「世俗」ってなんだろう?

グル・ナナク

 フランスでのイスラム教徒女子学生ヘジャーブ、スカーフ着用禁止問題については、今までもしばしばマスコミで取り上げられ、日本でもよく知られる。ところが、このたび新法が施行されると、国内すべての公立学校で、イスラムのみならず宗教を象徴するあらゆるものの着用が禁じられてしまうため、同国在住のスィク教徒たちは危機感を抱いているという。


 世俗国家が宗教不偏であることは大切だが、人々の生活の中における「宗教的」「世俗的」の線引きはそう簡単ではない。スィクのターバンにせよ、手首にはめた金属の輪にせよ、それが宗教的アイデンティティを示すものには違いない。だがそれは同時にパンジャーブ系を中心とするスィク教を信奉する人たちの伝統的な民族衣装である、という見方もできるのではないだろうか。
 一方、独立以来「世俗政治」を続けてきたインドで力を伸ばしているヒンドゥー右翼勢力。現在の中央政権与党であるBJP(インド人民党)のスタンスは、ヒンドゥー教やその習慣を、宗教の枠を越えた母国固有の伝統文化であるとして、「世俗」が意味するところを大幅に広げ、社会をよりサフラン色(ヒンドゥー的)に変えようとしているようだ。
 インドではこれまで幾度となく「統一民法」に関する議論が持ち上がっている。婚姻や相続などを定めた民法が、宗教コミュニティ別ということは「世俗国家」として異色である。従来このスタイルを守ってきたのが「世俗」を標榜する国民会議派、逆に「統一民法」を主張するのがナショナリスト政党のBJPという、一見矛盾めいたことが起きている。
 宗教、民族、伝統文化は相互に不可分な部分が大きい。「世俗的」あるいは「宗教的」であることの境は、時の為政者の解釈次第で大きく変わってしまう。何とも不思議なものである。
▼フランス公立学校でターバン禁止!
http://news.bbc.co.uk/2/hi/europe/3403775.stm
▼パリでスィク教徒の抗議デモ
http://news.bbc.co.uk/2/hi/europe/3448239.stm

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