インド国営航空会社二社統合へ

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エア・インディアとインディアン(元インディアン・エアラインス)の統合がいよいよ差し迫ってきた。両社を併せて122機のエアクラフト、3万4千人の従業員(1315人の操縦士を含む)国内線およびインド発着のフライトのそれぞれ2割のシェアを持つ。
今のところエア・インディアがインディアン・エアラインスを吸収合併するのか、あるいはその反対なのか、はてまた両社とも一旦解散してふたつを合わせた新会社が立ち上がるのかよくわからない。
だが主に国際線を飛ばす前者と国内線を主体に近隣国へのネットワークを持つ国営二社の合併により、従来よりも効率的かつ競争力のある航空会社へと脱皮させようというのが狙いである。両社を所有するインド政府は統合後の新会社を世界のトップ30航空会社の中のひとつとなり、1億1300万ドルの利益を稼ぎ出すことが期待されているのだという。
航空省のパテール大臣の発言によれば、今後2、3か月のうちに統合させるとのことだ。


エア・インディアの前身は1932年設立のタタ・エアラインス。1948年にインド政府が株式の48%を取得してエア・インディア・インターナショナルとなり、その後5年間で政府が更に大半の株を購入して国営化される。そして1953年には同年新設されたインディアン・エアラインス(現インディアン)に対して国内線部門のほとんどを譲り渡し、ほぼ国際線を専門に取り扱う航空会社となる。これによってAir Corporations Act, 1953に基づき、当時のインドの空の交通の国営化が完成した。これらの経緯から元々両社は兄弟のような関係にあるとはいえる。なおエア・インディア・インターナショナルは1962年に社名を現在のエア・インディアと改称した。
どちらも伝統ある国営航空会社として堂々たる長い歴史を持つだけに、両社の社風、企業文化、社内慣行その他から様々な問題が生じることが予想されている。役員や幹部社員たちといった経営陣内部では水面下で旧エア・インディア系と旧インディアン系の勢力間で様々なパワーゲームが展開され、しばらくは不協和音に満ちたゴタゴタが続くことと思われるが、もっと大変なのは職員たちではないだろうか。
政府は両社の従業員たちの利益等について充分な配慮をしつつ統合を実現すると発言しているものの、ふたつの会社がひとつになる究極の目的とは即ちコスト・カッティングである。合併することにより、従来個別に行なわれていた総務、人事、経理その他の管理部門が大幅に合理化できるし、各地に別個に展開していた営業所もまとめることができるが、結果として新会社で仕事をする人々の上に労働条件の切り下げその他が降りかかってくることは間違いない。経営陣も統合という好機を狙い、ここぞとばかりに不当な攻撃や要求を職員たちに押し付けてくることは容易に想像がつく。
こうした不透明な時期であり、合併時の不条理なリストラや著しく不利益を蒙る配置転換などにおびえる職員たちも少なくないはず。インディアンの子会社のアライアンス・エアで働く職員や親会社インディアンからの出向社員なども、両社統合後のこの子会社の位置付けや自分自身の身分などがどうなるのか大変気がかりだろう。予想される不安や不利益に職員たちの怒りが爆発して未曾有の大きな労働争議が起きて長期間に渡って大勢の乗客に影響・・・なんてことがないよう経営陣には努力して欲しいものだ。
もちろん空のネットワークとダイヤについても大幅な見直しがなされ、限られた資産を最大限有効に活用すべく、国営企業であるため政策的な縛りはあれども、可能な限り不採算路線を切捨てて需要の高いルートに特化していくことになるのだろう。そんなわけでどこかの街ではこれまで乗り入れていたフライトが廃止されて市内オフィスもクローズ、反対に週数便しかなかったところに毎日飛ぶようになるなど慌しい動きがあるのではないかと想像している。個人的には日本との間のルートを従来よりも手厚く扱ってくれることを願いたい。
蛇足ながら、利用者としては統合後の飛行ルートと航空ダイヤはもちろんのこと、新しい会社名やシンボルマークがどうなるのかについてもちょっと興味があるところだ。エア・インディアのファンとしては、長年お気に入りのマスコットが統合後もちゃんと引き継がれるのかどうか大変気がかりである。
AI character
Air India, Indian Airlines will merge to gain muscle (Times of India)

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