パフラット バンコクのインド人街 1

 バンコクに来た。市内各所に同じようなスーツの仕立て店があり、多くがインド人による経営である。店頭のディスプレイを見る限りではなかなかちゃんとしたモノを作っているようなので頼んでみようかなという気にもなる。ショーウィンドウを覗き込んでいるとドアを開けて声をかけてきたのはパンジャービーのおばさんだった。
 彼女は『まだ午前中だし、どうしても急ぐなら今晩までには間に合わせるわよ』というのだが、そんな超特急でどんなものが出来上がってくるのか心配だし、本当に今日中に出来上がって来ないと困るので今回はやめておく。この人はスィク教徒で祖父の代にインドから移住してきたのだという。外ではもっぱらタイ語で人々としゃべることになるが、家庭内ではパンジャーピー語と英語を混ぜてしゃべっているのだそうだ。
 バンコクではインド系人口が少なくない。だがタミル系が多いマレーシアやシンガポールとは裏腹に、パンジャープ、U.P.、ビハールといった北インド各地から来た人々がマジョリティを占めるのが在タイのインド人コミュニティの特徴だ。多くがヒンディー語と英語を話すので、タイ語のできない私にとって道やら何やら尋ねたりする際に彼らの存在はとてもありがたい。
restaurant
 市街地のチャオプラヤー河近くにパフラットという商業地区がある。市場や商店その他がごちゃごちゃと軒を連ねる忙しいエリアなのだが、界隈は同時に『インド人街』としても広く知られている。以前、暑い盛りにこのあたりを訪れたことがあるが、他に用事があり急いでいたこと、そして強い陽射しに負けてしまったこともあり、どのあたりが『インド』なのかよく確認せずにスゴスゴと引き返したことがある。今回は涼しい時期だし、日中はヒマなのでちょっと観察してみることにした。
 サヤーム・スクエアーから乗ってきたタクシーは、一方通行のためパフラット地区内まで入ることはできなかった。市場エリアに入ってすぐのところにある布地店を営むスィク教徒の若主人に『地元のインド系の人々がよく利用する食堂街はあるかい?』と尋ねる。こういう地域があれば、それがまちがいなくインド人地区だろう。彼が教えてくれたあたりに行ってみると、案の定『リトル・インディア』になっていた。
sweet
 その中のひとつのスィク教徒が経営するレストランで昼食。店の構えは小さいがメニューはパンジャービーの枠をはるかに超えて亜大陸規模にグローバルなものである。しかもレストランと甘いもの屋を兼ねていた。そんなわけで私が注文したのは南インドのマサラードーサー、食後にはラスグッラーとチャーイ。どれもなかなかおいしかった。店内は私以外全てがインド人ないしはインド系。まるでインドにいるかのような気がしてくる。
 食事を終えてから裏路地を進んでみると他にもいくつか中小のレストランがあった。そして歯が痛くなるほど甘いミターイーの専門店もチラホラ。この界隈を散歩しているとついつい食べ過ぎてしまいそうだ。どれもパンジャービーの経営らしくグルムキ文字が書かれている。
sweet

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