アンダマン シンガポール・タイからひとっ飛び!

ANI(Andaman & Nicobar Islands)つまりアンダマン及びニコバール諸島を訪れてみたいと思いつつもなかなか機会に恵まれず、いまだそれを果たせずにいる。
ミャンマーの南、マレー半島の西側、スマトラのすぐ北にまで連なるアンダマン諸島とニコバール諸島からなる広大なエリアからなる連邦直轄地だ。行政の中心地はポート・ブレアーで、2005年12月にインドネシアのスマトラ沖で発生した地震による津波による被災状況に関するニュースがここから多数発信されたことは記憶に新しい。
ANIには570を超える多くの島々があるが、人が定住している島はたった38しかない。もともとこの地域に暮らしてきた人々以外に、インド各地から移住してきた人々も多く、それぞれの移民コミュニティでヒンディー、ベンガーリー、タミル、テルグー、マラーティーその他多くの言葉が使用されているという。またビルマ(現ミャンマー)がインドの一部であった時代にやってきたカレン族も少なからず居住しているらしい。
かつて英領時代にはインド本土から遠く離れていることから独立運動にかかわった指導者たちを投獄する流刑地として格好のロケーションであったし、現在ならば中央政府関係の仕事をしている人たちにとって地の果てにある島々への転勤とは典型的な左遷先あるいはインド軍の要衝ということになるだろう。しかし私たち外国人にとっては、豊かな大自然に恵まれた太陽と澄み切った海の楽園であるとともに、海洋を隔てて本土から遠く離れた立地からしてインドの「広さ」を実感させてくれるところであろう。


現在エアー・デカンとインディアンのフライトがコルカタおよびチェンナイから毎日、ジェットエアウェイズもチェンナイからポート・ブレアーに毎日就航(いずれも飛行時間約2時間)しており、昔に比べてずいぶん便利になっているようだ。これらに加えて、今年10月5日からスパイス・ジェットによるコルカタとチェンナイからそれぞれポート・ブレアーを毎日往復する便が就航する。目下4399Rsで売り出し中だ。
時間がある人はコルカタおよびチェンナイから月4便、ヴィシャカパトナムから月1便の船を利用して、60時間前後の海の旅をのんびり過ごすのもいいだろう。
ただインドの他地域に比べて開発の度合いが低いこと、小さな島々からなる群島地域であることなどから域内交通の便はあまり良くないようだ。短い時間で行きたいところをササッと訪れる・・・というのは難しいようだ。また基本的にニコバール諸島のほうは一般の外国人の立ち入りはできないといった制限もある。
インドには他に興味深いところが山ほどあり、どこかを訪れるとそのつながりで周辺地域への興味なども湧いてみることから、「行きたいところ」は際限なく膨らんでいく。「さてどこに行ってみよう?」と胸に浮かんだいくつかの候補地とANIを天秤にかけると、本土からはるばるANIを往復するための費用はともかく、その土地のことをよく知らないので興味関心の点からプライオリティが低くなること、それなりにまとまった時間がないとせっかく訪れてみてもあまり楽しめないのではないかという懸念などもあり、これまで足が向くことがなかった。
そんなANIだが、このほどちょっと気になる記事を目にした。
「アンダマン諸島とシンガポール、タイを空路で連結へ=インド民間航空相」 (時事通信)
この記事によれば来年3月までにANIとシンガポール、タイを空路でつなぐことを予定しているのだとか。もちろん目的は観光開発だろう。これといった産業がなく本土からの支出によって支えられてきたこの地域。国内観光ブームの高まりとともに「より新しいデスティネーション」を求める層によりANIの訪問客が増えていることを背景ともに、本土よりも地理的に近い近隣地域からの顧客層の掘り起こしという狙いがあるのだろう。
また記事中にもあるように、隣接地にポテンシャルの高い「ダイヤの原石」のような地域があることにより、ANIとのリンクはシンガポール・タイ両国にとってもメリットの高いものとなるのは当然のことだ。インドがASEAN諸国との繋がりを深めている中、政治的な対立関係のないこれらの国と共同で地域振興を図るのはごく自然な流れであろう。
ましてやインドにしてみれば本土からの距離が長いため独自では需要の急な拡大は難しい。自国民の可処分所得が多く、かつ欧米や東アジア等からの訪問客が多いこれらの国々に玄関口を設けたら凄いことになるのではないかと私自身常々思っていた。
今後、アンダマンを訪れるための出発地はコルカタ、チェンナイではなく、距離的により近い東南アジア地域にシフトしていき、インドのANIというよりもグアムやサイパンのように国際的な一大リゾート地として広く認知されるようになっていくことになるのかもしれない。
もとよりこの地域ネイティブの民族とインド本土からやってくる移民たちとの軋轢その他いろいろあるようだが、これまで国内の辺境であった地域が一足飛びに国際観光地化するとどういうことになるのだろう? 観光客の奔流とともに、これまでよりも大きな規模での移民の流入、内外からの盛んな投資などに晒されて、島々の地形まで変えてしまうような大きな開発の波が訪れるのではないだろうか。
今から10年、15年後には「アンダマン6日間 ×万円」なんていう広告が新聞に載り、各国の高級ホテルチェーンがフェンスで囲い込んだプライベート・ビーチあるいは無人島をまるごと占有したリゾート・アイランドを売りにするといったANIのイメージが私たちの間に定着してしまう・・・なんてことも昨今のインドではありえないことではないように思える。ANIで世界未曾有の規模での大リゾート開発が始まるのではないかという予感がする。
広大なエリアに及ぶ割には少ない人口、その中には「稼ぐため」に本土からの移民が占める割合が高くいことなどから、地元からは開発に反対ないしは懐疑的な声はあまり上がってこないのではなかろうか。また本土の人々にしてみても、ANIは地理的に離れ過ぎてあまり問題意識を持ちえないのではないかという気もする。
「開発=悪」と決め付けるつもりはないのだが、環境保全、地域伝統文化の保護等々と合わせて、どうバランスを取っていくのだろうか?ANIの将来、「人類の叡智が試される」といっても大袈裟ではないかもしれない。今後の推移について大いに注目していきたい。
「アンダマン諸島とシンガポール、タイを空路で連結へ=インド民間航空相」 (時事通信)

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