ゴーンダル2

ゴーンダルのもうひとつの宮殿はオーチャード・パレス。これは比較的新しい洋館である。入場料は中のいくつかの展示と写真代を含めて120Rs。王家のクルマのコレクションが大変なものであった。とにかく大きくて豪華なクルマが好きであったようで、多くはアメリカ車だ。

職員の説明によると、どれもが今でも走ることができるコンディションに保たれているとのこと。1950年代の黄金期のアメリカ車を中心にその前後の時代のクルマやその後のものもあった。こんなにたくさんのクルマを購入して、それらすべてを頻繁に乗り回すことはなかったのではないかと思う。収集癖というものだろう。

こうした高価なクルマをしかもこんなところまで運ばせるには相当なコストがかかったことと思う。すでに藩王国が廃止されている時代以降のものでもあるわけで、インド独立により共和国に編入されてからしばらくは政府からの年金が補償的な意味合いで支給されていたにしても、それだけ多くの蓄えがあったわけである。独立前、1930年代に王は自分の体重と同じだけの金を貧窮のために寄付したこともあるとのことだが、それにしてもそれ以上に人々から収奪していたということになる。

宮殿中は大半が洋風である。だがラウンジ(Baithak)のみは、室内は洋風であるものの、フロアーにマットレスを敷いて、枕状のものが置かれており、いかにもインド式だ。宮殿内は、豪華絢爛というほどではないが、美しくまとめられている。ゴーンダルの宮殿は、政府に接収されていないので、また王家が今でもメンテに費用をかける余裕があるということもあるのだろうが、実に美しく保っている。これが政府のものになっているところだと、かなり悲惨というか、過去の栄華をあまり感じさせない苔むした感じであったり、すっかり日焼けしてしまったりするものだ。ふと思い出したが、2008年にネパールの王室が廃止されてから1年余り過ぎたあたりの頃、博物館として市民に開放されるようになった王宮を訪れたことがある。当時、まだ王室が放棄してから日が浅かったため、とてもいいコンディションであったが、今はどんな具合だろうか。

ゴーンダルの旧王家の人々は、現在ロンドンでビジネスを展開していているとのことだ。その中にはホテル業もあるという。時折、ゴーンダルに戻ってくることはあるとのことで、その際には本日見学した宮殿の少し裏手にあるもう屋敷に滞在するのだそうだ。

ここで働くスタッフについて興味深いことに気が付いた。ここで働いている人たちの多くは、藩王国時代から世襲で雇われている人たちであることだ。王家の人たちとの長年の信頼関係ということのようだ。彼らは、ここの敷地内に住居が与えられている。

宮殿のすぐ横にはロイヤルサルーンと書かれた、王家が鉄道で移動する際に使用した専用車両が置かれている。嬉しいのは、その車内に入って見学できることだ。キッチン、シャワー室、トイレ、リビングが装備されている。これまた豪華である。こうした車両で移動したならば非常に快適で疲れることはないだろう。こういう車両は、単独で機関車に接続して独自の時間で走ったのか、既存のエクスプレスに連結したのか、質問するのをつい忘れていた。

王室専用車のキッチン

王室専用車のシャワー室
王室専用車のトイレは意外なほど普通な印象

〈続く〉

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