クルマの手配の関係で、レーの中心部にある旅行代理店経営者のワンチュクさんとやりとりしていた際、息子さんが明日のパンゴンツォ行きの予約をしていた人に電話しているのが聞こえてきた。
「もしもし・・・。あなたが予約されていたシェアジープなのですが、がけ崩れにより、少なくとも二、三日は道路が不通になるようです。払い戻し、あるいは出発日時の再設定ということになりますが、オフィスまでお出でいただけませんか?」
出発前ならば、お客としても対応できる余地はいろいろあるのだが、帰り道にこうなってしまうと、道路が再開するまで待つしかない。どこかに観光に出てレーに帰着する翌日にデリー行きのフライト、そのまた翌日が帰国便というスケジュールを組んでいたら、即アウト!である。日本人の場合は、タイトなスケジュールを余儀なくされている人が多いので、こういうところがなかなかキビシイ。私が向かうのはパンゴンツォではないので他人事ながらも、そうした場合の対応をいろいろと考えてしまう。
クルマの手配をしているうちに正午を大きく回ってしまった。旅行者相手の食堂で昼食をした後、近くにあるカフェで大きなアンズのタルトを注文すると、もう腹一杯になってしまった。
その後、シャーンティ・ストゥーパに上る。道路から頂上まで、およそ15分程度だろうか。やはりここからの眺めは素晴らしく、レーとその周囲のインダス川沿いに開けた緑したたる大地とその周囲の不毛な山々を望むことができる。空は曇ってきた。北の方角から雷の音がして、ドラゴンでも出てきそうな気がする。
昨年来たときは、その前の訪問から20年ほど経っていたこともあり、その変容ぶりには大変驚かされたが、今回は昨年と特に変わったようには感じられない。だが旅行業関係の人によると、昨年に比べて訪問客はかなり減っているそうだ。「春先には中国による侵犯があったし、6月にはウッタラーカンド、ヒマーチャル・プラデーシュで大雨による大災害があったりもしたので、ヒマラヤ地域は危険ということになっているのかもしれない」とのこと。
特にここでシーズンに働いている人たち、そうした人たちが従事する産業といえば、往々にして観光関係(農作業に従事する他地域からの出稼ぎ人も多いが)ということになるため、現地での情勢はもちろんのこと、近隣地域の動きや災害に関する風評によっても景気が大きく左右されてしまうことになる。
もちろんどんな産業にも固有のリスクや弱点等はあるものだが、観光業というのは、自助努力だけではどうにもならないファクターが大きいのは辛いところだ。