マラーラー・ユースフザイー

非常に残念なニュースだ。マーラーラーが撃たれた。この件については少々説明する必要があるだろう。

パーキスターンのスワート地方のミンゴーラー。かつて観光地として大いに栄えた地域だが、今世紀に入ってからは、この地域で勢力を伸長したターリバーン勢力と政府側との衝突により訪問者が激減した。さらに2009年にターリバーン支配下となり、その後政府軍が奪還するといった具合に内戦状態が激化することとなった。

ミンゴーラー出身、リベラルな家庭に育った少女マーラーラー・ユースフザイーはこの地の出身。2009年に内戦状態のスワート地方を離れてパーキスターン国内を転々とする中、故郷スワートでの就学機会を求める利発な少女の姿は内外のメディアの目に留まり、しばしばニュース等で取り上げられてきた。

ターリバーンが少女たちに対する学校教育を禁止したり、女子学校を破壊したりする中、少女たちの教育機会を求めての積極的な発言や行動は世間の耳目を集め、オランダを拠点とするKids Rights FoundationのInternational Children’s Peace Prize候補のノミネートされたことがある。惜しくも受賞は逃したものの、パーキスターン政府からNational Peace Awardが贈られた。

Peace Award to Malala yousafzai from Prime Minister Pakistan Sherin Zada Express News Swat (Express News)※ウルドゥー語

Malala Yousafzai awarded Pakistan’s first Peace Award (Ary News)※ウルドゥー語

あまり上手ではない英語でのインタビューと異なり、上記リンク先のウルドゥー語によるものでは、ずいぶんしっかりした内容で話していることに感心する。受賞は2011年、当時のマラーラーは13歳だ。

彼女は仮名でBBCウェブサイトに日記をブログとして公開して注目を集め、ニューヨーク・タイムズのサイトでもClass Dismissedと題した動画と関連記事が紹介されるなど、国際的にも知名度の高い少女人権活動家でもある。

Class Dismissed (New York Times)

現在14歳、将来は医者になりたという夢を胸に抱いて活動を続けていたマーラーラーだが、昨日ミンゴーラーにて他の女子生徒たちと乗っていた通学用のヴァンの中で撃たれた。その後、ターリバーンは犯行声明を出している。

マーラーラーは頭部と首に負傷しているとのことで、ペーシャーワルに空輸されて救命治療を受けている。現在までのところ、複数のメディアにより「手術は成功」「脳は弾丸による損傷を逃れている」といった情報が流れているが、非常に危険な状態にあるということは変わらない。彼女の回復を切に祈る。

Child rights activist shot in head (Business Recorder)

ネパールやインドで跋扈するマオイスト活動家たちの大半が、共産主義の何たるかをほとんど知らず、銃器による社会秩序への抵抗と下剋上の快感に酔っているように、ターリバーンの連中もまたイスラームの説く中身への理解もなく、やはり武器の力を背景にした支配と強制により、彼ら自身の乏しい知識による独自の解釈による社会規範を絶対的な正義と取り違えている。

従前からターリバーンたちから脅迫を受けてきたマラーラーとその家族だが、ついにそれが現実のものとなってしまった。この卑劣な犯行を、私たちは決して許してはならない。

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