毒も水もみんなの問題

昨今の日本のメディアでは盛んに輸入食品中に含まれる『中国毒』の問題を扱っている。加工品の場合、第一に現地での加工プロセス中での管理、中国における食品安全基準の甘さといった、体制上の欠陥、第二に低コスト化を求めて意図的に偽食品が作り出されるという倫理観の欠如といったあたりが大きな懸念材料として挙げられている。
また生鮮食品について、工業化の進行の結果として汚染された土壌で日本の基準値を超えた農薬等が使用された野菜や果物について、同様に汚染された水域で漁獲ないしは養殖された魚介類などが大量に日本市場に入ってきており、水際での散発的な抜き取り検査では全容を把握できるはずもないという声も挙がっている。


こうした中国バッシングについては、一説によると日本国内の食品産業により、国内市場から中国製品を締め出そうという圧力による部分もあるのではないか、と少々うがった見方もあるらしい。それはともかく、こうした食の安全にかかわる疑問や問題は数あれども、国を問わず食品産業にかかわる大部分の企業やその業界の人々は日々真面目に働いていているものと信じたい。
こうした問題は、何も中国に限ったことではなく、工業化が進む途上国を中心に同様の問題が多いことはいうまでもない。地理的に近く、広大な国土を持ち各種産業が盛んなこの隣国からさまざまなモノを日々大量に輸入しているがゆえに、その安全性についての懸念が日本国内で提議されることになっているだけのことであり、似たような事は他国でもよく耳にする。
日本では、これを契機に特に危険が高いと思われる食品については、少し高くても他国産のものを買い求めるとか、国産品を選ぶようにするといった選択が多少なりとも可能なだけでもまだいいかもしれない。これが『自国内の産物は危ない』ということになったら、もはやそのリスクを見て見ぬふりをして日々それらを口に運ぶしかないだろう。
数年前、インド国内の調査機関による、同国内で製造される外資系企業による清涼飲料水、ミネラル・ウォーターといったドリンク類から基準値を大きく超える農薬成分が検出されたという告発が各種メディアを巻き込んでの大きな物議を醸し、最終的に政治的な決着(?)で落ち着くといった騒動があった。
それとはまた別の話になるが、以下のリンクの記事にはパンジャーブ州における水質がと懸念されている問題が挙げられている。水に含まれる鉛、砒素、農薬成分などが許容値を超えており、人間のDNAに変異を生じさせている例が多く確認されており、これが高い確率での奇形、ガン、肝臓疾患などを引き起こしているとのことだ。
結局、そうした大企業が確保する良質の水を大量に安定的に確保できる水源でさえも汚染されているとすれば、資金力で劣る国内同業者の製品はもちろんのこと、大多数の市民が日々口にする水道水はどうなっているのか?というとてつもない大きな問題に発展してしまう可能性があったためではないかと私は思った。実際、水質汚染に関する問題は世界各地で常に提議されている。私たちの国や社会は、現在の工業化や経済発展の恩恵を享受している今の世代限りのものではなく、次のそしてまた次の世代へと大切に引き継いでゆかなければならないものだ。
素人に何ができるのかわからない。ただ私たちひとりひとりが、ごく小さなことでもいいから可能なことを実行すること、他の人々に協力を求めていくこと、さらには行政に現状を把握させたうえで、対応策を実行するように働きかけていくしかないのだろう。
空も大地も水も、切れ間なくつながっている。それが世界だ。『中国毒』は、外国からやってくる災厄などではなく、インドの『水問題』にしても、対岸の火事などではないだろう。同じ地球上に暮らす私たちみんながともに知恵と力を合わせて考えていかなくてはならない問題なのではないだろうか。
Punjab water ‘is risk to health’ (BBC NEWS South Asia)

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です


上の計算式の答えを入力してください