狂気が駆け抜ける!(2)

犬の牙
 Wikipediaの狂犬病に関する記事にアクセスしてみた。狂犬病とはすべての哺乳類に感染する病気であり、発症後は躁と欝の状態を繰り返すらしい。また恐ろしいことに発病したら治療法がなく、症状が現れてから遅くとも一週間で前後でほぼ100パーセント死亡するという。なんでも2004年に発病しながらも自然治癒したという例がアメリカにあるそうだがこれはギネスブックに載ることになったというほど稀で幸運なケースであるそうだ。
 狂犬に噛まれた場合は予防注射をしていた場合は2回、そうでない場合は6回ワクチンを打つ必要があるという。また噛まれる場所により潜伏期間が違うらしい。体内に入ったウイルスが1日に数ミリから数十ミリ程度の速度で進み、神経系を介して脳神経組織に到達したときに発病するものであることから、要は咬まれる部位が脳に近いほど潜伏期間が短いということになり、二週間から数ヶ月という具合に大きな幅が出てくる。そのため脳にごく近い顔の部分を咬まれたりすると、ワクチンの接種を開始しても間に合わなくて発病というケースもあるらしい。だから『感染の可能性がある動物を抱え上げて遊んでやっている際にやられた』なんていう場合には、即座に病院に急行すべきである。
 咬まれるだけではなく、感染している動物の唾液が目や口などの粘膜に触れるだけでも感染し得るということにも注意が要るだろう。だから『犬が咬んできたけどズボンに穴が開いただけで済んだ』とか『上着だけ咬まれた』という場合であっても、その衣類の扱いには相応の注意を払ったほうがいいかもしれない。


 不幸にも咬まれてしまった場合、最初に大量の水で洗いメタノールで消毒する必要があるというが、家や宿の近くならまだしも外出中であったりそれもバスで田舎道を移動中だったりすると、そうした応急処置ができないのは困る。
 ウイルス自体の感染性は弱い(だから空気感染はしない)が、感染している動物から咬まれるという直接のコンタクトがあると感染してしまうのである。狂犬病に感染しえる他の多くの哺乳類と違い、犬というは人間の生活圏の中で暮らしていること、そして犬たちにとって見慣れないものや『不審者』と判断した相手に対して攻撃的であることは彼らの本能であることは、私たち人間にとって実に具合の悪いことである。
 私自身、犬は好きではないので相手にすることはないのだが、ときに吠え付いてきたりするのはこの動物の本能だから仕方のないことだ。犬の警戒心から来る攻撃的な行動に対してこちらが怯むとカサにかかって迫ってきたりするので、こちらとしても腕を振り上げるなり、小石を投げるふり(ときに本当にぶつけることもあるが)などして追い払わなくてはならないこともある。
 だがそうした行動で咬まれる被害を防ぐことができるのは、当の犬自身が『犬としてのまともな理性』を持ち合わせているからこそであり、さきほど狼藉を繰り返していた狂犬のように理性が失われているものに対しては期待することができない。そもそも真後ろから猛スピードで駆けてきて前触れもなくそのまま咬みつくという行動は誰も予見できないだろう。
 だが今なお各地で数多く発生する狂犬病について無策であるべきではないはずだ。インドに限らずアフリカや南米北部などは『高度流行地域』に指定されている。こうした地域では人間の間でも、年間およそ10万人に1件の割合でこの病気が発病しているのである。
 こうした事態を憂慮し、どこかで野犬の捕獲や処分といった強行手段が取られると、これまたどこからともなく現れた『動物愛護家』たちが善人の顔を装い偉そうなコメントを発表したり、批判的な論陣を張ったりするものだ。確かにこの世の中は人間だけの占有物ではないし、犬だってそれぞれ大切な命をさずかって生まれてきたわけだから、彼らの論にも一理はあるだろう。
 だがかつては野良犬が徘徊していた過去がありながらも、行政や市民たちの努力の結果、ほぼすべての犬たちを飼い主の管理化に置くことに成功したうえ、それらに対する定期的な予防接種を行なうことも義務付けられている日本のような状態と違い、人の数ほどの野犬たちがいる(?)インドにあっては、たとえ今後膨大な手間や時間がかかろうと、この恐ろしい病気への感染を防ぐために大胆かつ抜本的な対策が取られるべきであろう。

狂犬病(Wikipedia)
狂犬病(医学辞典)
狂犬病(WANファイル)

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です


上の計算式の答えを入力してください