ディブルーガル5

ディブルーガル大学のキャンパスの一角

田舎町ではあるものの、ディブルーガル大学という大きな総合大学がある。緑豊かで広大なキャンパスの中に様々な学部や研究施設などが点在しており、羨ましい環境である。

案山子はどこの国も同じような感じ

キャンパスの端まで歩くと、小さな出入口があり、外には農地が広がっていた。いくつかの集落を通って、宿へと続く道に出たところに地元の茶園直営の販売店があったので、茶葉を購入。ヒマそうにしていた女性の店長さんは陽気な人で、温かい紅茶をいただきながらしばらく楽しいおしゃべりの時間を過ごさせていただいた。90年代からの「旅行ブーム」は、このあたりの人々の間にもしっかりと定着しているようで、この人も家族でアッサム州内や近隣州に足を延ばしたりするそうだ。

茶葉のアウトレットの店長さん

「でも最近訪れてみた中で一番楽しかったのはアルナーチャル・プラデーシュ州よ。寒くなり始める時期だったから。雪なんて初めて見たし、ずいぶん高い峠を通ってチベット仏教寺院があるタワンにも行ったわよ。アッサム州と違って、公共交通があまりないみたいなの。それで家族でクルマをチャーターして回ったわよ。」

ディブルーガル地域には小さなものも含めて280もの茶園があるという。ダージリンの茶木とここのものとは少し種類が異なるらしい。ダージリンには中国の苗木を移植したわけだが、アッサムには元々土着の茶樹があったことに起因するようだ。その茶の原木の存在があったがゆえに、アッサム地方での茶業が開始されることに繋がったわけである。

中国由来の茶樹と違い、アッサム種は放っておくと、とても背の高い木になってしまうという。現在は中国種との交配が進み、純粋なアッサム種は稀で、茶園で栽培されているのはもちろん両者をかけ合わせたものだそうだ。茶樹の寿命は100年以上に及ぶが、商業的に利用できるのは60年前後であるとのことだ。

この道路をしばらく進んだところに紅茶局が事務所を構えている。たまたま縁あって、ここに勤務している人の話を聞く機会を得たのだが、紅茶小規模農園には補助金を出して、茶業の振興を図っているとのこと。茶園オーナーはアッサムの資本家、他地域のインド人資本家あるいは外資だが、どこも事務系の職員たちはほとんどがアッサムの人たちであるそうだ。畑で作業している人たちのマジョリティはアッサム人ではなく、この地で19世紀に茶業が始まったときに、オリッサから労働者として移住してきた人たちの子孫だという。いろいろ棲み分けがあるようだし、植民地時代からのそうした特色が今も残っているのは興味深い。

物産展が開催されていた。入場料10ルピー支払って入場して、簡単な昼食を取る。アッサム各地の製品を扱う業者たちが出展しているが、この地域の織物や衣類は地味なのであまり見栄えはしないように思う。漬物の店を覗いてみると、やはり見かけたのはタケノコのアチャール。北東インドではよく食材となっているが、私にとっても好みである。

タケノコのアチャール

商店街はそれなりに賑わっているだけでなく、クルマのディーラーや家電製品の大きな店なども多く、消費活動がかなり盛んであることが感じられる。

商店街の少し先には、アッサムの比較的伝統的な手法と様式建築を組み合わせたような、かなり傷んではいるものの、植民地時代に多かったのではないかと思われる家屋群が左手にあった。付近の人によると、ここには誰ももう住んでいないとのことだが、「もともとは警察の官舎であったが、頻繁に幽霊が出て、憑依されて殺される者が二人出たので、全員ここを引き払うことになった。」とのこと。本当かどうかよく判らないが、幽霊が頻出するというのはちょっと怖い。

神像の作業場は休みであったが、中を見学させてもらうと、なかなか楽しかった。木で組んだ骨組みに藁をヒモで巻きつけて肉付けしていく。それを上から粘土を塗りつけて、最後に色付けして仕上がる。置いてある神像は工程がそれぞれバラバラであったので、おおまかな手順が判る。

ブラフマプトラ河沿いには、裁判所、刑務所、警察署等々の行政機関が建ち並んでいる。重要機関が水際に集まっているのは、水上交通の拠点として発達した街に共通する事象だ。

岸辺には陶工たちの作業場兼住まいが並んでいる。一日の早い時間帯に仕事を済ませてしまうようで、形成した後に日干しにして火入れに備えてあるものは沢山みかけるものの、何か作業している人たちは見かけなかった。

ディブルーガルは、隣接するアルナーチャル・プラデーシュ州への玄関口のひとつでもあり、ここからシェア・スモウなどの乗合が発着している。今回はそちらまで足を延ばすことはないが、またいつか機会を得てアルナーチャル・プラデーシュ州も訪問してみたいと思う。

アルナーチャル・プラデーシュ州行きの乗合の広告看板

〈完〉

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