だけあって大変に流暢な英語を話す。インドで起業しているというネパール人にも会った。生まれもインドだそうだが、父母の祖国ネパールでの不安定な様子がいつも気がかりとのこと。

ジュンジュヌーから1時間ほどでマンダーワーのバススタンドに到着。商店がいくつか並ぶ一角スバーシュ・チャンドラ・ボースの胸像があるところが「バススタンド」ということになっている。

降りたところから宿が遠くて、途中の路地の暗がりに犬がいたりすると嫌だなと思ったが、ここからすぐ近くに目的の宿があったので良かった。

この日の宿泊はHotel Madawa Haveli古いハヴェーリーをホテルに転用したもので、部屋によって広さや形、装飾等は異なり、料金設定も違う。照明が暗いのは難だが、きれいで快適な部屋だ。

マンダーワー行きバスに乗り換える前、ジュンジュヌーに到着する少し前あたりで、スマホにシグナルが入っていることを確認していた。宿の屋上で食事を注文してから早速ボーダフォンに電話してSIMをアクティベートする。しばらくすると開通した。これだけでずいぶん気分が違う。宿のWi-Fi頼みは心もとないが、ネットが常時接続、そして電話がいつでもかけられる、受けられるという安心感は実にいい・・・というより、今やどこにいても必須である。

〈続く〉

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