すごいインド

著者のサンジーヴ・スィンハさんとはずいぶん前に何度かお会いしたことがあるが、非常に快活、そして才気煥発という印象を受けた。そのサンジーヴさんが今年の9月に出したのがこの本である。これまで経済界の人たちによる数多くのインド論が書籍や経済誌等で世に出てきたが、この人の書いたものはやはり他とずいぶん違う。

インドからグローバルに活躍する人材が輩出する理由、理系人材が豊富なワケ、インドがIT大国となった背景にある初等教育の拡充等々について、彼自身の視点と体験から綴っていく。しかしながら一方的なインド賛辞となっているわけではなく、そうした部分での自国のネガティヴな側面、日本が大きくリードしている部分などについても大いに言及しており、何もわざわざ日本に来なくても、欧米などでも活躍できたであろう彼自身が、なぜ日本に惹かれて、日本を本拠地として活動している理由へと繋がっていく。

日本在住のインド人であり、インドでの財閥系メーカー勤務、日本ではIT、外資や日本の証券業界複数社で働き、その傍らでIIT同窓会日本支部の立ち上げ、その同窓会主催による「日印パートナーシップ」を謳う国際会議の開催、はてまたAAP (Aam Aadmi Party)を率いるアルヴィンド・ケージリーワル氏がIRS (Indian Revenue Service ※税務関係の中央政府公務員の上級職)を辞して政治活動に進出するきっかけを作った腐敗糾弾の署名活動の発起人であるなど、精力的に日々を過ごしてきただけではなく、そうした多忙な日々の中で日本での社会生活に埋没してしまうことなく、インドとの繋がり、しかも個人の交友レベルではなく、財界や政界との縁をも切り拓いてしまう才覚と行動力があるのが頼もしい。

すでに会社員生活を辞めて、2008年にサンアンドサンズグループというコンサルタント会社を起業して、日印経済の架け橋として活躍中。もちろん彼自身も「インド発のバリバリやり手の人材」であるわけで、これからインドに進出を考えている企業の方などは、この本を読んで「ぜひこの人物に相談してみたい」と思うことだろう。日本在住歴の長いサンジーヴさんらしく、非常に謙虚な表現で書いてあるにもかかわらず、読者に対し自身を強く印象付ける経歴書でもあるところがまたすごい。

日本を活動の本拠地として、業務で日印間を足繁く通うサンジーヴさんは、日本で活躍するインドの人であるとともに、インドに日本を伝える「日本のグローバル人材」だ。今後のさらなる活躍がいろいろと伝えられることだろう。

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書名:すごいインド: なぜグローバル人材が輩出するのか(新潮新書)

出版社:新潮社

著者:サンジーヴ・シンハ

ISBN-10: 4106105853

ISBN-13: 978-4106105852

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