Lonely Planet 2

もっともこうした傾向はここ数年のものではなく、90年代半ばから特定のエリアに限ったガイドブックが出てきていたものだが、ごく最近の動きとしては昨年あたりからKindle eBookと題して、アマゾンを通じたキンドル版の電子書籍の販売がなされていることが挙げられる。 

こちらは通常の書籍版のIndiaに相当するものとともに、各州ごとのチャプターとして切り売りされている。前者が20ドル弱であるのに対して、州ごとに個別に購入すると各チャプターが7ドル弱と非常に割高であるため、格別の理由でもない限りは全体をまとめ買いする人のほうが多いことだろう。 

同様に書籍版をPDF化したものもLonely Planet社自身のウェブ上で販売されている。価格についてはこちらも同様である。全体を購入すると24ドル弱だが、チャプターごとに個別に買うと一部あたり5ドル弱とかなり割高になっている。 

PDF版にはセキュリティがかかっており、購入者がAdobe のAcrobatのようなPDF作成・編集ソフトを持っていても、これに書き込みをすることはできなくなっているが、複製を保存することは可能であるため、同社にとってはコピーが簡単に世間に出回ってしまうリスクを抱えているともいえる。今後その部分について何らかの対策が打たれるのではないかと思う。 

ともあれこのPDFについては、旅行する人自身にとって必要なチャプターのみをプリントアウトして持参している例をしばしば見かける。予定外のところを訪れる場合、データをUSBメモリかウェブ上のストレージにでも保存しておいて、どこかPCとプリンタを利用できる場所で、印刷して使うということもあるだろう。 

豊富な情報が満載されているのはいいのだが、いかんせん紙媒体ということもあり、ロンリー・プラネット社の最新のインドのガイドブック(2009年版)については、総ページ数1244という分厚いものとなっており、重量は約1キロ。 

旅行荷物中のアイテムの中で、一番重いのはこのガイドブックというケースは多々あるのではないかと思うし、訪れた先で日中出歩くのにどうも邪魔であるとか、そもそも全州いっぺんに訪れるわけではないため、こんなに厚くなくていいのだ、という人もあるだろう。 

まさにそれがゆえに、既述のとおり特定地域に特化したガイドが出ているわけでもあるが、それよりも明確な形でこうしたニーズに応えているのがこうしたKindle用のeBookないしは汎用的なPDFといった電子書籍販売ではないかと思う。

ただしこの『電子書籍』という媒体についても一考の余地ありで、旅行先でパソコンを立ち上げて読むというのは防犯上好ましくないだけでなく、いちいち立ち上げる手間もあるため現実的ではなく、バスや列車等交通機関の中や雑踏でキンドルや高価なスマートフォンの画面中の地図を見るというのは犯罪を誘発するようなものだ。 

前者はそれなりにカサがあるので書籍に比べて手軽とは言い難いし、後者の場合は頻繁に電子書籍を開いているとバッテリーが1日として持たないため、外付バッテリーその他やはり高価な周辺機器をさらに持参しなくてはならないことになる。するとやはり手軽で安心なのは紙媒体ということになる。 

ともあれいろいろな選択肢が出てくるのはいいことだ。またそうしたニーズに応える柔軟な姿勢とアイデアを惜しまないのはさすがロンリー・プラネット社といったところではないだろうか。 

また似たようなのサービスは他にいくつもあるとはいえ、同社のウェブサイトで提供されているTravel Serviceのフライト検索もなかなか便利だ。複数の提携先とタイアップした予約サイトだが、ここでブッキングしないまでも『ココからアソコまでどの会社のフライトがあるのか?』といったことを調べることができるし、おおよその料金も把握できる。 

そうした意味では同サイト内のホテル検索についても同様で、インドでなくともどこか初めて訪れる国の街に夜遅く到着する予定の場合、事前に予約しておくと安心ということもあるだろう。同一の街の中でエリアや価格帯を絞り込んで検索することもできるし、かなり詳細なロケーションまで表示させることも出来る。なかなか秀逸である。 

ずいぶん便利な時代になったものだと感心するとともに、まさにそういう世相を業態に如実に反映させて、今やロンリー・プラネット社はガイドブック専門出版社という範疇には収まらない、総合的な旅行サービスを提供する企業になっていることがわかる。 

<完>

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