インドのヴィザ1

10月1日からインドのヴィザ申請書類の変更があちこちで話題になっている。

様々な情報がウェブ上等で飛び交っているものの、当の『インドビザ申請センター』(日本およびその他の多くの国々でインドヴィザ受付業務は民間委託されている)でも、10月1日からの変更点について、ウェブサイトに記載しているものの、詳細についてはよくわからないようだった。(10月第1週現在)

観光ヴィザでさえも、往復のフライトの予約確認書あるいは訪問先からのオリジナルの招聘状と招待者のパスポートコピー、ホテルの予約確認表、申請者が学生・主婦・無職の場合は預金残高証明書といったものが必要となる。

こうなると『近隣の第三国から陸路入国する予定である場合どうするのか?』『ホテルは何泊分の予約が必要なのか?』『訪問する友人宅でパスポートを持っている人がいない場合は?』『預金残高とはいくらあればいいのか?』などといった疑問を抱くのが普通だ。

そのあたりの詳細についは、今後次第に明らかになってくるはずだ。このたび新たに要件が追加となっているだけに、本国から各国の大使館への指示、それに対する大使館での解釈の間にいろいろ齟齬が生じている可能性もあるし、今後それらについて新たな調整が加わる可能性もある。よって10月の現時点とこれ以降では、細かな部分で細かな違いが出てくるかもしれない。現状ではかなり流動的な部分があると見たほうがいいだろう。

これらの変更の背景にあるのは、第一に治安対策に他ならない。各地で相次いでいるテロ事件について、周辺国を拠点とする組織の関与があるとされるため、外国人の出入りについては、『観光客』という身元のはっきりしない不特定多数の人々が一度入国してからは行動を把握することはできないため、まず入口の部分で従前以上にスキャンをかけておく必要がある。

これまでテロに関与してきた人々とは、必ずしもインドに敵対する組織が存在する周辺国に限らない。以前はノーマークだった米国やカナダ等といった国籍を持つ南アジア系の人々が2008年11月に起きたムンバイーの大規模なテロ事件を背後で操る黒幕の中に含まれていたことは大きな衝撃であった。メディア等には出ていないが、犯行の中核部分以外においても、それまで警戒の対象外であった国籍の人々の関与が疑われる事例等がいくつかあったとしても決して不思議ではない。

そのため第三国の国々についても聖域を設けずに疑ってかかるという姿勢を取らざるを得なくなってきていることは容易に想像できる。幾度も繰り返されるテロ事件に対する政府への批判も強く、国内的にも外国人の出入国に関する政府の厳しい姿勢をアピールする必要がある。

インドと友好的な関係を持つ日本だが、前者にとって潜在的に懸念する対象となりえる南アジア起源の勢力が後者の国内に皆無というわけではない。それらはインドに対して敵対的な姿勢を示しているわけではないものの、かなり広範囲な流れを包括するその筋からは、諸外国でかなり問題のあるグループも派生している。

加えて、対外的な経済の開放と国内経済の継続的な成長に伴い、外国人の間でビジネスチャンスが増えている。それらはとりもなおさず、非インド国籍の人々についても、投資や高度な知識や技術等を有して正当なヴィザを取得してインドに在住している人たち以外にも、おこぼれ的な就労機会が生じることを意味する。そのためこの部分に対する引き締め策というところも、多少なりとも含まれているかもしれない。

インドに限りない愛着と憧憬をおぼえる日本人のひとりとしては、より多くの日本の人々がインドを訪れる機会を得て、その様々な魅力に触れたりすることが、もっと深く踏み込んで何か特定の事柄について研究するとか、あるいは日印間の事業等に乗り出して、両国の絆を深めるきっかけとなればいいと思っている。

そのためにも、ヴィザの申請要件変更については、個々の人々のインドとの出会いにおいて、最初のとっかかりである『インド訪問』をしようという気を削いでしまうような気がしてならない。

おそらくインド国内的にも、訪問する外国人たちに関わる仕事、主に観光業関係を中心に懸念する向きは少なくないだろうし、政府内でもインド観光の推進の旗振役である観光省にとっては、2010年1月から導入された出入国に関する2カ月ルールと合わせて、今回のヴィザ申請要件の変更はちょっと気になるところであろう。

あるいは今後、空港でのあらの適用となる国籍が拡大されることにより、従来の観光ヴィザに代える役割を持たせようという含みもあるのかもしれない。シングル・エントリーで滞在最大30日間までで延長不可、前回の出国から2か月以上の期間を置いて、年間に2回まで発行可という、通常の観光査証よりも条件が制限されたものである。

現状では、到着空港でのヴィザ取得はやたらと時間がかかる。査証発行担当官が本人と直に面談して判断できるというメリットはあるものの、今のやりかたでは多くの観光客が空港での査証取得を求めた場合、とても対応しきれない。

またアライバル・ヴィザそのものの要件についても、今後何らかの変更が生じる可能性は否定できないだろう。今後インドを観光で訪れる方は、到着してから困った事態にならないように、事前に確認しておいたほうがいい。

変更の背景にある国内事情、基幹産業のひとつ(これに依存する割合が非常に高い地域も少なくない)である観光業への配慮、そして入国する外国人たちの実情(問題国以外の国籍の人々に対する条件緩和)といったあたりで、擦り合わせを重ねたうえで、より実際的かつ合理的なものへと移行してくれるようになるとありがたい。

なお、観光ヴィザだけではなく、その他のヴィザについても変更部分が生じている部分があるため、申請時にはご注意願いたい。

<続く>

「インドのヴィザ1」への2件のフィードバック

  1. 10月14日に、残高証明以外は不要になったそうです。
    インド大使館に勤務している友人も、担当者が変わったから必要書類ふえたかな?
    とか言っていました。そのうちまた変更になると思っていたら、やっぱり・・・たった2週間でした。ふりまわされましたね。でもまた変わるかも・・・

  2. ヴィザセンターのスタッフの人も困っていたみたいですよ。
    10月からの書類変更について「大使館に質問してもよくわからないみたいで・・・」
    てなことで。日本人にはテロリストはいない(と思う・・・たぶん・・・)ので、お手柔らか
    に願いたいところです。

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