シブサーガル到着

シブサーガル池
シブサーガルではガイドブックに記載されていたアッサム州政府観光公社経営のツーリスト・ロッジに宿泊。前日に電話で空きを確認しておこうかと思ったのだが、ガイドブックに記された番号にかけても『この番号は存在しません』という音声が流れるだけだった。同じ観光公社経営のグワーハーティーのツーリスト・ロッジに電話をかけて尋ねてみると、告げられた番号は違うものだった。かけ直してみたがこの番号でも通じない。同じ組織の中でも横の連絡がうまくいっていないようで何とも頼りない。
とりあえずシブサーガルに着きバスを降りてからリクシャーでこの宿に向うと、果たしてこのツーリスト・ロッジはちゃんと存在していた。ガラガラに空いていたのであえて前もって予約する必要はなかった。
ツーリスト・ロッジ


サイクル・リクシャーの男は宿の場所をよく知らなかったようで、途中にある軍の詰所前で停まり、たまたま出てきた兵士に尋ねていた。彼は逆に私にどこから来たのか詰問するので「日本から来た」と答えると「こんな危険なところに何しに来た?」と再び問いかけてくる。ずいぶん長いことパーミットは不要になっているとはいえ、インドの他地域の町中では警官たちがヒマそうにブラブラしているのに対し、ここではポリスではなく軍人たちの姿がとても多い。兵士たちの多くは銃を水平に構えて警戒していることから、私のようなヨソ者から見ても明らかに警戒の程度が高いことが見て取れる。昔、パンジャーブ州で分離 活動が盛んでテロが頻発していたころを彷彿させるものがある。新聞等のメディアによると、今ULFA (United Liberation Front of Asom) の動きが再び活発化してきているようだ。だからといって特に旅行者が狙われたりといったことは特にないようだが、このあたりの治安にはかなり不安があるということは一応頭の片隅には入れておいたほうがいいだろう。上記ウィキペ ディアの記事にULFAのホームページであるとされるごくごく簡素なウェブサイトへのリンクが張られている。
今なおULFAの活動家たちが商店主や会社経営者たちのところを訪れては『寄付』を要求している。それを断るのは相当な危険を伴うため、自分たちが望まない政治活動であっても金銭的にはそれを支えていることになる。 ちなみにこのシブサーガルの町はこのテロ組織の発祥の地。 1979年4月7 日、町郊外にある観光スポットRang Gharにて、武装闘争による社会主義アソム建設を目指すULFA結成式が行なわれた。いわばお膝元の地でもある。田舎町でのんびりした空気はあるのだが、あまり雰囲気は良いとはいえないような気がした。 夜9時ごろすぐ近くの軍の詰め所か警察のあたりから連続して発砲の音が聞こえる。ただ射撃練習でもしているのではないか思うが、時間が時間だし場所がアッサムだけになんだか物騒な気がしないでもない。
宿に置いてある日付の異なる地元の新聞を広げてみると、最近ULFAを抜けて投降した人による『反省文』みたいなものが連日のように掲載されているようだ。当局の意向を受けたメディアが世論形成を狙う意図があるのだろうか。
ツーリスト・ロッジはこの小さな町の中心から少し離れた大きな貯水池のほとりにある。おそらく界隈で一番の宿のようだが、それでも町中に散在するみすぼらしい宿よりはマシといった程度。州政府のホテルの割にはこじんまりとした建物で部屋数も少ないため、この手の宿泊施設によくある『レストラン』はない。食事は前もって注文する必要があり、夕食は夜8時に野菜ターリーを頼むと告げておいた。35ルピーで好きなだけ食べる ことができる。内容は素朴で簡素だが味はとても良かった。料理人も田舎の人の良いおじさんで好感が持てた。ここではかなり近くから来ている人が多かった。隣の部屋にいる家族連れは ジョールハートとから来たというし、政府系機関に勤める獣医で現在シブサーガルに赴任しているという獣医と食事の席をともにした。役人等の滞在先としても利用されているようである。
特にポピュラーな観光地でもない限りあまり快適な宿もなければグルメなレストランもない。都市部の発展とは対照的なのが田舎の有様である。発展の恩恵はなかなか都市部の外には及ばない。都市が発展とともに拡大するにつれて田舎の人たちの雇用を吸収する力も大きくなるといった部分はあるとはい 外に出ることなく田舎に暮らしている人々にとって利するものはあまりないのかもしれない。だが都会からの影響がまだそれほど及ばない分、土地ごとの地域色が濃く残っているともいえるだろう。豊かになるほどローカル色は失われていくのが世の常である。ともあれ観光インフラ、特に移動手段と宿泊の質という観点からは、メジャーな観光ルートか商業ルートを外れると他にほとんど選択肢がないという点では、インドはまだまだ弱いものがある。
この時期なのに蚊が多い。宿のロビーでテレビでも見ようとソファに腰掛けようとすると、まさにそこから大きな『蚊柱』がグワンと立ち上がるのを見て思わずのけぞってしまう。部屋の中ではまるで蚊が人工的に培養してあったかのように無数に飛び交う。ベッドには蚊帳が吊るしてあったので睡眠時ひどく刺されることはないようだ が、シャワーを浴びにバスルームに入ると身体の回りでブンブンうるさく飛び回るのはどうにもならない。 もともと湿地が多い土地柄もあるが、宿の目の前にあるシブサーガル貯水池が蚊の養殖場みたいに機能しているのだろう。この時期なので夕方以降は蚊取り線香をモウモウと焚くまでのこともなく、気温が下がり蚊は壁や天井に貼り付いたまま活動をほぼ停止してしまうのは助かった。夏に訪れると蚊に相当悩まされそうだ。
ホテルで衣類の洗濯を頼もうとしたら「お寺(近くの大きなシヴァの寺)から下った交差点のあたりにあるんだけど・・・」とのこと。つまりホテルではやっていないらしい。また頼んでも1日から2日はかかるだろうとのことである。明日早く出てしまうのでやめておいた。卑近な話ではあるが旅行中の洗濯は少々困りものである。暑くて乾燥した時期には自分で洗ってすぐ乾くからいいのだが、雨季であったり寒い時期であったりするとなかなかそうもいかない。短期で旅行すると特にそうなのである。自分で洗うと乾くまでそこに滞在していなくてはならない、一泊二泊くらいで移動するとなるとなかなか洗うことができない。また宿で洗濯頼むにしても乾くまで自分がそこに滞在しているのかどうかということが問題になる。
町から鉄道駅(シマルグリー駅)へは12キロくらいの距離があるらしい。ガタンガタンという車輪の音は届かないものの汽車の音が聞こえてくる。周囲が静かであることと途中に遮るものがないからなのだろう。インドの鉄道の音は実に旅情に満ちていて素敵だ。
シブサーガルでは日が沈むとともにほとんどの店が扉を閉めてしまう。夕方以降どこも行くところがないので、ゆっくりと日記でも書いてみることにした。
シブサーガル池のほとりに建つシヴァ寺院

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