旧ジュライホテルの建物はまだあった。何か他の用途に転用されているわけではなく、閉鎖された建物は取り壊されたわけではなく、まだそこに存在している。
界隈は寂れたものの、いかがわしさは今なお健在で、午後の早い時間帯なのに通りには、胸の谷間を強調したセクシーな身なりで、眉間や目尻にシワが刻まれたお姉さんというか、おばちゃん娼婦たちがチラホラいて、謎の微笑みで誘ってくる。
もしかしたらジュライホテルがあったころから、このあたりにたむろしてきた亡霊のような人たちかもしれない。
そんなエリアだけに、周囲には安連れ込み宿と思しき旅社は少なくない。
都心で地価も高いエリアかと思われるのだが、ここに何か新しく建設されるでもなく、廃業したジュライホテルの建物がそのまま残っているというのは不思議でもある。