でかいカメラの呪縛

CANON G7
コンパクトなデジカメが欲しいと考えているのだが、興味を引かれるモデルがなかなか見当たらない。今やデジタル一眼レフ全盛の時代なってしまい、ちょっと前まで市場に溢れていた『ハイエンド機』なるものがすっかり淘汰されてしまったことを少々いまいましく感じている。
かく言う私もデジタル一眼レフは持っているのだが、ちょっとそのあたりを散歩するのにいちいち『でかいモノ』を持ち歩く気はしない。旅行に出るとなれば荷物はなるべく小さくまとめたいので、やっぱり大きなカメラは嫌だということになってしまう。プロでもないのに機材はデカいというのは何だかスマートじゃないし、小さいながらもさりげなく高機能かつグレードの高いモノを持つこと、余計なモノを持たずに肩の力を抜いて楽しむのが賢い大人(?)いうものではないだろうか・・・とも思うのだ。
ならばそもそも何故そんなものを買ったのかと叱られてしまいそうだが、まあそれでも写真を撮ることは楽しいし、荷物や体力に余裕さえあればいろいろ持ち歩きたいという気はある。
 それはともかく『でかいモノ』を持ってきていても、取り出せる雰囲気ではなかったりすることもあるだろう。それでも臆することなくシュパッと懐から取り出して遠慮なくシャッターを切れるような一台というのがありがたい。
目下、リコーのGR-Digitalを日々持ち歩いて使っているのだが、いかんせん28mm単焦点であることから、なんでもこれ一台でOKというオールマイティーさはない。この28ミリから100mm超の焦点距離のズームレンズ、広角端での開放値がF2..4くらい、細かいマニュアル設定が可能でそれらの操作が一眼レフ並みに扱いやすい高画質なコンパクトデジカメ・・・というのはちょっと見当たらないものである。
 一世代、二世代前のそうしたデジカメの高級機にはそれなりにアピールするものがあった。デジタル一眼レフブームが始まる前だったので、各モデルごとに対象となるユーザー像がはっきりしており、利用目的によりいろいろ比較検討することができた。ウチでホコリを被っている当時のデジカメはもちろん、中古カメラ屋に行けばそれらが格安で販売されているのだが、やはりデジモノは秒進分歩で陳腐化も早いので旧型モデルなど触る気も起きない。描写、書き込み速度その他諸性能のうちの大部分において今の『押すだけカメラ』以下だったりするからだ。それだけデジカメは急速に進化したといえる。ただしコンパクトデジカメ市場はどれも似たり寄ったりの金太郎飴状態になってしまい面白みを失った。


10月下旬に発売されたキヤノンのPOWERSHOT G7はかなり気になっている。現在量販店等でも長く入荷待ちが続くヒット機らしい。売りにしている『1000万画素』『顔優先AF』というのは特に興味は引かれないし、新たに開発された画像処理エンジン『DIGIC?』というのも具体的にどう進化したのかよくわからない。また手ブレ補正も今どきのコンパクトデジカメには装備されていることが多いので、こうした『ハイエンド機』ともなれば付いていて当然だろう。スペックについてはさすがキヤノンのコンパクトデジカメのフラッグシップ機にあたるので言うまでもなく高性能である。
しかし黒くてカチッとスクエアなフォルムにアナログ的な雰囲気のダイヤル類、ストラップを左右から両吊りできるのもいいし、最近高級機とされるモデルでも省略されがちなファインダーがちゃんと付いている。それに実機を手にしたときのズシリとした量感もなかなかだと思う。もともと私自身がどちらかというと『カタチから入るタイプ』なのだが、機能性能とともにこうした『高品位感』からくる満足度というのも大切ではないかと思う。 
 
仮に取り回しにやや難アリだったりしても、触れてみて質感の高いモノだとそれなりに愛着が沸くものなのだ。それでいて現在、量販店での店頭価格が5万円台と、高級機の割にはかなり手頃である。デジタル一眼レフの低価格化もあり、こういう価格設定になるのだろう。これではカメラメーカーは大変だ。
ただしモニターの液晶画面を大型化した代わりに、前モデルまで採用されていたバリアングルはなくなってしまった。あれは機動力のあるコンパクト機、しかもこうしたハイエンド機とされるモデルにはぜひ装備して欲しい。バリアングル仕様のモニターは、普通ならば服を汚して腹ばいにでもならないと撮れないシーンで役立つし、被写体に気づかれずにあるいは本来撮影禁止になっている場所などでもシャッターを押すことができて便利。機動力という点で他のカメラに比べてはるかに優位に立つことができるのだ。
店頭でもいろいろ試し撮りしてみたりしながら『さあどうしようか?』と思っていたところで、気になるのは広角端が35?(〜210mm)からになっていること。さらにワイドな画角のためにはコンバージョンレンズアダプターを介してワイドコンバーターレンズを(広角端の画角が26.3mmになる)装着しなくてはならないのが面倒。しかもこれが実に巨大なシロモノで、やや誇張して言えばカメラのボディそのものよりもドーンと存在感があるのだ。するとちっともコンパクトでも何でもなく、重厚長大な『コンパクトデジカメ』となってしまう。おかげで興味が失せてしまった。他に適当なものはないか?と目を凝らしてみても、特に購買意欲をそそられるようなモデルは見当たらない。
 結局のところ目下デジタルカメラ市場が『でかいカメラ』と『押すだけカメラ』の二極分化状態にあり、コンパクトデジカメの高級機市場がほぼ消滅してしまっているのが問題だ。早いところ世の大人たちが『でかいカメラの呪縛』から解き放たれて、高品質で個性的なコンパクト機が評価を得る時代が来て欲しいものだと思う。あるいはそういうデジカメがほとんど見当たらないがゆえに、写真好きな人々がこぞって『でかいモノ』に手を伸ばしているのが実情なのかもしれない。
面白くて個性的なコンパクトデジカメが巷に出てくるには、デジタル一眼レフが飽和状態を迎えてブームが終焉するまで待たなくてはならないのだろうか。だがひょっとすると、アナログ志向かつ本格志向をさらに前面に押し出したキヤノンのG7の登場とその売れ行きの好調さは『高級コンパクトデジカメ市場』の逆襲なのかもしれない。今後の成り行きに期待しよう。

「でかいカメラの呪縛」への2件のフィードバック

  1. ”高画質なコンパクトデジカメ”の検索でヒットしました。同感なのですが、記事から1年以上経った現在でも同じ状況でしょうか。何か良いものありませんか?

  2. ご存知のとおり、あれからいくつかのメーカーから、ちょっと気になるコンパクトデジカメがいくつか出てます。
    その中で、リコーのGX100はとても良さそうに思えたので購入しました。電池はもちろん操作体系もGR Digitalとほぼ共通しているので、カバンに2台とも放り込んで楽しんでいます。広角側を重視するならば、オススメというよりも、他に似たようなモデルがないからこれしかないですね。
    キヤノンのG7もG9へと進化し、こちらではRAW画像も記録できるようになってます。ただしG9もそろそろ『期限切れ』で新モデルに移行することでしょう。
    今月3日発売のシグマDP1の出来や評判次第では、コンパクトデジカメもハイエンドクラスはAPS-Cサイズのセンサーを搭載するのがトレンドになってくるのかもしれないですね。

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