怖い病

最近、狂犬病について書かれた本を2冊読んだ。以下の2冊である。
『ヒトの狂犬病』および『狂犬病再侵入』
書名:ヒトの狂犬病
著者:高山直秀
出版社:時空出版
ISBN:4-88267-029-1 C0047
書名:狂犬病最侵入
著者:神山恒夫
出版社:地人書館
ISBN:978-4-8052-0798-7 C0047
前者は、『忘れられた死の病』というサブタイトルがついていることが示すとおり、1950年代までは、日本国内でも恐ろしくも身近な病気であった狂犬病だが、『撲滅』してから50年になろうとしている現在となっては、その病に怖さを実体験として知る者が少なくなり、正しい知識と警戒心が欠如している現状に警鐘を鳴らす目的で書かれたもののようだ。
後者は、同様のコンセプトのもとに、いつか日本に狂犬病が再上陸したら・・・という想定で様々なシミュレーションを展開している。日本が「狂犬病のない国」という状況は、かなり危うい土台の上にあることが明らかにされている。
どちらも医学専門家(前者は医師、後者は獣医師)によって書かれた書籍で、日本での狂犬病の歴史、現在の狂犬病事情についての海外での豊富な事例なども含まれている。もっと実際的な部分、つまり感染や発病のメカニズム、狂犬病が疑われる動物から咬まれた際のワクチン接種を含めた処置、各国の狂犬病対策の比較等々がわかりやすく説明してある。
別に私や家族が犬に咬まれたわけではないのだが、たまたま手にとってページをめくってみたら、なかなか興味深い記述が多かったため、一気に読み進むこととなったのだ。ただ『興味深い』といっても、発病したら必ず死に至る怖ろしい病気の話であることから、予備知識として仕入れておきたかった。間違っても楽しい内容なんかではあり得ないことは言うまでもないだろう。
以前、狂犬病にかかった犬の様子、同様にこれを発病した人間の状態を捉えた映像を目にしたことがある。特に後者についてはあまりに残酷かつ悲惨な様子がまぶたに焼き付いて離れない。それでもこれまで私自身には『咬まれたら医者に行って何回かワクチン打ってもらえば大丈夫なんだろう』という程度の知識しかなかった。
イヌ以外にもコウモリなどちょっと意外な動物からの感染例が多いこと、ワクチン接種の失敗例(その結果として発病)は少なくないこと、ワクチンにもいくつかのタイプがあり命に関わる副作用の可能性、そして力価つまり効き目にも相当な差があること、国・地域により用いるワクチンや接種方法にかなり広い違いがあること等々、私のような素人にとってはまさに目からウロコの新鮮な情報が多く、万一の場合のためいい勉強になった。
残念ながら、インドはこの病気で命を落とす人々が毎年およそ3万人という世界一の狂犬病大国でもある。自身の身を守るために、またこの国に関する予備知識の一部・・・といっては言いすぎかもしれないが、こうした本を読んでおくのは意味の無いことではないと私は思う。何しろひとたび発病すれば、確実に、しかもほんの数日以内に死に至るとても危険な病気である。

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