Hollywood@Bollywood

 近年、ボリウッド映画を見ていてずいぶん変わってきたなと思うことがある。機材や技術進歩のためもあってか映像がずいぶんキレイになった。国内市場で外国映画と競合する部分が増えてきたという理由もあるだろう。あまりに荒唐無稽なストーリーや雑な構成もずいぶん減ってきた。今も昔も音楽とダンスに満ちて華やかだが、インド映画としての個性が薄くなった、あるいは洗練されてきたという言い方もできるだろうか。
 90年代から衛星放送を通じて多くの欧米映画(特にハリウッド映画)に日常的に接するようになってきたという環境の変化、そして経済成長や情報化が進んだ結果、当然のことだと思う。
 そんな中、ボリウッドのハリウッド化(?)が進んだため、性や暴力の描写がより具体的で露骨な表現が増えてきた。いまやかつてのように「親子そろって安心して観ていられる」映画ばかりとは言えない。
 もちろん昔からすべて「インド映画=健全」であったというわけではない。多くはマイナーで粗悪だが毎年相当数の成人映画も製作されているからだ。
 もっともその類の映画ではなくても、倫理基準の違いから指定を受けて上映される外国映画が珍しくないお国柄、よく調べてみたわけではないが、そう滅茶苦茶なものはないはず。
 インディア・トゥデイ誌(11月8日号)に、ここ5年ほどの間にネット上で北米を発信地とするインド系のアダルトサイト、同じくその地域でポルノに出演するインド(系)の人たちが増えていることが取り上げられていた。モデルや女優は海外生まれのNRI(Non-Resident Indian)やPOI( Person of Indian Origin)だけではなく、インド生まれの移住者たちも少なくないという。
 それらを利用あるいは作品等を購入する主な顧客が地元の人々なのか、あるいは南アジア地域に住む男性たちをターゲットにしているのかよくわからないが、ともかくインド社会へ与える影響が懸念されているそうだ。


 だが「悪い風潮は外からやってくる!」と断言できるわけではない。インターネットの普及や購買力の増大といったインフラ部分、昨今の映画に見られる風潮、移り変わるファッションやライフスタイルの背後にある価値観の急速なシフトを見ても、インド社会自らがある意味成熟(?)してしまっているのだから。
 あるいはこれまでずっとアンダーグラウンドで存在し続けてきたものが、通信環境と資力が向上したため、これまでよりも利幅の大きなところへ進出してきたという見方もできるだろう。昔から各地に赤線地帯はあったし、地場の裏ビデオ等が存在していたことはよく知られているところだ。
 そもそも社会とは良くも悪くも様々な人たちが妥協しつつそれぞれの縄張りの中で棲み分けているところ。国境の意味が薄れてきているのと同様、地域社会の垣根の向こうが透けて見えるようになってきているのは、ウェブサイトから爆弾の製造方法を入手した中学生が騒動を起こしたり、おカタイ勤めのサラリーマンが「副業」としてネットで詐欺行為を行ったりといった事件が新聞紙上に見られる日本もまた同様である。

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