カサウリー ビールとIMFL(Indian Made Foreign Liquor)の故郷

カサウリーには海抜にして約1800mに過ぎないが、ここには現存する世界で最高地点にある有数の醸造/蒸留酒製造所がある。当時の主な洋酒市場となるイギリス人居住地や軍駐屯地等へのアクセスの良さに加えて、酒造りに欠かせない良質な水が採取できる好立地であったのだろう。
この酒造会社とはご存知Mohan Maekin Limitedである。ビールのGolden Eagle、ラムのOld Monkで広く知られるあの酒造会社だ。前身は1855年設立のDyer Breweries。もっとも法人組織化するだいぶ前から酒造行を営んでおり、創業は1820年代後半といわれる。この酒造所はアジアで最初のビールLion(現在も軍用として製造)を生んだことでも知られている。


創業一家はイギリスから今よりもはるかに広大であった当時のパンジャーブ州に移住し、ここを本拠地として繁栄する一族であった。ちなみにマリー(現在パーキスターンのヒルステーション)に生まれてシムラーで学んだレジナルド・エドワード・ハリー・ダイヤー、つまり1919年にアムリトサルのジャリアンワーラー・バーグで起きた虐殺を指揮したとされる准将もまた彼らの身内である。
この酒造会社はシムラー、マリー、ラーワルピンディーにも酒造所を設立した。また旧パンジャーブ州以外でもクエッタ、ウータカマンド、マンダレイなどでも操業していた。現在のインド、パーキスターン、ミャンマーにまたがる一大事業である。
パーキスターンのマリー・ビールもミャンマーのマンダレー・ビールも創業時の経営母体は同じ。インドの古典ビール、ゴールデン・イーグルから見れば、これらそれぞれの国を代表するビールたちは、実は血を分けた兄弟たちなのである。
1937年には同様にイギリスからやってきた実業家がインドで起業して、ラーニーケート、ダルハウジー、ダージリンに加えてセイロンのヌワラエリヤでも操業していたMaekin Breweryに吸収合併される。
インド独立にあたり、インド人実業家N. N. Mohanが多額の資金を集めてロンドン株式市場に上場していた同社株式を買い占めて経営権を取得することにより、完全に現地化した「インドの会社」として生まれ変わることとなり、Mohan Maekin Limitedとして現在に至っている。
そんなことを想えば、インドのビールと洋酒の故郷カサウリーで飲むお酒は心なしか普段よりもちょっとおいしいような気がしないでもない。
Golden Eagle

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