スンダルバンから東に視点を移すと、バーングラーデーシュで『船の墓場』として知られるチッタゴン近郊の浜辺の様子が目に入る。浅瀬に座礁させた大型船舶が解体を待つ様子が見て取れる。
同様の景色は同じく船の解体場として有名なインドのグジャラート州のアランのほうでもあり、少なくともこの画像の撮影時点では、こちらのほうが処理される船舶の数は多いように見える。
さらに西のパーキスターンのバローチスターンにあるガッダーニーも同様の作業が行われていることが知られており、無数の船舶が海岸線に打ち捨てられた状態になっていることがわかる。
こうした現場の作業員たちが非常に劣悪な条件下で働いていること、また環境保全の面からも有害物質等の流出への対策が何ら取られていないことから、様々な問題提起がなされているところだ。
それとは反対に、今まさに建造作業真只中のダウ船が並ぶ景色も見ることができる。グジャラート州のマンドヴィーは、かつてアラビア海を越えての交易に活躍していたダウと呼ばれる帆船の建造が盛んであったが、現在も同様にこうした船が造られている。もちろん現代のダウはエンジン付きだ。作業は露天で進んでいくため、こうした風景を上空から撮影することができるわけである。
外部の人間の立ち入りに制限のある船の解体場は訪れたことがないが、こちらは幾度から訪ねてみたことがある。誰でも作業の様子を船の外から見学できるし、関係者らしき人も気さくに質問等に答えてくれる。
18世紀から19世紀にかけて、現在はパーキスターンとなっているスィンド地方はもちろんのこと、ペルシャやアラビア、さらに遠くは東アフリカとの交易の拠点であり、この地からそれらの地域へと足を延ばした商人たちも多かったようだ。
その後、印パ分離前、そして船から飛行機の時代に移るまでは、それなりの賑わいを見せており、カッチ地方随一の商都として栄えたマンドヴィーも、今ではすっかりひなびた田舎町になっている。
そんな歴史に思いをはせながら、今なお建造されているダウ船を眺めているのもなかなか楽しいものだ。
<続く>