その電話はブータンに通じる

ヒマラヤの小国ブータンにアメリカ向けのコールセンターが開設されるのだという。ちょうど隣国インドでイギリスやアメリカの会社によるアウトソーシングのサービスを行っているように。英語のアクセント等の訓練や一般常識等の基礎知識の訓練を行ったうえで、8月から業務が開始されるのだそうだ。
ブータン初の英語コールセンターの運営等は、バンガロールを拠点に同事業を展開するインド資本によるもの。特別な関係にある二国間にあって、やはり他に一歩先んじるのはインド企業ということなのだろう。記事中には『英国やオーストラリア向けサービスも予定』とあり、頼るべき産業があまりなく、外貨獲得手段も限られているこの国にあって、一大産業に発展する可能性があるようだ。人口およそ70万人と規模は小さいものの、1970年代よりインドの協力もあって英語教育が普及しているブータン。現場で業務に従事する人材には事欠かないのだろう。
同国は外国人の入国を厳しく制限しており、観光目的の入国でさえも通常はごく限られた短い期間のものとなり、滞在中の行動も制限されている。いわば鎖国状態にあるといえるこの国に暮らす人々が欧米の大企業のサービスを代行するというのは逆説的にも響く。だが国王主導とはいえ着々と民主化、複数政党制導入への道筋が築かれているこの国の将来を予見する重要なトピックではないかと思う。まさに大きな変化のはじまりとでも言えるのではなかろうか。
従来の権力層とビジネス界を中心に台頭する外資を含めた新進勢力の綱引き、民族主義とグローバリズムの拮抗が予想される中、中国とインドという二大国の挟間にある小国が、旧スィッキム王国(現インドのスィッキム州)やネパールといった先例を見ながら、どういう国づくりを進めていくのか大変興味のあるところだ。
ヒマラヤに問い合わせ ブータンに初のコールセンター (asahi.com)

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